02話「巻き込まれて」
異世界転移。言葉は知っている最近流行っているジャンルの一つ、ある日突然平凡な主人公が別世界に転移したところから始まる王道展開。でもまさかそれが今目の前で起こるとは。
「よくぞ、まいられた異邦の勇者たちよ!どうか、我らに力を貸してもらいたい!!」
目の前の王様、であっているのか。俺、いや俺たちに向かってそう言った。周りを見渡してみれば拍手喝采、歓迎されていることはわかる、でも
「ゆ、勇者ぁ?!」
声を上げたのは天馬だった。口には出さないが俺も同意見、勇者というのはあの勇者なのだろうか。伝説の剣を持って魔王を討伐するという、あの勇者。それがこの王様曰く俺たちだというのだろうか?
「そうです、自分勇者様!」
「ちょっと待て、何が何だかわからない!」
「そう!私達、一体……何が起こったの!?」
二人とも混乱している様子だ、もちろん俺も。でも言いたいセリフはすでに二人が言ってくれている。
「国王陛下、ここは私が。初めまして勇者様方……私はトーマスといいます、この国の宮廷魔術師の座についており、あなた方を召喚した張本人です。」
混乱している俺たちに対してトーマスと名乗る宮廷魔術師は礼儀正しく挨拶をし、とんでもない事実をカミングアウトした。
「張本人……!?」
「はい。いまから、別世界からきた勇者様方にこの世界について話させていただきます。」
トーマスは俺たちにもわかりやすくこの世界について説明してくれた。まずこの世界は神様によって作られた"アルマド"という世界であり、聞く限り剣と魔法のファンタジー世界と言っても差し支えない世界観のようだ。
そしてここからが本題だ、なぜ俺たちがここへ召喚されたのか。
どうやら現在人類は魔族と戦争を行なっている状況らしく戦況が芳しくないとのことで異世界の人間である俺たちを召喚したような。
「異世界から参った。勇者様方はそれぞれ神によって特別な力を与えられます。」
俺は今一度自分の周りをよく見たら。天馬、夏、そして
(二人は、内村くん。音風さん。)
今まで気づかなかったのがおかしいくらいだ。俺の後ろには同じクラスの内村正治、それと音風奏の二人がいた。予想するにあの時教室にいて俺たちと共に巻き込まれたんだ。
そして話をまとめるとこのメンバーで、与えられた力を使って世界を、人類を救ってほしいというわけらしい。突然いろんな情報が出てきて現在混乱中の俺でもそのことくらいはわかる。
「いやよ!」
「夏!」
「いきなり、私たちを拉致して何言ってるの!?早く元の場所に返して!」
夏の言葉はもっともらしいものだ。そもそもこの異常な自体を現実だと認識しなければ、彼女の言葉も全然わかる。
「……残念ながらそれはできません。我々は召喚する術を知っていますが、戻す術はわからないのです。」
「え……っ!?」
言葉に驚いたのは天馬だった。もちろん俺も言葉にしなかったけど驚いている。たしかに漫画でもこういう展開は珍しくない、でもまさか。っと思ってしまう。
「じゃあ、私達……」
「待てよ!何か方法はないのか?」
「………」
宮廷魔術師は首を横に振った。天馬はその対応になんとも言えない表情になり、夏は唖然としている。内村くんと音風さんも見はしないけど、表情が想像出来る。
(……じゃあ俺は、どんな顔をしているんだ?)
「勇者様方、この世界は今危機を迎えています。平和のためにもどうか、恥を忍んでお願いいたします。」
トーマスは頭を下げた。だがそれは俺たちに戦ってほしいと、言っているということだ。相手を滅ぼさないと平和にならないなら、たとえ戦い以外の道をここから選んだとしても、いつか死ぬかもしれない。どっちにしたって俺たちは戦う以外に選択肢がないとわからされる。
「……俺やるよ。」
「天馬?」
最初の口を開いたのは天馬だった。アイツは前に出て胸を張って拳を握りしめて決意を固めているようだった。
「だって、この世界の人たちは……戦って今にも負けようとしてる。そんな中、苦渋の決断で俺たちを呼んで、助けてほしいって言ってんだ。それに、元の世界に帰れる手段だって、世界を探せばきっと見つかるはずだ!」
「………相変わらず。」
気持ちの切り替えが早くて、思っている以上に正義感の強い良いやつだ。
「みんな、やろう!」
天馬の言葉は俺たちにしっかり届いたのか、夏も目を擦って覚悟を決めた。内村くんと音風さんも同意の意思を見せて、俺たちは全員勇者になることを決断した。