76話「喜ばれぬ着名」
聖騎士団長ポルネス、村を俺たちがいるという理由だけで火を放ち、そして村人達を一人残らず虐殺した張本人。それが、たとえあの国王の命令であっても、お前はそれをなんの悪びれもないと思ってやったことを知っている。
「ポルネス。。」
「お待ちしておりました、勇者様方。そしてカテナ様。残念ですが、貴方たちはここまでです。」
その聖騎士は自信に満ち溢れていた。笑顔、言葉遣い、どれをとっても自分がこれから負けるだなんて思っていないような顔だった。俺はそんな立ち振る舞いに嫌悪感と怒りを抱いた。
「それはどっちのセリフかな。俺たちがお前に勝てない道理なんてない。その力を自分のもののように思って、本当の責任も意味も知らないで、ただただ従っている奴に!」
「…………。」
(……なんだ、その顔。)
ポルネスは納得するような、それを受け入れるような態度で目を閉じて少し俯いた。この前の感じとは違う。なんだ?
「従っている?えぇ、そうでしょう!!今の私は従っている、この世を正しく導く我らが王のために。そしてここで斬り伏せる、障害となり人々に求められなくなった貴方達勇者をこの私の手で!!」
ポルネスは地面へと突き立てていた剣を引き抜き、真っ直ぐ俺の方へと切りかかってきた。それを俺を軽くいなしつつ、応戦を開始する。
「天馬!」
夏が魔術を発動して、援護攻撃するも、ポルネスはすぐに反応して回避、距離をかなり取り体制を立て直そうとするところを。カテナの矢が狙う。
「っ!カテナ様!!」
「────ポルネス、あの時の貴方の行動を私は許すことはできません!」
「……っ!」
ポルネスは俺たち三人の攻撃を回避と防御をうまく使いながら接戦する。靁と以前戦った時のことを聞いていたからかある程度行動を読むことができる。だがそれを抜きにしたとしても他の聖騎士とは一線を画すほどの力を見せてくる。
「────っ!まだまだ!!」
だがクリンタルの元で修行を積んだ俺たちの敵じゃなかった。長期戦に持ち込まれればオリジナルである俺たちの方が遥かに上だし、鍛えたことのないカテナですら聖騎士たちより少し上くらいの力を得ることができている。三人がかりで戦えばいくら神聖で強化されていたとしても押し切れる。
「がはッ───…!」
「ポルネス、貴方の負けです。」
カテナが弓を引き、ポルネスの頭へを狙う。ただ最後の良心か、その言葉のあとすぐに撃つなんてことはしなかった。
「………私は、勇者様方。貴方たちを許すことなのど到底できない。貴方たちは、確かに強い。私よりも強くて多くのものを守れるかもしれない。だが貴方たち勇者はいつだって現れては強大な敵を倒すだけでその後の平和を作らなかった。貴方達のせいだ!世界がこんなことになったのは!!」
「何言ってんのかしら。王様のためとか言っておきながら、今度は世界のため?虫のいいこと言ってんじゃないわよ!!」
「……そうだ、その通りだ。勇者様、わかっているなら私にとどめをさせ!」
「………ポルネス。」
カテナは弓を下ろした。ポルネスの言動から何かを感じ取ったんだろう。俺も、なんだが聞いていた話と全く違う、国王に対して盲目的な忠誠心があって、その他どうでもいいみたいな奴だって靁から聞いていた。でも今はなんだか違う気がする。
「夏、待ってくれ。」
「………。」
「カテナ、お前が知っているポルネスを教えてくれ。」
「……ポルネスは元々騎士団長でした。国王に対しての忠誠心は高く、そしてなにより彼は自分が平民で苦しい生活をしてきたこと、だから騎士として人々を守るためにここまできたことを、私は知っています。実際に彼の口から聞きました。」
「……カテナ様、何をっ!」
「今のポルネスをどう思う?」
「国王への忠誠心は盲目的となり、確かに力も強くなったと思いますが。本当にこの人がポルネス騎士団長というのでしたら村人を皆殺しにするはずありません。」
「……その通りだ。だから、早く私を!」
「ですが!!今のポルネスは私が知っているポルネスだと思います!根拠はありませんが、自分を痛めつけるように戦って何かに必死に争っているように見えます。彼の忠誠心は確かに国王にありました、ですがそれら全ては国の安寧を願ってのものです!だから、私はポルネスにチャンスを与えたいと考えてます!」
「カテナ、、様……っ」
「………わかった。ありがとうカテナ。」
俺はどうしようか、少し考えた。夏は多分俺のやろうとしていること、検討していることに反対するだろう。でもカテナの言っていることもまた正しいのかもしれない、クリンタルのところで何を学んだか俺全部把握しているわけじゃないけど、前のカテナより戦闘も交渉もなんだか王族のそれにだんだんと近づいてきている気がする。
人を正しく見極めるって点において靁くらいに優れているって思う。
(耐性が弱い一般人を洗脳して聖騎士に仕立て上げている。靁、お前の言っていることは、いつだって間違ってないよな。ほんと、、)
なら、今俺が俺としてすべきことは。
(ポルネスを生かす。ポルネスを殺す。)
「カテナ、ポルネスに手当てを。」
「!はい!!」
俺の言葉を聞いてカテナは持っていた調合したてのポーションを無理矢理ポルネスに飲ませる。ポルネスは訳もわからないうちにそれを飲み干してしまい、鎧の隙間から見える傷は瞬く間に回復した。
「カテナ様?!勇者様!何を!」
「天馬。説明してくれる?」
「………ポルネスは生かす。カテナの言っていることすべてを信じ切ることはもちろんできないけど、聖騎士になったやつはみんな国王に強い忠誠心を抱くように洗脳されてる。だから、ポルネスのやったことは悪いことだとしても、それを起こす源を作ったのは国王だと思う。だから、俺はポルネスを生かして国王を打ち倒す。」
「勇者、、様。」
「………そう、アンタらしいわ。こっちも文句の一つくらい言えないほどに。」
「……夏ごめんな。」
「いいのよ。ほら、ポルネス。天馬に何か言ったら?」
「………勇者様。。。」
「俺何度も言うの苦手だから、だから、ポルネス。俺たちと一緒に、国王を倒すのを手伝ってくれ!」
「………わかりました。敵に命を助けられ、かつての主人を裏切る、それはもう大罪だけでは片付けられない悪行でしょう。ですが、ナリタ様、貴方の言葉には平和へと意志がある。ならば、私がすべきことはただ一つです。」
ポルネスは立ち上がり、鎧に右腕を打ち付け俺たちに向かってこう言った。
「騎士ポルネス、自らの真の目的のために。勇者様の力となります!!」




