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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター4「人魔戦線」
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36話「誘われた勇者」





 「キサマら、勇者さえ…いなければ───ぁッ。」


最後の上級魔族は息の根を止めた。連戦だったが、勇者の祠に行ったおかげか今じゃ上級魔族を1人で大勢対処することもできるようになった。ただ強いことには変わりないし、下級みたいにすぐに倒せるわけじゃないところは相変わらず。


 [ドォォォン!!!]


少し遠くで球体型の爆発が起きる。きっと夏の魔術によるものだな、っと思う。多分むこうも片付いたんだ。


 「なら、狙うはクランクインのみ!」


アイツの居場所はだいたい見当がついている。魔族っていうのは人間みたいに理性的じゃない、上級魔族も結局のところはプライドの高さが仇になって負けることが多い。だから俺たち勇者はそこを突く、クランクインは負ける気がなかったりそもそも危険でも場所を移動したりしないやつだ。だから魔族が一番多く集まっている中心に


 「居た!」


アイツは決まって現れる。


剣を構えて魔族を踏み台にして高く飛んで余裕な表情で佇むクランクインに向かって奇襲をかける。


 「獅子王剣ッ!!」


 「───っ!」


クランクインは俺の姿を見てすぐさま近くにいた下級魔族を盾にして、攻撃を間一髪のところで回避する。戦い方が汚い!


 「あっぶなぁ!いきなり奇襲とか勇者らしくないんじゃない!?」


 「そ・れ・はッ!」


夏が下級魔族の頭を踏みながら、クランクインの元へと辿り着いた。ちょうど背後をとっている。


 「こっちのセリフよ!ライトング・グングニル!!」


鋭い槍の雷撃が轟き、クランクインに向かって放たれる。高威力の魔術だ、下級を盾にしたって確実に攻撃は効く。


 「っ残念でしたぁッ!」


 「────クラン、クイン……!!なぜダ!?!?」


間一髪のところで、クランクインの命令に従っていた上級魔族がまるで望んでもないのに身を挺して守った。


 「僕にとっては、同族だろうが、使えるものは使うってスタンスでね!君たち上級のくせになぁーーんにも力とか持ってないから、弱いんだよねぇ!!


 「────こ、の……愚か者モノッめ!!」


 「───そんな顔したって、助けない。助けないぃ………今から君は僕の支配下になるんだからっさ!!」


 「う、グごォォガアアァァァッ?!!!」


上級魔族の目は赤く光、クランクインに操られている死んだ下級魔族と同じようなゾンビのような姿へと変わる。


 「───それじゃあ、続きをしようか!」


何事もなかったかのように言うクランクイン、それどころかがコイツの口元はニヤリと不敵に歪んでいた。


 「────アンタ……正真正銘のクズねッ!」


 「そりゃそうさ!僕たち魔族の動力源は負の感情なんだからぁ!!」


そう言って周りの下級魔族を一斉に俺たちに差し向けてくる。夏の魔術詠唱を伸ばすために目の前の一軍を剣で薙ぎ払う。


 「やるわよ天馬!」


 「あぁ!前面は俺に任せろッ!!」


クランクインと一定の距離を保ちながら、夏に向かってくる敵を切って切り伏せ続ける。クランクインは下級魔族をまた甦らして俺たちに差し向けてくる、でもその戦法の対処方法はすでにわかっている。


 「獅子王剣!!」


炎を纏った剣が、敵を切り裂くと同時に燃やし尽くす。いくらクランクインでも灰から味方を蘇らせることはできない。だからこの獅子王剣はクランクインに対してアンチになっていることは明白だ!


 「煙たいことするなぁッ!!」


 「あぁ!お前嫌いだろ!」


 「天馬!合わせなさいッ!!」


夏が魔術の完全詠唱を終える。今までのはただの時間稼ぎお前がいくら上級やら下級やらを山のように盾にしたってそれらを貫通できれば無問題だ!


 「───フルフレアサイクロンッ!!」


火炎渦が夏の両手から放たれて、クランクインに向かって一直線に巻き進む。すぐさま盾となる魔族を目の前に出して耐えようとするクランクイン。でもそれも無駄だ、完全詠唱を含んだ魔術の威力、そして勇者の力はお前が思っている何倍も強い。


 「ッぐぅあああ!!」


吹き飛ぶクランクイン、直撃を避けるために腕を犠牲にして、今ワープ能力で逃げようとしているところに俺は近づく。


 「ここまでだ!クランクイン!!」


 「!?」


クランクインの心臓に剣を刺し、地面へと叩きつける。そしてその瞬間、周りの下級魔族は統率を失いせん妄状態になって暴れ始める。勝負はついた。


 「終わりだ。」


 「っ、う、あはははははは!!」


 「───なんで笑ってる!?」


 「いや、僕の負けだと思っている君たちの顔が、あまりで必死でね。残念、でも十分、僕のやることはそこの女勇者ちゃんを殺すことじゃない………君たちは誘き出されたんだよ!」


 「何……っ?」


 「っぁははは。それじゃあバイバイ、勇者くん達!」


クランクインは青白いカケラとなり空の彼方へと飛ばされていった。その瞬間俺は理解する。その場に死体がないこともそうだ、そして何より手応えがまるでなかったことを


 「夏!今のは分身だ!!」


 「え?!」


 「───本体はきっとッ!!」


 「勇者様方ァー!!大変です!」


伝令役の兵士が僕たちの元へと駆け寄ってくる。その表情から事態が切迫詰まっていることがわかる。俺はその兵士が次に言う報告を覚悟して待った。


 「──報告いたします!オトカゼ様の拠点に魔族の大軍勢が一斉に攻撃を仕掛け始めましたッ!その中には上級魔族クランクインだけでなく!近衛魔将バークーサー!そして魔族将軍の姿も確認されたとのことですッ!!至急、救援を────ッ!!!!」


 (……やられたっ!!)




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