48話「シンの序章」
「あぁ?コーズがやられて、クランクインが勇者を連れてきたダァ?」
「はい。ですので貴方もまた参加してもらいます、勇者処遇の件で。」
うざったらしい女の魔族将軍が俺にそう連絡してきた。俺は頭を抱えながら舌を出し、吐きそうな顔を演じる。要はお断りって表明だ。
「………貴方の意向について魔王様に連絡する義務はありませんので、伝えましたから。」
「クソが。」
どっちにしろ選択肢がねぇじゃねぇか、さてはこいつわかってて言ったな。
(腹黒がッ。)
結局俺はまた魔王城に逆戻り、折角面白くなりそうな戦いがいまからはじまるって気がしたのによ。
(んで、またこれか。)
見慣れた構図、魔王の横に俺と魔族将軍。クランクインはいない、つまり目の前のクソでかい門扉から入ってくるってことだ。コーズの時と同じじゃねぇかと思いながらイライラしてアイツを待つ。
「バークーサー、不機嫌だな。」
「当たり前だ。勇者をとっ捕まえただか、どうだかしらねぇが俺からすればどうせ戦いになんねぇもんに、毎回呼び出されるのは不服の極みだ。」
「フム。では戦いになったらどうする?」
「………そん時は守ってやるよ、部下らしくな。」
「心強いな。」
魔王と俺の会話はここではもはや世間話みたいなもんだ。確かに俺はこいつの部下でこいつは俺より強い、だから?こいつが毎回俺のことを親友みたいに話しかけてきたんじゃこっちも普通に答えるしかねぇ。なんせこの魔王は
(俺が認めた。最強の勇士だからな……!)
[ガゴォン──]
クソでかい門扉が開いて、クランクインと男勇者。確か銃使いだったか?を連れて入ってきた。ただここで少し面白えって感じたのはクランクインが勇者の野郎に、なんの拘束器具も付けていねぇってことだった。さながら入場は魔王の部下2人ですって感じだ。
「魔王様ぁ〜勇者を連れてきたよー。」
「ご苦労。さて、お前の名前は──そうか、内村正治か。」
「僕のこと、知ってるみたいだね。」
「そこは想像にまかせよう。さて、今の私は大変好きだらけだぞ?わかっていると思うが……。」
「……!」
そん時だったよ。勇者のやつが神兵武装を取り出して魔王に向けて銃口を突きつけたのは、俺は内心まじかよっと思いながら笑っていた。
『魔王様!!』
魔族将軍どもはこぞって勇者に攻撃しようと武器を向けたりする。でもよ魔王はそれを制止して勇者との話を優先する。俺も部下として守ってやりたいが、残念ながら今は面白い展開の味方だ。
「………驚いた。この状況で銃口を向けられるとは。」
「とてもそうには見えない。まるで僕が銃を向けるのをわかってるみたいだね。」
「どうかな。私は全能ではない、君の大切な友人を結果的に殺してしまったからな。」
「万能ではあるはずだ。それだけの部下を引き連れてたらいろんなことができそう。それで僕に何をして欲しいんだ?」
「何をして欲しいか。逆に問おう、何をしたらこちらの味方になる?」
「───おいっ。魔王、こいつもか?」
魔王の魂胆は最初から分かっていたが、それでも口を挟まずにはいられないそれがバークーサーたる俺だ。
「当たり前だ。私は使えるものは全て使う。叶えられる願いは全て叶える。それが君臨すると言うことだろう?」
「まぁ、そうだな。で?戦いがないと俺はクソつまんねぇんだけど。」
「考えてある。お前にぴったりな世界を用意する。」
「話半分なのにしっかり考えてやがるのか。んじゃ、いいか。」
多少つまんなくても、こいつがいるならもう少しマシな世界になる。そう思って俺は口を閉じた。
「………音風奏、彼女を生き返らせて欲しい。」
「ほう。これは、大きくでたな………そんなにあの者が──そうか、そういうことか。なるほど、クランクイン。」
「はいはーい!」
「ペルソドと協力してこの者のオーダー通りにあの勇者を復活させろ。命令だ。」
「うぇぇ、っと死体じゃだめですか?」
「ダメだ。」
「ウグっ。で、ですよねぇ。はーい、今すぐいってきまーす。」
クランクインの奴はテンションを低くして、門扉からトボトボ出て行きやがった。アイツの顔を見たらそりゃ傑作だった。
