25話「今度は語って。」
[ゴゴゴゴゴゴゴゴ]
「な、なんの音ですか?!
俺たちが歩いて進んでいると地響きのような音と揺れが祠内に響き渡った。
「奥から聞こえたわ。」
「なんか、やばいかもしれない。行くぞ!」
もしかして祠には何かあったのか?という意思のもと俺達は急いで最深部へと向かった。
そしてそこで俺たちを待っていたのは。
「───!!」
[ドゴォォン!!]
「靁!?」
ゴーレムと戦う靁の姿だった。靁はさまざまな魔術を臨機応変に使い分けて、ゴーレムを圧倒している。靁がここにいることにまず驚く、そして靁がゴーレムと戦っていることにもまた驚く。
「ゴーレムが戦っている、もしかして魔族!?そんな!」
「いや違います。あれは靁です!」
確かにアイツの動きや服装から魔族に見られても仕方がない。いやでもゴーレムとなんで戦っているんだ、全然わからないことだらけで辻褄が合わない。
「………天馬どうするの?」
「え?」
「え?じゃないわよ。靁を止めるんでしょ!」
「────いや……」
靁はゴーレムと戦っている。だがその動きからかなり必死だということがわかる。確かにあいつをいざとなったら力ずくで止めるっていったのは俺だ、それこそここで漁夫の利すればその目的は達成できる。でも
俺は、
(──靁に加勢する、──靁に加勢しない)
「靁に加勢する──ッ!」
「………アンタらしいわね。」
「え、勇者様?」
「ごめん、カテナ様!でもアイツ、俺の友達なんだ!!」
カテナにそう一言言って俺は靁の元へと駆け出してゴーレムと戦い始めた、後ろにいる夏も援護してくれている。
「───天馬、何しに来た…!」
「助けに来たに決まってるだろ!」
こいつは人を殺して、魔族を殺して、多分いつか魔王だって殺しに行くつもりなんだろうけど。そんなの1人でさせてやらない、こいつがどんな目に遭ってどんなことがあってこうなったか、友達として仲間として俺は知ってやらないといけない。アイツと殺し合いになったとしても、必ず。
「余計なことするな───。」
靁が攻撃するより一足早くこっちの攻撃が当たりゴーレムが吹き飛ぶ、予測しない攻撃に靁は不愉快そうだったが。
「こっちのセリフだ!」
靁の言葉にすぐに返す。剣を振ってゴーレムに傷をつけて、切り返す。でも固かったり一撃が豪快だったりして全然歯が立たない。
「しま───。」
[ダダダダッン!!!]
銃撃が轟き、俺に攻撃してくるゴーレムの腕を弾き飛ばした。見てみれば正治もいつのまにか援護射撃を行なっていて、奏も俺たちにバフをかけてくれている。
これならいけると思った俺は、攻撃を弾き返しながらゴーレムの顔へと向かって剣を掲げた。
「ファントムブレイブッ!!」
「獅子王剣!!」
剣から炎が燃え盛り、ゴーレムの顔を溶かしながら一刀両断した。噛み合ってないような靁との連携攻撃による勝利だった。
「………靁!」
ゴーレムがバラバラになって崩れる。靁は祭壇の上にいて俺の方をじっと見ていた。
「…………少しは強くなったか天馬。甘さは相変わらずだがな。」
「靁、話をしよう。」
「話すことなんてないはずだ。お前と俺は違う。」
「違くなんてない!お前は俺の仲間だ!」
「──仲間か…………勘違いだな、それは。俺に仲間なんていない、そしてお前達とも面識なんてない。勇者と仲間なんて正直嫌気がさす。」
靁は振り向き、歩き始める。
「……なにが、そんなに嫌なんだよ…!」
俺はそれを制止するが。靁は少し立ち止まっただけで何も言わない。
「靁!」
「ここで話すことは無くなった。じゃあな、勇者。」
もうこっちが一度声を上げると。靁はそう言いながら、天井に空いてある穴から飛び立って行ってしまった。追おうと思ったけどアイツの飛行能力は飛翔とかとは全然違って速かった。
「天馬。ダメだったわね。」
「………いや、でも話してはくれた。」
