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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター3「あるものがなくなる世界」
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21話「気まぐれのひととき。」





 メイビェの一件後、俺は各地を転々としながら人間領の街、パリスに身を寄せていた。理由はもちろん魔族領が近くだからだ、滅ばされる危険性はあるが、同時に魔族を刈りやすい場所である。


ここで俺は魔族共の死体から取った身体部分を売って資金を稼いでいる。なぜ魔族の死体が売れるかというと、どうやら角や翼が魔術の素材としてかなりいいらしい。


 ちなみに資金を集める理由は生活するためというのもそうだが、一番は高額な魔術書を買うためでもある。魔術書はこの世界において魔術を記録した書物という扱い、一番安い物でも剣10本分の価値があったりと普通に大金持ちにでもならないと手に入れることは難しい。


 (魔術書を手に入れれば、新しい魔術を会得できる。そしてその魔術によって魔族を殺す。)


最近はアイツら勇者が頑張って戦線を押し上げているおかげで本格的に人類の反撃が始まってきた。このまま順調に攻めれるなら近いうちに魔王の所までいけるかもしれない。

俺はそれを最大限利用するために蓄えれるだけ力を蓄える。


 (だが、まずは目先にいる奴らを片付ける。)


そしていつも通り心の内に魔族への憎しみを募らせながら俺は自分の宿部屋で身支度をして魔族狩りへと赴いた。


低級の野良魔族は意外とわんさかいる。上級魔族が上についていなければ低級魔族も所詮はただの動物と一緒だ。ただそれが武器を持って自立して襲ってくるという点を除けば。


 「ニンゲン!!───シィネェェェェッ!!!」


 「────!」


俺のやることは魔族を殲滅することだ。殲滅とは無論全ての魔族を潰すこと、だが低級魔族は数だけ異様に多い。加えて単体だけならなんの脅威もなくそれこそ村人でも頑張れば倒せるレベルだ。こんなことをやっても俺の憎しみは無くならない、やるなら上級魔族、そして魔王だ。


 [ザシュ!!ザシュ───ン!]


上級を殺さない限り下級はおそらくなくならない。数が多いだけの虫を潰したところで巣を潰さないと根本的に駆除できないのと同じだ。


 (だが、)


相手がどのくらいの強さなのかはまだわからない。だがわからないのなら自分を限界まで強化して相手を上回るだけだ。


 「────終わりだ。」


 [ザシュ─────……]


低級魔族は人間を見つけたら強制的に攻撃を仕掛けてくる。街の人間が後々に魔族を殺す兵士になるかもしれないことを考えると、今ここでこいつらを殺すことは将来的に魔族を殲滅させれる結果に至れるはずだ。


 (全ては────)


ただ戦うだけで種族をこの世から消し去ることはできない。だから、俺はどうしたらいいのかを考える。魔族を殲滅するためにはどんな手順を踏んでどんなことをすれば、将来この苦しみが永遠に無くなるのかを。


大鎌を背に戻し、俺は街へ戻った。


 街の住人はなぜか俺と仲良くしようとする。どこからか俺が魔族を狩り続けていることを聞いたり見たりしたらしい。見返りなどが多くもらえたりと、少し荷物が増えるが嬉しい誤算が多かったりする。何よりあまり悪い気はしない。


だが仮にもまるで勇者様だ!とか言うのは心底やめてほしいとは思う。俺はあのような偽善で中途半端で正義の味方のアイツらとは同じじゃ無いのだから。


 そしてそんな街でしばらく過ごして街で買える魔術書のほとんどを読み終えたため。別のところに行こうとした時だった。


 「どうか娘を助けてください!」


いつも俺に感謝を伝えていた1人の女性が怯えた様子で俺にお願いしてきた。どうやら魔族に子供を連れ去られたらしい。本来なら何か報酬を指定したいところだが魔族が絡んでいるとすれば話は別だ。


 「わかった。報酬はいい、娘はどんな特徴がある?」


 「───!ありがとうございます!!」


俺は今魔族を殺すために存在している。だからそのお願いを引き受け、魔族を片っ端から殺しながらその娘とやらを取り返した。だが


 「来ないで!!」


助けたのにも関わらず帰ってきたら態度はそれだった。だが俺は別にその言葉で傷つくなんてことはない。俺は自分の手みる、魔族の返り血で血塗られている、子供から見ればこんな手は嫌で仕方がないだろう。なにしろ、他人から見れば俺は相当に怖いらしい。


 (よくわからないが、考えることがめんどくさい。)


その後子供を担いで親の元に返した後、俺は予定通りその街を離れた。別に心残りなんてものはない。各地を転々とするのも結局は自分のためだけだ、誰かのために動くなんて行動はしない。


 (……………。)


そして二週間後ほど経った時、一夜過ごせる宿を探すために再びあの街へと戻った。だがそこにあったのは街だったもの、人だった物の残骸だらけだった。どうやら魔族によって滅ぼされたらしい、


 (──ここは魔族領から近いからな。)


こいうことがあってもおかしくはない。毎日誰かが魔族に殺されて、誰かが魔族を殺す。自然の摂理と化している現状に対して深い感想はない。だが


 「ニンゲンだ!にんげんダ!!!」


 「まだいタ!マダイタ!!コロセェ!!」


こう魔族がそこら中に群がっていると、心底こう思う。


 「殺してやる────。」




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