38話「失敗の風」
「はぁ。はぁ……!」
銃に弾をセットして目の前の魔族に向けて撃ち続ける。撃たれた魔族は首か頭を狙えば倒せる。けど、それでも僕のやり方は効率が悪かった。
「内村くん!」
「大丈夫、僕はまだ戦える。」
前線に出るなんてこと、今まではほとんどなかったみんなを盾にして僕は一番の敵将を狙うだけ。でも今はそんなこともできない。
(使えない奴ら。)
盾になることが僕たちにとっての最善なのに今はほとんど人手がいない。盾になるための人がいない。それも全部音風さんに対する態度表れ、結局最後に優先するのは自分の命、あぁ本当にダメでクズな奴ら。
「私が前に!」
「ダメ。君は後ろにいて、僕がなんとかするから。」
「内村くん。」
危機的な状況。でも僕は今気分がいい、音風さんに特別な感情を抱いていた奴が大体死んで、今彼女は僕を頼りにしている。僕だけを見てくれている、それだけで僕はいつもの何倍も頑張れるし戦える。
だから、そのまま君は僕のことを。
「ぁ、ああぁぁ!!!助けて!助けてください勇者様!!」
「っ!どうされたんですか!」
「ぁ、はぁ、私は!」
(…………)
君は、いつもだ。君はいつもそうやって僕以外も見ようとする。でもしかない、でも我慢しないといけない。こいつを目の前で殺したら多分音風さんは僕のことを嫌いになる。
(嫌だ、嫌だ、それだけは絶対に)
だから、こいつもいつか殺して。
「見つけたぞ。」
「ッ─────」
[ドォォォン!!!]
意識を、失った。目の前のただのクズに意識を一瞬むけていた隙に僕と音風さんを守る拠点はたった一撃の攻撃によって崩壊した。
そして理解したあのクズが戻ってきたせいでここの場所がバレたんだってことに、僕は地面を叩いてもう一度立ち上がって彼女姿を探した。
「これは、いい手土産見上げができそうだ。」
大きな魔族がその汚れた手で音風さんの掴み人質とし始めた。
「彼女を──放せッ!」
僕はプロヴィデンス・ジャッジを発動して、その銃口を魔族に向けた時だった。
[ドゴォォ!!!]
「───ゥ、………ぁはッ!」
魔族の巨大な手が僕の全身を押しつぶし、地面に叩きつけた。体全身が悲鳴をあげて何本の骨が同時に潰されて粉々になった。意識が飛びかけ、目の前の視界が落ちていく。
「お前も───連れて、ン?」
爆発が魔族の顔に当たり、声が聞こえてくる。多分雨宮さんの声だ。何か怒鳴っているみたいにいっている。そして僕はそのまま放置された。
(音風、さ………。)
あとは、僕は何もできずに意識を失った。