話してやっぱりわかったけど、アイツは多分根っから悪くなったわけじゃない。多分魔族って部分と勇者って部分が嫌なだけなんだと思った。だから、俺個人との話には望んでくれた。
「また絶対会う。だから、そんときにすれば良い。」
「そうね。」
次会うときにアイツと戦うことになっても俺が勝てば良い。そしてアイツの口からしっかり聞き出さないといけない。だって友達なのに何もわからないままでいたくないから。
「夏ちゃん、天馬くん。カテナ様が───」
「勇者様方、なんて申し上げたら良いのかわかりませんが、お疲れ様です。」
「……こっちこそすみません。俺の勝手でゴーレムとか壊して。」
「いえ。でもそうですね、お父様ならきっとお叱りになります。勇者様方は魔王を倒す者、決して魔の者とは相容れないように。」
「……はい。」
カテナの言い方はだいぶ優しかった方だ。多分これが王様とかならめっちゃ叱られてたりとか罰とか貰ってたんだろうなとか思う。なんか靁に出してもだったけど、すっげえ厳しい人だし。
「では、気を取り直して。あの祭壇にある球体に触ってください。あれは光玉と呼ばれる物で、込められた神性で勇者様の力をさらに強力にする物です。そしてあれは魔族に出しても脅威になります。」
「というと?」
「神性は魔族が最も嫌う力であり、触れればたちまち浄化されます。そしてそれを取り込むことによって勇者様方の力はより強力になるのです。」
「そういう仕組みなのか……」
「なら、あれ自体を持ってった方がいいんじゃない?」
「それはなりません!あの光玉は勇者の祠の守りでもありますので。」
「そうなんだ。」
夏の言葉にカテナが必死に答える。多分ゲームとかだと動かせないタイプの置き物なんだろうなと思いながら、俺は階段を登って光玉にそっと触れる。
[シュリリィィィィ───ッ!!!]
体全身が光に包まれて、まるで生まれ変わったような気分になる、それと同時に今まで着ていた勇者の服はさらに一新され、装飾が増えてよりカッコ良くなった。
「スッゲェ。なんか、力も湧いてくるっ!」
「天馬!できたなら早く降りて!」
喜んでいる俺に対して階段の下にいる夏はいつもと変わらないような反応をする。明らかに見た目が大きく変わったはずなのにだ。
「お、おい!なんかいうことないのかよ?」
「衣替えした?」
「したけどそうじゃないだろ!」
俺は階段を降りて夏と変わる。今度は夏の番だけど、絶対に俺は驚いてやらない。アイツが俺にやったのと同じ感想を言ってやる。そう息巻いていると
[シュリリィィィィ───ッ!!!]
夏の姿が変わった。杖は単純なやつからより複雑になった形に大きく変わって、服のローブは豪華になって、何より夏っぽさが上がったというか、うまく言葉に表せないけど、俺は間違いなく驚いていたと思う。
「どう、天馬?」
「……いいんじゃないか?たぶん。」
「なにそれ。」
ぶっちゃけた話。自分の姿が変わったことよりも夏の姿が変わったことに心の中ではテンションが上がっている気がする。なんでだ。まじで。
「変わった。」
「し、正治。いつのまに───。」
姿が変わった正治が俺たちの話の間に入ってきた。持っていたピストルは重心が長いものに変わって背中には現代銃器のスナイパーライフルとかが備え付けられている。なわか近未来のガンマンみたいな格好だ。
「ど、どうかな。」
続いて奏も変わった。なんか、こう言ってはなんだけど聖母みたいな感じがする。同級生に母性なんか全く感じないけど、お姫様?女教皇?みたいな、表現下手くそすぎて全然言葉に表せないけど。そんな感じ、あと楽器の武器がより武器らしくなったという。
「勇者様方、大変お似合いです。それでは王城へ戻りましょうか。」
カテナの言葉を皮切りに俺たちは魔術でまた麓へと戻った。そしてふと考えたんだけどこの魔術なしに靁はどうやって登り降りしたんだ?




