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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター7「剣が指し示す道」
63/200

63話「いにしえの勇者」




 目の前に現れた女性は俺たちに向かってそう言った。俺は頭が追いつかずに後ろの三人の顔を思わず見たけど、全員俺と同じような感じだった。


 「前任者……?」


 「そうだ、こんせの勇者よ。」


俺が息を呑んで口にした言葉に、肯定の意を示す神霊。


 「おまえたちが、ここにきたということは、おそらくチカラを求めてきたのだろう?」


 「力……って!ちょっと待ってくれ!!」


危うく何も知らないまま会話を続けそうになったところを、ハッとしてなんとか止める。勇者?力?前任者?古?もう色々とよくわからない。ただ剣に導かれてきただけの俺たちは、知っている人(?)に説明してもらわないといけない。


 「えーと、俺たちはただ剣に導かれただけで!何もわからないんだ、古の勇者も、今世の勇者?も!だから、説明してほしい!!」


 「………なに?わからないだと?しらないのか?」


 「そ、そうだ。知らない!」


何か決定的な部分で食い違っている気がするけど、今はとりあえず会話のキャッチボールから始める!さっきはそれができてなかったんだから。


 「おかしいな、少し覗かせろ。」


 「え?」


そう言った、古の勇者は俺のオデコあたりに唇を当てた。ひんやりとした感覚と同時に思考が真っ白になる。俺は今何をされてるんだ?状態だ。


 「なっ!!」


 「待て夏!飛び出していくな!」


 「何が待てよ!何あれ!何あれ!?」


杖を振り回しながらこっちに向かってくる夏をなんとか静止する靁。そこで俺も今自分がされていることを理解した。


 「!?ちょっっっと、待て!う、うわあああ!!?」


 「っむ、おい。まだよみとれていない、おとなしくしていろ。」


引き剥がしたと思ったら再び、俺のオデコに唇をつけてチューチュー吸い始める。古の勇者、これが古の勇者のやることなのかよ!


 「だ、だからって、これ以外の方法あるだろ!?うおぁぁなんか吸われている感じする!!離れろって!!」


 「天馬から離れなさい!この女狐!!」


 「アマミヤ様!落ち着いてください!」


 「夏落ち着け!!お前は天馬のなんなんだよ!」


その後、俺はひとしきり頭の中の記憶を吸われて解放された。オデコには何にもついていなかったが、変な感触だけがただただ残っていて、あんまり良い気分じゃなかった。(ちなみに記憶を抜かれたわけではないらしい。)


 「うむ、うむむまま、うーん。っと。なるほどそういうことか。」


 「……わかったか?」


 「あぁ、わかった。それにしても、これはお前たちは随分と大変な目にあってきたようだな。」


心なしか目の前の古の勇者は饒舌になっている。だが、そんなことよりも今は情報が欲しかった。


 「…………。それで、そっちがわかったなら、こっちにも教えてくれるよな?」


 「あぁ。お前たちにもわかりやすく語ろう。ここは、勇者の神殿と呼ばれるもの。」


 「勇者の神殿。」


 「前任者である私たち、勇者が建てた、世界の最後の砦。語弊のないように言うなら勇者の祠が神の手によって作られ、勇者の神殿は人の手によって作られたという点だろう。」


 「……ここは、どんな場所なんだ?」


 「勇者が神の御使として、大地に降り立つ。人々はそれを信仰する。ただ、勇者なんてものはそんなに偉い存在ではない。無限の命を持つわけでも、死者を蘇らせることもできない。ただの人間だ。それを本人達はよく理解している。今のお前達のようにな。」


 「…………。」


 「そんな、信仰なき信仰が今後も続くと考えた、私を含む過去の勇者達はこの場所を作った。いつか、いつか、この無限が勇者の手で終わることを願って───」


 「………ごめん、話が見えてこない。」


 「。つまりだ天馬、ここは勇者を鍛える第二のトレーニング場ってことだ。」


 「あー。」


靁の要約のおかげで、すごくわかりやすく理解できた。


 「あの、ユキシマ様、とれーにんぐ場とは?」


 「鍛えるための場所。」


 「なるほど。」


靁のあっさりとした説明にカテナは頷いて理解した。もう次から靁に要約を頼んだ方がよさそうだ。


 「…。まぁ、それでお前たちはその勇者の剣に導かれてここまできたというわけだ。来るべき最後の戦いに勝つために。」


 「なるほど。。。」


なんとなくだけどわかったか。つまりこの俺の勇者の剣が、今までじゃ勝てないことを理解して、ここに俺たちを連れてきたってことか。それか、魔王を倒すための最後のステップアップってことで。考えてみれば自分の武器なのに、まだわからないことだらけだ。


 「つまり、俺たちはここで強くなれば良いってことか。」


 「そういうことだ。大魔族の勇者。」


 「…………。」


靁のことを見抜いた。少なくとも今は人間の姿をしているから、外見だけじゃ絶対にわからないはずなのに。っていうことは、少なくとも口だけ上手なやつじゃなくて、本当にいにしえの勇者として生きていたんだな。


 「なんだ、本来ならば何も言わないのか?」


 「……勇者は確かに魔王を倒す存在ではあるが、それだけの殲滅兵器じゃない。お前の言葉からはそれを感じられた。それに、魔族を嫌ってるなら俺を入れさせる前にどうにかするだろ。」


 「ふふ、相当頭がキレるようだ。バカ真面目なそいつと座を交換した方がいいのでは?」


 「……。あれ?今の俺のこと?」


 「他にこの中の誰がバカ真面目なんだよ。」


 「言ったな!!」


 「アンタたちやめなさい……偉い人の前で。」


 「あはは、別に構わない。こんなことは久しぶりで私も楽しんでいる。お前たちを見ていると、昔を思い出すな……。」


 「今、昔って。」


 「おっと、長話が過ぎたな。ついてこい、」


俺が古の勇者に聞こうとした時、はぐらかすように話の腰を折られた。もしかしたら触れられたくないことだったのかもしれない、他にも聞きたいことがあったりしたけど、タイミングが今のところは合わなさそうだと、考えた俺は何も言わずに後についていった。





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