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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター3「あるものがなくなる世界」
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22話「話の中で話」





 朝の日差しで目が覚めて、眠り心地が良くなかったベットから起き上がる。この世界にきて大体百日とちょっとの朝が来た。俺は変わらず各地を転々としながら、時に魔族領の近くに行き魔族を狩り、時に魔術書を読み勉強に耽るなど、どうにも安定し他日々を送っていた。

にそれこそ人間が魔族と戦争しているなんてのを感じさせないほどにだ。


 (……………いや、物騒話は多いか。)


魔族が人間領のある場所を侵略した、魔族がまた人を襲ったなどの噂話は基本的に絶え間ない。噂といえば天馬達勇者が活躍していると言う話も最近は多くなってきたりしている。それに対してとやかく言うつもりはないが、あいつらにはもっと強くなってもらわないと個人的に困る。


 (少なくとも上位魔族を簡単に倒せるレベルには。)


思考を巡らせ頭の準備運動を終えた俺は、身支度をして宿を出た。そしてこの街の本屋に行き、今日も自分の力に直結する書物を片っ端から漁っていく。単純な魔術書から歴史書、個人経営店は乱雑に配置されてはいるが城にあるものよりも古いものが見つかったりする。


 そしてそこで偶然とある書物を見つけた。


 「…………勇者の話?」


どうにも胡散臭いタイトルで嫌気がさしてしまうが、何か中に有益な情報があるかもしれない以上は開けるしかない。俺は勇者になったつもりはないが、括り的には勇者の武器を持っているんだろうから、どちらにしてもスルーする理由はなかった。


本の内容は勇者についての話だった。だが単純な情報をまとめたものというよりかは、おとぎ話のようなもの。俺からすれば変な理論で塗り固められかたや読者が理解できないような本に比べれば童話や昔話の方がはるかにマシだ。

そして肝心な内容についてだが


 (勇者の祠)


簡単に言えば勇者達が勇者の祠という場所にいき、新たな力を手に入れるという話だった。なんともありふれたテンプレート的な内容だった。だが、この世界における昔話というのは俺の経験則として大体本当のことが多い。もしこの勇者の祠で新しい力が手に入るというのならこれを利用しない手はない。


 「店主、この本はどこのものだ?」


俺は店主からまず情報を得て、本自体を買い取らせてもらった。新たな力を手に入れるため俺は勇者の祠という場所に行くことを決めた。だがこの本に書かれた内容は少なく、そも勇者の祠と呼ばれている場所が"とても高い山"とかいうふざけた名前だったため、まずその場所がどこなのかを調べる必要があった。最初に向かったのは著者がいたとされる場所、しかしかなり古い本であったため覚悟はしていたが、その場所はすでに何もない場所になっていた。仕方ないのでいろんな人に話を聞き、情報を集めて一ヶ月ほど時間が経った。


 最後の決め手は魔族領の砦を気まぐれで落とした時だった。何か使えないものはないかと戦利品を漁っていると、興味深い本を見つけた。それも勇者に関連する書物だったのだが、そこに勇者の祠に具体的な位置が記されていた。

場所はクローンド山と呼ばれているところ、この世界で二番目に高く、そして神に最も近い場所にあるらしい。


名前が知れたのならあとは簡単だった。所有している地図の中で一番古いものを使い、勇者の祠があるとされるクローンド山に向かった。


クローンド山は現在魔族領となっており、道中では戦闘が多発した。基本的に移動は風魔術を応用したホバージェットみたいなもので行動していたため普通に徒歩で行くよりかは遥かに楽な方法で向かえたと思う。

ただ標高が高くなるにつれ、大吹雪が頻繁に起こり体温調節のために炎魔術をずっと行使しなくてはならないような過酷な状況が続いた。そんな俺に対して魔族はお構いなしだ、あいつらは基本的にどんな環境でも汎用に戦える。いくら俺が強くても環境不利が続けば消耗は激しくなる一方だった。


そして山登りは初めて三週間ほど苦労の末、勇者の祠と思われる建造物に到達した。本に記されていたようにそこは大吹雪にさらされず何かの加護がついているかのような神聖な雰囲気で守られた場所だった。


 俺は周りに誰もいないことを理解すると、大扉を開けて祠内部へと入っていく。


 「魔族の気配がしない。」


魔族領内では基本的に大きかれ小さかれ魔族の気配がするものだったがここはそんなものがしない。どうやらここにはいかなる魔族も入ってはこれないようだ。だが


 (なんだ、この不快感は………)


本の内容にはそこに訪れた人間は心地がいい気分になると書かれているが、俺は少しの不快感に襲われている。具体的にいえば体がこの場所を拒絶しているような感じだ。


 (いや───気のせいだな。吹雪に体がやられただけだ。)


そう思うことにして祠の奥へ入っていった。




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