61話「剣の光」
村の最後を見届けた俺たちは、とある場所に向かっていた。ちょうど時間は村を出て数時間のあたり、いくあてもなく彷徨っていた俺たちは暗がりの森で小休憩を行っていた。
「このまま戦線に行っても、やられるだけだ。せめて、今以上に力をつけないといけない。」
本格的に、自分たちの戦いをするにあたっての方針を話している中で、靁から出た意見は全くのその通りだった。なんとか三体の魔族を退けることができたって、次また勝てるなんて保証はどこにもない。でも、
「じゃあどこに行くっていうの?流石に止まっているのもまずいでしょ。」
「………そうだな。」
問題は次にどこに行くのかという話。俺たちを歓迎してくれるところなんて指で数えるくらいしかないだろうし、何よりこれ以上誰かを巻き込みたくない。俺たちはそんな共有の認識をしていた。
「………もっと、力をつけられる場所。」
俺がそう口にして強く思った時だった。鞘に収めてあった剣が突然光出した。
「天馬、剣が!?」
俺は慌てて剣を引き抜いてその光に驚きつつ、それを天に向かって掲げた、すると剣は一筋の光をだしある方向に向けて一直線に続いた。
「……なんの光だ?」
「わからない、でも、なんか。こっちに行くべきな理由がする。」
今までこんなこと起こったことなかったから、自分でもすごく動揺している。でも、それでも剣を通して意思が伝わってきた。
この光が続く方へひたすら向えと。
理由はわからないし、なんでそんなことになっているのかもわからない。けど、何か止められない衝動があった。
「────みんな、この剣の先に…行こう!」
どうせここで何かできるわけでもなかった俺たちは、剣が指し示す光に向かって動き始めた。
森を超えて、湖を越えて、山を越えて、数十日の旅路を経て、俺たちは剣が指し示す場所へと辿り着いた。
「ここが?」
剣は俺には何も言ってくれない。ただ変わらず薄い光を放ち目の前の大きな洞窟の中を指し示すだけだった。
「こんなところがあるなんて、」
「自然に作られた場所に見える、どうする?天馬。」
「行く。少なくとも変な化け物なんて出てこないはずだ。」
「……その確信、どこからくるのよ。」
俺がまっすぐ進めば三人は仕方なく俺の後をついていってくれた。そして洞窟を進んで、進んで、進んだ。自然に生まれたにしてはどこか人工的に作られたような、不思議な感じが止まらなかった。でも俺は自分の、勇者の剣を信じてただまっすぐ向かった。
そしてかなり歩いた時、巨大な扉にぶち当たった。まるで巨人のために作られたみたいな大きさ。あたりの洞窟内で発光する鉱石達が神秘的にもその空間を青白く照らしていた。
「扉、大きいですね。」
「ねぇ、何か書いてない?」
「書いてはありそうだけど、読めない。」
「………剣、掲げ、先を創れ?」
「靁、読めるのか?」
「───、あぁ。」
しばらくの沈黙の後靁は答えた。自分でもなんで読めるかわからないみたいな顔だった。でもそんなことより俺は靁が言った言葉を頭の中で復唱する。
(剣、掲げ、先を創れ。)
俺は剣掲げてみる。ただそれでは何も起こらない。つまり先を創れ、っていう言葉が何か別のことを指しているんだと思った。ただ、先を創るなんて見当もつかない。何を言ってんだって感じだ。
「先……創る。………もしかしたら。」
「天馬?」
「───。プロヴィデンス・フォース。」
[────クォーン、ゴゴゴゴゴガガガガガッ]
神の力が体に宿って、剣先にまでを神聖に包み込む。三人は俺の行動に驚いていたけど、俺は心の中でこれが正解だっていう確信があった。そのおかげもあってか、光に照らされた扉はまるで血液が流れるみたいに扉のくぼみや模様全体に光が広がっていって、とんでもない音を立てながらゆっくりと開いた。
「扉が開いたな。」
「すごいじゃない天馬、なんでわかったの?」
「創る。神はこの世界を創ったって言われているから、もしかしたらって思ったんだ。」
「……お前にしてはかなりキレたな。」
「だろ?」
「……先進んで良いのよね?」
扉の奥をみる。真っ暗で何にも見えない。ただ、そんな感じでも俺たちを待っていた、俺たちを歓迎してくれているっと直感で思った俺は、少し怖かったが恐れず一歩前に進んだ。
「あぁ。行こう。」




