31話「勇者の前進」
勇者の祠で新たなる力を手に入れた俺たちは、王様の命令に従って戦争が行われている最前線へと送り込まれた。カテナはそれに対して反対していたが、俺たちの心はすでに決まっていたため、彼女の気持ちを少し無視する形で向かった。
「──人魔戦線」
そう呼ばれている人と魔族との戦場。そこには人と魔族が長年戦ってきた痕跡と破壊尽くされた環境が広がっていた。武器は無数に地面に突き刺さり、死体は当たり前、空は常に曇っており、カラスは飛び回り、常に争い絶えない環境。
あちらこちらから火の匂いがし、そこにいる生物の状態は極めて悪い。ここで戦い続けている兵士達は顔色は悪く、常に余裕のない気を張っている。ここが今までとはまるっきり違ってことがすげぇ伝わる。
俺たち勇者は1人が一騎当千の力を持っているから、全員で行動するよりも方面に分けて戦線を上げることになった。俺は正面、奏と正治は左陣営、そして夏は右だ。
戦線にいる魔族はこれまで戦ってきた上位魔族、その中でも本当に強い力を持っているタイプ。遊撃や偵察に特化して適当に出すようなタイプじゃないということ、それこそ大軍を率いている統率力と本体の強さが今までとは桁違いだ。
心なしかこの戦線にいる魔族はたとえ下級であっても強い気がする。
戦線に俺たちが投入されて一週間か、二週間くらい。戦況は大きく変わった。人間サイドの劣勢が嘘かのように巻き返しが起こり、俺たちを旗印として多くの兵士たちと上位魔族や魔族の前哨拠点を陥落させることができた。
戦場での暮らしはストレスが溜まりまくる場所であったけど、みんなの活躍を聞いていると俺も負けられないと思いより一層力を入れて戦いに臨んでいった。
「次はこの拠点を落とそう。ここは偵察によれば魔族の補給基地らしい、ここを断てば魔族達の進軍はより遅くなるはずだ。」
『ハッ!』
作戦会議にも俺は参加する。戦略家とかそうじゃないけど戦いを通じてどういうことがポイントなのか少しづつわかってくる感じだ。
(でも、きっとアイツならもっと上手くやるんだろうな。)
立てる作戦はありきたりだけど、それでも戦果は大きく挙げられる。勇者としてみんなの力になれるような、そんな存在になってこの逆境を超えてみせる。
「全員進軍!!」
勇者の剣を天に掲げてまっすぐ拠点に向かって進軍する。いつも俺がやっている指揮を上げる方法だ。昔、靁にこういうのが大事だとかマンガを片手に言われたことを思い出した。
きっとアイツが変わらず隣にいたら、もっと手本になるようなことをするんだろうなとか、思ってる。
(でも、今は戦わないと!)
アイツがいつか帰って来れるような場所を作れるように。俺は魔族を押し返す。
[ドォォォン!!!]
地響きのような音が響き渡り、目の前に赤い爆発が広がる。前に出過ぎていた仲間の兵士たちがことごとく吹き飛ばされ見るも無惨な形で俺たちの前に広がる。
「!!」
俺は体にくるプレッシャーを感じ取ると、すぐに剣を構えて攻撃に対する防御姿勢をとった。
「───ハァッ!!!!」
声が聞こえて数本の剣と共に1人の魔族が俺に向かってくる。初撃を受け止められたことに驚きつつも、少し距離を置いてその魔族は着地した。
「誰だ!!」
「……誰だと言われたら自己紹介するしかないな。俺の名前はバークーサー、魔王に言われてお前の小手調べをしにきた。弱かったら殺すからな?」
(バークーサー!たしか、人魔戦線に置いて魔族側の最強格の1人、舞う厄災の異名を持つ、大魔族!!)
「んじゃあ!いくぜ───!!」
「!!」




