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決意(1)

新たに現れた(ケガレ)は、今までのものと違い空中を飛んで襲ってきた。

輪経紋の術のかけ方では、宙を舞う力のある者は船首部分で前方の(ケガレ)を祓い、不安定な者は船尾の一段と高くなった場所から飛ぶことなく側面を中心に祓う、というのが基本形だった。

イタチが今までの(ケガレ)と違うのは、飛んでくるだけでなく、目と目が合うとにわかに体がいうことをきかず、動けなくなっているところを襲われる、という大変厄介な点だった。


その上、先の大戦(おおいくさ)で失われた戦力は、今までの大戦と比較にならない程多大だった。まずは、戦慣れした者が少なく、若い者への援護が十分できない。経験から生まれる戦の陣形が取れず、無駄の多い戦い方となっていた。

たとえ、御子姫が采配を振るったところで、それについてこれる技能もなかった。


そこで船に乗り、様々な訓練が行われることとなった。それだけではなく、実際の陣形を船団全体の動きと、一つ一つの船ごとに分けて細かく策戦を習得すべき会議が持たれた。

響家本家の大広間では連日、戦に出陣する者達が集まり、それぞれ班分けされ組織立って動けるように、実際に配置図や陣形図を使い動きを駒を使って、実践的な戦の戦法会議が行われていた。


その動きを、(かなで)将隆(しょうりゅう)が不審に思わないはずがなかった。

ある日の会議中に突然、将隆、将吾親子が現れた。

「こそこそと大勢で集まって、いったい何をやっとるんだ!」

将隆の声が大広間に響き渡ると、皆一斉に動きを止め静まり返った。

「あら、いらっしゃるなら仰っていただけばお迎えに上がりましたのに。わざわざ、陣中見舞いでございますか、嬉しゅうございます」


御子姫は広間の真ん中から立ち上がって、将隆親子の元へ行き深々とお辞儀をした。怪訝そうな顔をする将隆に向かって、御子姫は穏やかに微笑みながら手を握った。

「叔父上、将吾様はお加減いかがでございましょうか。もう二度とこのようなことが起きないよう、勉強しているのでございます。一応大人数が集まりますので、叔父上にもお伝えせねばと、文を差し上げておりますが…」

御子姫は、やはり様子を見に出てきたかと、思惑に従い先手を打ってもてなし始めた。将隆には、いつもなら御子姫が座る上段の間に案内した。


「そうですわ、将吾様には、よろしければ名誉の負傷をされた時の、イタチの巧妙さをぜひ語って聞かせていただけたらと思います。いかがでしょう」

将吾には広間を見渡せる上座に、車椅子を御子姫自らが動かして据えた。車椅子を押す御子姫からは、将吾の背後からなんとも芳しい香りが漂ってきた。


ーー近くでよくよく見れば、(なま)めかしい…いい女だな


将吾は、今まで間近で見たことがない御子姫の美しさに心を奪われる思いがした。将吾の眼差しに気づいた御子姫は、車椅子に座る将吾の(もも)に手を添えながら、顔を近づけそっと将吾に耳打ちした。

「将吾様、今、本家筋末席ではございますが、それはそれは器量良しと評判の者との縁組を取り計らっております。どうか、いましばらくお待ち下さいませ」


将吾が得意げに脚を失った際の武勇談を話している間、御子姫は将隆の傍らで相手をしていた。

「将弥はどうした」

「あちらに、皆と一緒におります。今回のイタチとの戦い方では、輪紋衆の陣形が要でございますれば」


「叔父上には、(ケガレ)との戦を担う頭領としてお願い申し上げます。

みな、若い者が多く、戦い方を知りません。

私は、将吾様お一人ををお救いするのに一時(いっとき)力を使い果しました。もしまた同じことが起きて、同じように救えるとは言えません。

そのためにも勉強を、皆にさせて下さいませ」

御子姫は下から顔を覗かせ、再度深々と頭を下げた。将隆は広間の様子を見渡しつつ、将吾を列席させるよう促した。将隆とは、御子姫の目論見通りに話がついた。



その日全体会議が終了し、いつものように船ごとの指導と統率を行う長が集まって、今後の打ち合わせをしていた時のこと。

皆口々に将隆との話し合いが無事済んだことを喜び合っていた。今後、将吾が来た時には御子姫が対応した方が、いろいろと都合が良いだろうということになった。

奨弥の顔を見ると平然を装ってはいるが、御子姫は目が合うと内心苛立っているのがよくわかった。


早々に御子姫の私室に引き上げてくると、万が一将隆がやってきた時のことは話し合っていたとはいえ、将吾に対する御子姫の態度には奨弥もついつい文句が出ていた。


「叔父貴にはわかるけど、どうして将吾なんかに、あんなにくっついて。あいつの姫を見る目つき、思い出しただけで腹が立つ」

「あら、ちょっとやりすぎでした?」

「やりすぎなんてもんじゃないよ。肩に手を置いたり、耳うちするのにあんなにくっついて。大勢の前だから将吾も手は出さなかったようだけど」

「妬いてらっしゃるの?」

どこか嬉しそうに笑っている御子姫に、奨弥は今すぐ着物を全部剥ぎ取って、自分の刻印を全身につけてやりたくなった。


激しく口づけると、首筋にも強く口づけた。いつもなら人目につくかも知れないところには決して残さない。でも今日は違った。

帯を緩めると、あっという間にすとんと着物を脱がせ、襦袢(じゅばん)のまま担ぎ上げると寝屋に連れて行った。

今日の御子姫は緋色の肌襦袢に濃い桃色の着物を着て、まるで男を誘うのが目的のような色香だった。


布団の上に転がされ、緋色の襦袢からすらりと見える白い脚と白足袋。

「姫、ご自分がどれほどの色香を振りまいているのか、おわかりですか」

奨弥は襦袢をめくり上げると足袋を脱がせ、白い肌に口づけながら紅く刻印をつけていった。太ももから腰から、丸みを帯びた美しい尻にも、これでもかと口づけていった。緋色の襦袢、白い肌、艶やかな黒髪。これ以上ない美しさだった。その白い肌が上気し、ほんのりと薄桃色を帯びてくる。奨弥は勃ったものを押さえながら、さらにまだ御子姫の肌に口づけた。


ーーああ、もう気が狂いそうだ


御子姫が腰をくねらせて喘ぎ声をあげる。白くて細い指先を、桃色に色づいた口許に咥えこみながら喘ぐ様は、自分のものでなかったらと思うと、胸をかきむしられるようだった。


「はぁ、あああ…はあん…んあぁあん…うん、あああああ…ぁん…」

太ももに何度も口づけながら、股の内にも口づけながら、すべてが自分のものだと、目に見えない正体不明の者への激しい嫉妬心に囚われどうしようもない。

襦袢の前をはだけさせ、胸元へも所狭しと口づける。うなじにも背中にも、唇を這わせて口づけていく。

御子姫の股からうっすらと滴り落ちてくる、芳しい匂い。ゆっくりと(いき)り勃っているものをうずめていく。


ーー俺のものだ


激しい執着心が、ふつふつと湧き上がる。今までになく激しく抱かれて、御子姫は大きな声が漏れていくのを、指を咥えて抑えていた。それさえも感じてしまい、もうなにも考えられず、ただされるがままに声を上げていた。


何度も何度も逝かされ、御子姫はあひんあひんと腰を振った。


ーーこんな姿、俺だけだ


もっと声が聞きたい。わざと声が出るように、股の間に顔をうずめると、芯を剥いて舐めまわし、声が出るのを聞いてまた己の物が大きくなっていくのを味わった。

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