86話「ニツイの想像」
俺たちの話し合いは終わった。もうこいつに手加減する必要なんか、音場をかける必要なんかはない。こいつは音風奏を真の意味で殺した。だから、俺たちがすることはただ一つ、その呪縛を解き放つこと、死を持って。
「……そういえば二つ目のこと話してなかったね。僕は天馬、夏。君たちには特に恨みはないんだ。だから、命が惜しかったら先に行きなよ。」
「────なんだとッ!」
「君たちには僕を倒すより、魔王を倒すって重大な役割があるんだろう?なら早くしないとね。。。」
今更、こいつは俺たちのことを甘く見ている。この件に君は関係ないみたいな顔をして、そうやって、俺のことを安めに見ている。そんな態度は本当に気に入らない!俺は音風奏を殺した張本人の一人だっていうのに!
「天馬、、」
「いやだ。」
「───天馬、いけ。」
「靁ッ!!」
俺は靁に怒鳴る。お前は俺の気持ちがわからないわけじゃないはずだ。なのになんで止める!なんでそういうこと言う!!
「………お前が背負う必要はない。それに、これは俺の原罪だ。出ていけ、」
「ッ───靁っ!」
「出ていけと言った。天馬、お前はここで止まっちゃいけない。」
「─────、そんなことッ!」
「天馬、私からもお願い。行って、」
「……夏───!なんで夏までっ!」
「アンタは背負えばなんでもいいって思ってるかもしれないけど、違うわ。私も、私には背負う権利だってある。───私は一人の友達としてアイツとあの子に決着をつけたいの。」
「じゃあ!俺はいいって言うのか!!」
「うるさい!傲慢なのよ!何でもかんでも!!私と靁のこと甘く見ているの!!?友達なら、その罪とか責任とか全部一旦預けなさいよ!!誰かを助けたいんでしょうッ!!」
「───、、…っ。」
夏の言葉に俺は顔を下に落とした。もうわけわかんなくなったからだ、俺は、俺にとってはあの二人を倒すことも救うことも誰かを助けるってこととおんなじなのに!
「夏。」
夏の方を叩き、靁が俺の前に出る。そして息を吸ってこう言った。
「ここは、俺たちに任せて先に行け。」
「─────、それ……っ」
「すぐ追いつく。」
「─────。。。…………わかった、待ってる、っ!!!」
これ以上いたら、多分足を前に出せないなと思った俺はもう全力疾走で前へ前へと足を送り出す。もう何にもとらわれずにもう何にも縛られずに。だってそれは友達が俺にくれた言葉だからだ。俺は、それを今度こそ無碍にしちゃいけない、絶対に。
だから、俺は走り出した。まっすぐ魔王城へ。。




