17話「相対する残夢」
夢に落ちていく。その時から俺の悪夢はどんどん変性をして行っている。最初の夢に出てきた男は装いを大きく変えて、心の中に復讐をかいながら、人を殺す殺人鬼に成り果てていた。まるで誰かにそれを強制されているように。
「神に死を。神に死を。」
「………。」
結果、今目の前にいる男は時々こんな悪夢を俺に見させこの言葉をひたすら呪文のように唱えるだけの生物に成り果てていた。まるでロボットだ。
数秒毎に大鐘音が響き渡る、その場所は神聖的な場所だと言うのに、心の底から憎悪するような全く別の感情が俺の内側に湧き上がってくる。
「神に死を。神に死を。」
「いいかげん黙れ。」
手に持っていた大鎌、それで目の前の男の体を分断する。しかし切れたのはただの幻、男は最初から切れてなんていない。ただ呪詛を唱え続けている。だがこんな言葉いくら言われたところで今の俺には何にも響かない、復讐鬼となったのはお互い様ということだろうか?
「…………神の使徒よ。死を。」
「───天馬達を殺せ?」
男の言葉に意味をなぜか俺は理解した。ただ、その意味があまりにも無駄すぎて嘲笑する。
「なんで殺す必要がある。あんな奴らほっといても勝手に死ぬだけだ。俺が自ら手を下す必要はない。」
「神の使徒よ。汝の死を招く。」
「たとえそうであったとしても、俺はそれすら弾き返してやる。お前のいう神なんてものは存在しない、あるのは弱者と強者が分かれきった残酷な現実だけだ。」
「神の使徒よ。汝を崩壊へと導き、汝は失意の中を彷徨う。」
「仲良くする気なんてない。力の弱いやつの仲良くなったって無意味なだけだ。守れるものすら守れない愚か者はさっさと死ぬ、それだけだ。そして俺はそれを導きく魔族と魔王をこの世から殲滅するだけだ。」
「神の使徒よ。神の使徒よ。神の使徒よ。神の使徒よ。」
「黙ってろ───お前が何を言ったとしても俺は修羅の道をいく。この先何があってもこの復讐は止まらない。」
「神の使徒よ。汝の結末はすでに決まっている。」
「────その神の使徒とか言うのやめたらどうだ?」
「────修羅を行くのなら、お前は止まることが許されない。そして全てを失う。」
男は盲信者のような言葉を止め、その言葉を俺に送った。
「最初からそれを言え。それに俺はとっくに決めてる。全てを失っても、先に進むってな。それが最低最悪の結末を招こうとも。」
俺は男に背を向けて歩き始めた。同時に今までで一番大きな大鐘の音がその世界に響き渡る。あぁ思い出した、また夢の終わりだ。
これをおそらく俺は数十回は繰り返している。この夢は目が覚めた次の瞬間忘れている。覚えているのは、この男と夢がちょっと変わっただけ。
世界が真っ白に塗り変わっていく時、意識が夢から覚める瞬間、毎回このことを俺は思うだろう。どんなに変わっても、どんなに揺れても、どんなことがあっても
(この夢はきっと死ぬまで続く。)