「これでいいか?」
「それは僕が決めることだ。でも、君なら信用しても良さそう。いいよ、君の味方になろう……ただしクランクインが誘ってくれたプランで。」
「…………なるほど、そんなことを言ったのか。いいだろう、パルワルド。」
「は、はい!」
「例の研究、どこまで進んでいる?」
「……80%ほどです。ただ人体での実験はまだ資料不足でして。」
「ふむ。悪いが内村正治、クランクインが言っていてプランは彼女の研究のことだ。おそらく……確実に望んだものを手に入れられるわけではないが、成功確率は高いと言っておこう。」
「………分かったそれでいい。」
「交渉成立、だな。では内村正治、ようこそ魔王軍へ、今日から君には私の傘下に入ってもらう。」
『…………。』
誰も拍手をしない中、俺と魔王は拍手をする。新しい仲間が加わったことはいいから悪いかれめでたいことに違いはない。なんと言っても、いつでも戦える相手が増えたのは俺ん中では嬉しい。
「おい、誰も祝いの拍手をしてやらないのかよ。」
「先ほどまで敵だったのだ。皆無理もないか。では内村正治にもアイスブレイクということで、我々魔族について教えよう。」
「教える?教えてもらう必要はないと考えない?」
「あぁ。考えない。おそらくそれは捏造されたものだからな。人間からしたら我々魔族は理性のない残虐性の塊、っといったところだろう。」
「すごいね。全問正解。」
「……どうしてくれよう、本来なら喜ぶクイズが今だと頭が痛くなるしかない。これだから人間は……。」
魔王のやつが頭を悩ませてやがる。こいつはこういうノリがいいところが面白い。魔王のくせに覇王のくせになんでも乗っかるところは乗っかる、無礼だとかそんなことは微塵も考えてない、まぁ勇者相手だからかもだけどな。用済みの人間だったらすぐ首を飛ばしてるだろうがな。
「気を取り直そう。内村正治、我々魔族は─────」
「───そうなんだ。」
「…驚かないのか。」
「驚いても驚かなくても僕は何も変わらない。やりたいことをやって殺すやつを選んで殺す。ただそれだけだよ。」
「なるほど、もう終わっているということか。いいだろう、やはりお前は私の読み通り魔族にぴったりというわけだ。」
「…………。」
「それでは内村正治、早速君の望むものを与えよう。パルワルド、丁重にそして彼の望むものを全て与えてやれ。報告書は全て私に回せ、部下の後始末として本件は私が全て責任を負う。」
「ハ。承知しました。」
パルワルドの女魔族将軍は勇者を連れて退室しやがった。残った俺たちは魔王の指示によってバラバラに解散する。ただ俺は魔王のところに残っていた。
「バークーサー。」
俺が待っていることを予見していた様な顔しやがる。いや、正確には予知していたか。
「魔王。俺を見積もって後どのくらいだ?」
「………数ヶ月程度だ。」
少しの合間の後こう答えた。ま、そんな気はするなとは正直思ってやがった。数百年生きて俺の命も随分と摩耗したもんだ。魔族っていうのは長生きする分だけ弱くなる生き物だ。だから、無限の命なんて軽いもんじゃない。
「……で、お前は?」
「─────。」
「なんだよ、俺よりってか?」
「どうだろうな。私の方が長生きするかもしれない。そこまでは見えなくなっている。」
「へぇ、やっぱお前らは短命なんかね?」
「さてな。だが、私のコレはあくまで補助的なものだ、それに私はこんなものに頼らなくとも、必ずこの世界を作り変えてみせる。」
「あん時とはまるっきり変わってないってわけか。十分だ。お前のそれが聞ければ俺はなんともねぇよ。んじゃあな、次の命令でも待ってるぜ。」
王は孤高に椅子に座り続ける。俺はそこから離れていく。こいつについていけば最高の戦いができると信じて俺はここまできた、
(間違いじゃねぇ。)
俺はここまで最高の戦いばかりができた。勝とうが負けようが最高の戦いができてきた。なら、最後の最後までこいつに付き合ってやるだけだ、たとえ明日がくだらねぇ戦いで死のうが、たとえ最後が最高の戦いで終わろうが。




