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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター3「あるものがなくなる世界」
23/200

23話「"勇者"の祠」





 「勇者の祠ですか?」


 「はい。今は魔族領にある勇者の力をさらに引き出せる場所でございます。今の勇者様達ならば苦戦はしますが、行けるかと。」


メイビェの後、俺たちは勇者として各地の問題を解決しながら、どんどん力をつけていった。今じゃ多少の苦戦はあれど上級魔族を倒せるほどだ。でも、きっとこれからはもっと強い敵が大勢出てくる、そんな不安からトーマスさんにもっと力を伸ばしたいという話をしたところ出てきたのがこれだった。


 「それってどこにあるんですか?」


 「クローンド山と呼ばれる。神に最も近い山の頂上に位置しております、大吹雪が吹き普通の人間ならまず到達できません。しかし代々王族のみに伝わる特殊な魔術を行使することによって安全に行けます。」


 「でも王様はここを離れられないんじゃ?」


 「はい。ですが何も魔術を使えるのは我が王だけでは限りません。王女であるカテナ様も同様でございます。」


 「お、王女様?!」


王女様って今まで聞いたことなかったからてっきりいないのかと思っていた俺は驚いた。


 「はい。もし向かわれるのなら私から王へ進言いたしましょう。」


 「…………みんなは?」


俺は振り向いてみんなの顔を見た。全員、答えを聞くまでもなくもういく気だったことで、俺の中に浮かんだ不安は一瞬で消えた。


 「お願いします……!」


その後トーマスさんが王様と交渉して王女様をなんとしてでも守り抜くという理由のもと、俺たちは王女カテナと直接会うことになった。


 「勇者よ。我が娘カテナである、今回はよろしく頼む。」


 「ごきげんよう、勇者様方。カテナと申します、これからよろしくお願いします。」


 「…………っ!」


王女カテナの姿を見た俺はその可憐さというか、可愛さというか、なんというか、に固まった。アニメとかマンガとかにしかいないような可愛さ、いや一周回って美しさを感じてしまいそうな雰囲気、きっと優しいんだろうなとかフツーに考えて──


 「ちょっと、天馬!」


 「はっ!こ、こちらこそよろしくお願いします。」


ボーッとしていた俺に夏が肘打ちをして正気に戻してくれた。いけないいけない。相手は王女様だ。俺とかとは住む次元が違うし、それにほら王様が俺のことをスッゲェ睨んでいる!


 「?どうかしましたか。」


 「い、いえ。それじゃあ行きましょうか───あはは。」


怒られないうちに退散する、この手に限った俺もとい俺たちは王女様と共に勇者の祠があるクローンド山に向かったのだった。






<──|||──>






 祠の中に入った俺は壁に描かれているさまざまな模様や壁画を見ながら奥へと進んでいった。本の内容によれば最深部に勇者が新たに力を手に入れられる何かがあると書いてある。それがどんなものかについては明確な記述はない。


 (気になるが、少なくとも悪いものじゃないはずだ。)


そう信じて俺は壁画へと目をやる。先ほどから多種多様な壁画を見ることができたり変なオブジェクトを見つけたりしているが、これが何に関連しているのかさっぱりだ。

足を止めて今までの壁画とは一線を隠すほど大きな壁画を俺はじっと見つめる。


 (これが大昔からあるのか。)


長い年月を経てボロボロになっているが、その壁画の偉大さというのだろうか、それは全く損なわれていない。好奇心から少し手を当ててよく観察してみると、小さな文字のようなものがあった。


 「────読める……?」


その文字は日本語ではなく、この世界の文字ではなく、何か別の文字だった。ただ文字ということしかわからないはずなのに俺は何故かそれを元から知っていたかのように読むことができた。不思議だとは思いつつも自分の口に出して音読してみる。


 「剣と盾は口を示し……銃は目を示し……杖は脳を示し……楽器は音を示し………そして───は─を示し。─はここに降臨する。」


読めない部分はすでに文字が崩れ落ちているところだった。だがこの文章に俺は既視感を抱いた。


 「これは──勇者の武器か……?」


剣と盾、天馬の武器だ。そして銃は内村、杖は夏、楽器は音風、そしておそらくこの欠けている部分には鎌が入る。だがちょうどよく破壊されている通り鎌が何に当てはまるはわからない。そして最後に何が降臨するのかも。


 「そもそも勇者は、勇者って……。」


俺たちは魔族との戦争に勝つために呼ばれた存在だ。今まではそれ以上でもそれ以下でもなく、魔族を殺せれば十分だと考えていたがどうにも引っかかる。この勇者の祠はとても勇者を戦争の道具のような扱いだけには考えていないと思う。


信仰心が神話を作るならそれもあり得るかもしれない。でもこれは逆だ、そもそも前提として何故勇者は神の使徒なのか、神の使徒である勇者は本当に魔王を倒すためだけの存在なのか。


 (壁画からはそんな感情が伝わってくる気がする。)


ここが勇者に関連した場所だというのなら、この情報がでっち上げだという可能性はない。そしてこの壁画と文字には何か強い意味がありそして現実味があるものであると俺は判断した。


 「………いや、今は先に進もう。」


ここで考えていても仕方がない。もしかすればこの壁画の続きの内容が奥にはあるのかもしれない。どちらにせよ行くしかない。



 


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