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奨弥と洋巳

奨弥は剛拳から預かった文書を元に、街に出て洋巳を探しあてた。洋巳は、いくつかある繁華街の外れでスナックを経営していた。

「わあ、お客さん!今日も来てくれたの、嬉しいっ!」

何度目かの来店で、洋巳の方から話しかけてきた。この日は常連客も帰った後のようで、客は奨弥だけだった。

「ねえ、なんて呼べばいい?」

「奨弥…」

そう答えた男の顔を、洋巳は黙ったまま見つめ直した。よく似てはいるが、まさかあの、総代の奨弥様がこんなところにいるわけがないと、再度じっと顔を見つめた。


「さすがにもう、俺のことは忘れたか」

見つめ続ける洋巳に向かって、奨弥は笑いかけるとそう呟いた。見開かれた洋巳の目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。

「本当に?」

「ああ…」


洋巳は店を閉めると、二人でカウンターに並んで一緒に飲みながら話し始めた。

あれからどうしていたのか、なぜここがわかったのか。今どうしているのか、里の話になると、奨弥は黙った。

「元気そうでよかったよ」

「あの、何かあったんですか?」

「そうだな、ちょっと疲れてしまったかな」


確かに、そう言う奨弥の横顔は少しやつれて見えた。実際、ホテル暮らしをしながら洋巳を探し、己の目的のために時間を費やしている間、決意して里を出てきたにも関わらず、奨弥は自問自答の繰り返しだった。

「奨弥様、大丈夫…」

奨弥の顔を覗きこむ洋巳に、奨弥は軽くキスをした。一瞬驚いた洋巳は、奨弥から離れた。奨弥は、急に悪かったと言って、グラスに残っていた酒をあおった。


「里に戻るのが億劫(おっくう)になってしまったんだ。御子姫の元に…」

御子姫と聞いた途端、洋巳は今まで心の奥底に眠らせていたものが頭をもたげるのを感じた。嫌というほど押し殺してきた、御子姫への嫉妬の念だった。

「奨弥…」

洋巳は奨弥の腕に手をかけると、部屋へ誘った。


店から程近いマンションに洋巳は住んでいた。部屋に上がると、洋巳は奨弥に抱きついてきた。

「奨弥様…ずっと、ずっとお慕いしておりました。誰に抱かれていても、いつも奨弥様に抱かれていると、そう思ってきました」

洋巳は奨弥をベッドまで連れてくると、服を脱いだ。豊満な胸、はち切れんばかりの尻、成熟した女の体。


ーーそうだ、俺が今から抱くのは姫ではない


洋巳が奨弥の服のボタンに手をかけると、奨弥は自分ではずし始めた。服を脱ぎながら、ぼんやりと洋巳の体を見つめている。ふと、こんなはずではないのに、と思いつつベッドに腰かけた。

洋巳が手慣れた手つきで勃たせようとし始めた。

「飲みすぎたようだ」

そう言ってやめさせようとする奨弥を押し倒すと、洋巳は夢中になってしゃぶり勃たせた。洋巳は奨弥の上に乗って腰をうずめ上下に動かしていた。

「奨弥ぁ、奨弥様ぁ、あん、あん、あん!気持ちいい?どお?ねぇ、はあ、あん!」

奨弥の上で腰を振り続ける洋巳の、たわわな乳房が揺れ動く。奨弥は奇妙な感じがした。酔った頭の片隅で、自分の意に反して体は正直に反応していることに笑いさえ込み上げてきた。

「ああ、気持ちいいよ…」


ーー次からはもっとうまくやらないと、今日はもう…


思いも寄らず、洋巳の部屋へ、連れてこられた。しかし、考えようによっては、奨弥にとってこれ以上ない機会だった。

洋巳はやわらかくなるたびに勃たせては、気がすむまでしゃぶっていた。どうやら酔っ払ってしまったせいだろうと、あまり気にはしていないようだった。


翌日、奨弥はホテルを引き払い洋巳のマンションに移った。



奨弥にはやり遂げなければならない、確固たる目的があった。そのために里を出て洋巳を探したのだ。里を出る前、剛拳に相談したのは、輪紋衆の間で行われてきた、とある『秘術』についてだった。そのために選んだ相手が洋巳だった。


輪紋衆の中で、厄年で引退した者が、己が持つ力をすべて子に引き継がせようと、行ってきたとされる『(たま)込め』という秘術があった。戦を引退し輪紋衆としての力を使わなくなった以上、今一度子をもうけるのであれば、子ども自身が天から授かる力に己の力も足して込められれば、さらに強い力を持つ者が産まれるだろうという願いから行われるようになったものだ。


ただ、奨弥がやろうとしていることはそれだけではなかった。これは剛拳にも話していない、誰にも悟られてはならない『禁術』だった。奨弥は『(たま)込め』と同時に、『(たま)移し』を行おうとしていた。


(たま)込め』の秘術は、輪紋衆なら誰でも知っている術であった。『(たま)移し』の禁術は、奏家本家でも総代にのみ伝えられてきたものである。実際行われたかどうかは知る由もない、古い言い伝えの類でもあった。


奨弥は、そうしたものに頼らざるを得ないほど、追い詰められて、いや、己を追い込んでしまっていたといってよかった。奨弥の精神がここまで破綻(はたん)をきたしているなど、誰にもわからなかった。


