04話「夢を見ました」
同じ夢を何回も見るなんて、珍しい話じゃない。でも決まってそれがいい夢とは限らない。
(……………。)
見えなくなっていた視界がだんだんと鮮明になり、見覚えがある夢の光景を映し出す。
[バチバチ…………バチバチバチ────。]
目の前は突如として火の海が広がっていた、そこには人々が暮らしていた痕跡があった、でも今ではそれも火の中に消えていっている。
真っ暗闇の夜のことだ、一人の男が無気力ながら目の前の燃え盛る地獄を前に立ち尽くしている。
(俺はその男を見ているところから始まる。)
この夢を何回も見てしまっているからか、この光景がどんなものなのかは予想がついている。目の前で燃え盛っているものはおそらく村だ。そしてこの男はその生き残りだ。ただの生き残りではない、日によって村の人たちが焼け焦がされる中、この男は偶然そこに居合わせなかった。俺が解釈できたのはそこまで、そして目の前の男は
(置いて行かれた、人だ。)
これは全て終わったあと、全て間に合わなかったあと、その男は何も言わないがその男の感情は確かに俺へと伝わってくる。
とても、残酷な夢だ。
(………。)
残念ながら俺はこの男に見覚えはない、この光景に見覚えがない。この夢がどこからきているのか、作られた光景なのか、それとも誰かの記憶なのか、まるで見当もつかない。ただこの夢を俺は今まで何回見たのかわからない。
(……………なんで俺はこの光景を。)
何度も見るんだろう。その答えを言ってくれる奴はいない、目の前の男には話しかけるべきだろう、でも"できない"
話そうと考えてもそれを実行に移せない。何か不思議な力が働いて、そんなことができない。としかいえない、夢だからそんなもんなのだろう。
(……でも。)
夢と割り切るにしてはいささか悪すぎる。毎回この夢を見るたびにあの燃えている村でどんな人たちが生きていたのか、知らないのに伝わってくる。
感受性が高かった記憶はない。だからこれはもしかしたら目の前の男の記憶。全てを奪われた男の記憶。
(わかるのは、それだけ……。)
俺が彼にしてやれることは何もない。
(そろそろ……)
いつもこの夢を見て数分だった頃、俺は現実に引き戻される。こんな夢から今すぐにでもおさらばしたい気持ちだが、まるでこの光景はお前にとって必要だと強制されているかのように、しばらくは見ていないといけない。毎回これだ、
「………死を。」
「………っ!」
背後に何者かが立ち、俺。もしくは目の前の男に向けてそう言った。いつもと違う、っと一瞬で理解した。いつもはここで目が覚めるところを目が覚めない。どうなっているんだ、っという疑問と驚きを抱えたまま俺は耳を傾けている。
「神に、死を……。」
俺は不思議と振り返ることができない、相手の顔を確認することができない。俺の後ろには一体"誰がいるんだ?"
「──────まだ、その時じゃない。」
(……その時っ?)
目の前にいるのは男が身振りの一つもせずにそう呟いた。この男が話したことに驚きつつも俺は心の中で言葉をリピートする。
「そうか……。」
理解したことを告げる単語を言い、俺たちの背後にいた人物はゆっくりとした足取りで暗黒へと消えていった。実際に見えたわけではないのにわかる。
そして、目が覚めた。
「!」
ベットから起き上がってみれば、そこは見慣れない風景。そしてボーッとしながら昨日の記憶が正しく脳内へと流れ込んでくる。そして俺たちは異世界召喚されたことを理解する。
(……今のは─────。)
あの夢にも続きがあったのか、っと心の中で思う。夢というのは起きた途端に忘れてしまうものだが、俺はあの光景、そしてさっきの夢のことをまるで体験したかのように強く記憶に残っている。
そして、こういう夢のあとはいつも後味が悪い。