77話「孤高の思惑」
仲間に加わったポルネスの洗脳を完全に解くために夏は魔術でポルネスの状態を確認していた。
「どうだ?治せそうか?」
「……いけなくはないわね。ちょっと待ってなさい。」
夏が魔法陣をちょこちょこ動かしながら何かしている。俺はそっちの分野にはめちゃくちゃ疎かったため何をやってるかさっぱりだけど、多分なんとかなっているはずだと夏を信じている。
「申し訳ありません。私のために。」
「いいんだよ。こっちも戦力が多い方が助かる。国王、そしてその後のトーマスを倒すためには俺たちだけじゃ足りないもしれないからな。」
「……勇者様方、そしてカテナ様は十分強いと思いますが。この短時間でどんな修行を積んだのですか?」
「企業秘密で。」
半年を半月でやっていたなんて言っても到底信じられないだろうし。それに、靁ならここはバラさない方がいいというだろうからな。
「ポルネス、貴方に聞きたいことがあるのですが。」
カテナが一歩前に出て、ポルネスに問いかける。
「私が力になれることでしたら……。」
頷きながら答えるポルネスにカテナも頷き返す、そして優しい口調でこう聞いた。
「お父様は何を目的にこんなことをしたの?」
「………わかりません。国王、貴方のお父様は私が知る限りでは暴君のようなことをする人ではありませんでした。民を思い、そして誰よりも平和を望んでいたはずなのです。ですが、私が聖騎士になったあたりから随分と人が変わってしまったようでした。憶測でも、その真意は計り知れない思います。」
「そう。」
「誰かに操られているってことは?」
カテナが俯いたところで代わりに俺が質問をする。しかしその問いにもポルネスは難しそうな顔をして横に振った。
「わかりません。トーマスがそのようなことをするかと言われれば難しいです。彼は私以上の忠誠心を持っていましたから。」
「……魔族がこれをやったとしても不思議じゃないけど、わかんないよな。」
「はい。お力になれず申し訳ありません。」
「いいのです、ポルネス。わからないのなら直接問いただせばいいのですから。」
[バリィィィン!!]
ちょうど話がひと段落ついたところですぐ近くの窓ガラスが音を立てて割れ、暗い人影が中に侵入してきた。ただ気配でわかっていたからか、俺は別に警戒なんてしなかった。
「すまない、遅くなった。」
「靁、城下町の人は大丈夫そうか?」
「あぁ、困ったことに聖騎士達が勝手に殺そうとするもんだから全員行動不能にするのに手間取った。確認している限りでは逃げ遅れもいなさそうだ、これならここら一体が決戦場になっても誰にも被害は出なさそうだ。」
「………貴方は勇者様と一緒にいた魔族。どうしてここに!」
ポルネスが警戒しつつも、靁のことをじっと見つめる。俺と自然と会話をしているところから、敵じゃないことだけは理解してくれた様子だった。ただ、このまま変な誤解がこの先生まれるのはなんとか避けたい。
「靁、話してもいいよな?」
「あぁ。ついでにアレのことも話しておけ。」
「わかった。ポルネス、聞いてくれ。」
俺はポルネスに靁の話、そして魔族とはなんなのかを説明した。
「な、なんという。では、私がやってきたことは。」
「あぁ、辛いかもしれないがこれが現実だ。実際に靁は見ての通り大魔族になっちまった。そして、俺たちが敵だと思っていた魔族は………」
「…………私は、今まで国のため、民のためと思ってきましたが、まさか。そんな……」
「……その絶望、俺もわかる。でもだからこそ、犠牲になった人たちのことを忘れずこの戦いをさっさと終わらせて俺たちは平和な世界を作りたいんだ。みんながみんな、殺し合うような苦しい世界じゃないように。」
「……!ナリタ様、貴方はそこまでの覚悟を。わかりました、不詳ポルネス、勇者様のその意思に賛同いたします。私も余生の目的が生まれました。勇者様達と私も平和な世界を作っていきたいです!!」
「……ポルネス、わかった。改めてこれからよろしく頼む。」
「ハ!」
ポルネスと暑い握手を交わした時、ガラスが割れるような音がした。ポルネスは何かに操られているようなどこか盲目的な目をしていたのにも関わらず、今の音をさかいにその瞳には光が戻った。
「天馬、終わったわよ。」
「アマミヤ様、ありがとうございます。」
「別にいいわよ。それより、さっさと状況が悪化しないうちに早く行くわよ!」