奨弥は、剛拳に相談した時点でもうすでにどこかおかしかった。だからこそ、剛拳も止めることができなかった。

一度里を離れて落ち着けば、洋巳とだって気が済めば、どうとでもなるだろう。それくらいに考えていた。


洋巳は、早く帰ってくると言って仕事に出かけた。早く帰るといってもしれている。

奨弥は荷物の中から丸薬(がんやく)を取り出して、時間を見計らって飲んだ。

午前2時頃、洋巳はご機嫌に帰ってきた。出迎えると嬉しそうに抱きついてきた。酒と煙草と香水の臭い。服を脱ぐと幾分かましになった。


奨弥は下着姿の洋巳をベッドに押し倒すと、腰を持ち上げた。

「洋巳、なんだよ、コレ。いやらしいな、いつもこんなのはいてるのか」

洋巳の尻にはTバックが食い込んでいた。食い込んだ部分はもう湿って、ぐっちょりしてきていた。

「ああん、もうダメぇぇ!こすらないでぇえ、もれちゃうう!」

「うるさいな」

奨弥はTバックのまま、後ろから硬く勃ったものを突っ込んだ。

「あああっ!あっ、あっ、あっ、はっあんっあっはっあんっ!」


ーー()()()… 、()()()… 、


昨夜と打って変わって、奨弥の大きくて硬い物が、洋巳をバックから突きまくっている。洋巳は、突かれるたびに声を上げていく。Tバックの紐が擦れてよけいに気持ちがよすぎて、何度もイクーっ!イクーっ!と叫び続ける。

とうとう、大声であああああーっと叫ぶのと合わせて、奨弥は洋巳の奥に発射した。


ーー()光、()風、()海、()命…!!


「もっと欲しいだろ」

奨弥はグチョグチョになったTバックを剥ぎ取ると、洋巳の腰を捕まえバックからずぶりと入れた。洋巳はバックから突かれながら、時折指で敏感なあそこをこすられグチョグチョにし、イクッ、イクッ、と喘ぎ倒していた。そうして同じように絶頂を迎えると、奨弥は腹の奥へと3回続けて出していた。


ーー()光、()風、()海…!

ーー()光、()風、()海…!

ーー()光、()風、()海…!

ーー()光、()風、()海、()命…!!


(たま)込め、(たま)込め、(たま)込め、(たま)移し…



奨弥は洋巳に求められるまま、洋巳が仕事に行く前の昼間から、トロトロにして何度も何度も、洋巳の汁なのか己の液なのかわからないほど、ぐっちょりからみあっていた。

「あああン!ああああーッ!あああんキモチいいぃぃい!!

イクぅーッ!イクぅーッ!ああ!ああ!あああああああーっっ!!」


洋巳は元々淫乱なのか、洋巳もまた変わってしまったのか。狂ったように、奨弥を求めた。ぐっちゃぐちゃに、犯されてでもいるように、乱暴に、尻を叩かれ、乳房をもみしだかれ、突かれまくるたびに絶頂を迎える。


そう、まるで御子姫から奪い取ったのを、体全部で感じようとしていた。

「あひぃーあああ、あひっ、あひいぃ!!もっとぉ!もっとしてえぇ!!」


一度思い切れば、奨弥は洋巳を抱くことなど平気になった。熟れきった体は、己の術を受け止める肉の塊に過ぎなかった。

奨弥は洋巳が店へ出かけると、部屋を掃除して酒を飲む。洋巳が帰ってこれば来たで、寝ていようがお構いなしに服を脱がされ上にまたがられ、腰を振っている。それを無造作に押さえつけ、後ろから突きまくる。そんな毎日が腐るほど続いた。


それでも、洋巳は不安だった。もしも奨弥が気が変わって里へ、御子姫の元へ戻ると言い出したらどうしよう。うやむやのまま一緒に暮らすようになったが、約束など何一つない。

そんなある日、洋巳は妊娠したことに気がついた。どうしたらいいだろう。隠し通せるものではないし、でもそれが元で去っていった男もいた。


奨弥に思い切って妊娠したことを告げると、奨弥も話があると言ってきた。実は御子姫から何度も帰ってくるよう連絡があったと。洋巳は激しい嫉妬に駆られた。

「私を、捨てるの?」

「御子姫からは絶対に離縁は応じないって。俺の代わりだと、妊娠した子供を引き渡せば納得するかもしれん。話してみるよ」

「お腹の子を御子姫に?そしたら私とずっと一緒にいてくれるの?」

「ああ、子を渡すのと同時に離縁が成立したらな。御子姫の元には戻らず一緒にいられるよ」

「本当に?でも…」

「俺たち、結婚すれば、子供なんてまた作れるよ。このままじゃ、俺も宙ぶらりんだしな。総代の席も()けて待ってると言うんだ。御子姫の言うことには逆らえん」

「そんな…子供を渡せば、奨弥は私と結婚してくれるの?」


頷く奨弥に、洋巳はとうとう腹の子を御子姫に渡すことに同意した。これで奨弥は私のものになる。洋巳は不安が軽くなっていくのを感じた。奨弥の言う通り、奨弥さえいるならまた子供を作って、この先ずっと幸せに暮らせる。夢にまで見た生活が手に入る。

洋巳は、腹の中の子より、目の前にいる奨弥との未来を選んだ。

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