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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター1「勇者が生まれた時」
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05話「"差"別"」




 異世界召喚して二日目、俺達は国王に呼ばれ昨日召喚された場所へと案内された。夏と音風さんもそこにはしっかりおり、安心した。


 「おはようございます。勇者様方、昨夜はしっかり眠れたでしょうか?」


宮廷魔術師のトーマスが国王に代わり、一礼のあとそう聞いてくる。

周りに目をやると全員万全とまでは言っていなさそうだ、環境が急に変わったのに朝から元気100倍なんて。


 「はい!」


このいい返事をする天馬くらいしかいない…………。さてはこいつワクワクしているなという目で見ながら自分の状態を確認する。


 (眠れたが、夢のせいで疲れが取れない。)


肩に何かが載っているような気だるさがあるが、他と比べれば大したことないレベルだ。


 「それは結構です。それでは本日は、皆様方の力を知るため神兵武装を顕現させていただきます。」


 「神兵……なに?」


 「神兵武装です。」


そのあと宮廷魔術師のトーマスから説明を受けた。どうやら言い伝えでは勇者には神兵武装と呼ばれる特殊な全身装備が存在するらしい、勇者が自らの力によって顕現させ、その装備は他とは比べ物にならないほど強く、早く、そして神にも匹敵するほどの圧倒的な力を発揮する。らしい。


勇者自体が神の尖兵と表されていることから、"神兵武装"と呼ばれているようだ。そしてトーマス曰く、俺たちにそれ出せと言う。


 「えーと、誰か出し方わかるか?」


 「わかるわけないじゃない……。」


天馬の質問に真っ先に答える夏も自信がなさげであった、音風さんと内村くんも喋らないがどうやら同じ様子。もちろん俺も知らない、


 「言い伝えですが、神兵武装は。勇者が自らの覚悟と意思を見せた時に現れるそうです。」


 「覚悟と意思って……」


急に始まった根性論すぎる説明に夏はドン引きしている。


 「覚悟、意思か………!」


天馬はなにやらわかったような言葉を呟いて集中し始める。すると


 [シュリリィーーン!!]


まるで戦隊もの、いや魔法少女の変身シーンのような特殊な光が天馬の体から溢れ出した。そしてその場が騒然とする中で天馬は光から解き放たれ、その姿を場に見せた。


 「できた……か?!!」


天馬の装いは先ほどの学生服とは異なり、この世界に適応した英雄、いや勇者のようなものへと変わっていた。腕にはいつのまにか聖盾がついており、腰には格好が良い剣まで備え付けている。今の一瞬で一体何が起こったのか、まるで意味がわからない。


 「で、できたって何?!」


 「いや、こう……なれっ!て思ったら。」


 「こ、根性論……。」


夏のツッコミ、天馬の返答、呆れる俺。そして拍手するトーマス、もう何が何だかわからない。


 [シュリリィーーン!!]


 「………え?」


 「うん、できた……成田の言う通り。」


 「えぇぇぇぇっ!?嘘!」


次に変わったのは内村くんだった。彼の服装は全身黒く、肩から腰にかけて弾倉がくくりつけてあるベルトがあり、両脇に砲身が長いフリントロックピストルを両脇に携え、随分と鋭いカウボーイハットをかぶっていた。

今までの内気で掴みどころがないような雰囲気とは一変、ある意味天馬より目立った服装へと変身していた。


 「心地がいい。」


 「な!そうだよな。なんかしっくりくるって言うか!」


 (そ、そうなのか?)


内村くんと天馬は互いに変身した感想を述べている。


 「……あーもうっ!何より覚悟って、何より意思って!!っっってえ!?!?」


 [シュリリィーーン!!]


夏がいつものように起こり出したかと思いきや、光が彼女を包み込み、一瞬にして変身させる。


 「マジかよ。おい靁、夏のやつ怒りで変身したぞ、実はスーパーなんちゃら人なんじゃないか?」


 「な、ハァっ!?!」


天馬の気持ちはわかるが本人を前にして言う言葉では決してない。ちなみに夏の服装はざっと見た感じ魔術師のような装い、金の刺繍がかかった紫のローブを上から着ており、いつのまにかその手には人を殴って気絶させる用の木製の杖が握られていた。殴られたら痛そうだ。


 「え、夏ちゃんも……。」


声を出さなかった音風さんもいつのまにかあわてている。それより夏のこと夏ちゃんとか言うのか。という驚きが大きい、一体いつから……。


 「音風さん、自分の心に従ってみて。今何がしたい?」


 「今……私は───。」


内村くんが慌てる音風さんを落ち着かせるために、肩に手を置いてそう解く。そして落ち着いた音風さんは目をつぶってそう言い始める集中する。この時、天馬と夏は言い争っていた。


 [シュリリィーーン!!]


音風さんも同様に変身を経て、姿を大きく変えた。黄金の髪飾りをつけ、服は白色でラフな聖職者のようなドレス、手に持っているのはフルート?手持ちハープ?少なくとも数種類の楽器が合体したものであった。果たして武器なのだろうか?っと疑問は残るも、この中では1番優しいようなイメージを彷彿とさせる。


そして四人が簡単に変身したということは残るは俺。


 「さぁ、ユキシマ様も。」


トーマスがそう言う。俺はみんなの心境がいまいち理解できない、でもそれでも単純な天馬ですらできたのなら俺にもできるはず、必要なのは覚悟と意思、内村くんが言うには何をしたいか、俺は自分なりに考えそして集中する。


 [シュリリィーーン──────ィン………]


目の前が真っ白になる感覚が一度きり、目を開けてみれば俺は何も変わってない。


 「………ぁ、え?」


 「これは……?」


トーマスが俺に対して疑惑の目を向けてくる。背後のみんなは驚いたような顔で俺をみてくる。


そして俺は、俺はこの時、他とは違う大きな"差"というものを感じた。




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