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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター10「魔王」
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97話「撤退」





 「……………。」


靁の中に入った魔王は、消えた。なんで消えたのか全くもってわからなかった。ただわかったことはこの世のものとは思えない世界が時空が完全に歪んで、それが一気に治った時のようなそんな音が聞こえて、次に靁の胸から邪悪な残滓が消えたこと。


 「靁………!」


唖然としていた靁に大きな声で語りかける。そうすれば、靁は俺の方へと振り向いて信じられないような表情をする。だが、その次には。


 「大丈夫だ。」


落ち着いてそう返事をした。俺はその言葉を聞いた時、ようやく安堵した。靁はしっかりと元の靁に戻っている、姿はだいぶ違って多分もう戻ってこないんじゃないかと思ったくらいだったけど、でもそんなことはなかった。


 「よか──」


 [グゥゥゴォォォォォ!!!]


 「!?」


崩れ去るという言葉が真っ先に浮かぶ揺れと音、今いる足場が次の瞬間には立っていられないものになるとすぐにわかる衝撃、頭が瞬時に真っ白になる中、靁は俺に言った。


 「走れ天馬!ここはもう終わる!!」


 「──っあぁ!!」


意味に合点いった俺たちは靁に立ち上がらせてもらって、全力疾走した。主人がいなくなった城なんてものはすぐに崩れるってよく聞くし、別にこういう展開がないがちだなんて思ったことはなかったけど。


 「こんなのアリかよ!!」


崩れる巨城からの脱出なんて、ゲームだけで十分だ!本物のこれは本当に命の危機しか感じない、崩れて落ちる瓦礫の山、禍々しかったものは全て抜け殻の雨のように容赦なく俺たちを押しつぶしに来る。毎秒毎秒に確実な命の危機を感じる!!


 「!どっちだこれ!?」


行きは楽だった道も瓦礫で埋もれていたりとか、変な分かれ道のようになっていたりとかその場所はとんでもなかった。まるで無重力の中にいくつものデブリがあってそれが毎秒激しく動いている中を駆け抜けながら頑張れ!って酷い応援されてるみたいだ。


 「まっすぐ走れ!先導する!」


靁は俺の前に立って、光影を使って直線上の全ての瓦礫や道、壁なんかを破壊と繋ぎをしていく。こんな荒技で渡るだなんて思っても見なかったし、靁が作った足場ももうほとんど壊れかけのものをただひとつに引き合わせた程度のもの、渡っている間は生きている心地がしないような揺れと、高所恐怖症なら絶対失神しているような、最悪の出来だった。


でも、ない道のりある道の通り、俺は言われた通りまっすぐ走る。魔王城の出口の方角に、その前にその周囲がどれだけ俺たちを殺しにかかったとしても、そんな死の刃から絶対に逃げ切るために。


 「うおおおお!うおおぉ!!おおおおおぉぉぉっ!!!」


自分は生きている!っと理解するために大声でひたすら渡り続けた。そしてそんな地獄の帰り道を経験して、やっとだった。魔王城の入り口であり、出口を見つけた瞬間、もうなりふり構ってられない俺は靁の作った道をある程度助走をつけて大ジャンプする!


 「ッ────っ!?」


ただ、それもあと少しで足りないことに気づく、すると靁は俺の上を大きく飛び、俺の手を掴んでそのまま向こう側の安全な大地へと連れていってくれた。


 「───危なかったな。」


 「わ、悪い…。は、はは。」


後に残ったのは完全に崩れ落ちた魔王の城、そして俺の危機一髪の乾いた笑いだった。




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