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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター2「そして再会、そして決別」
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16話「離れた気持ち」





 靁の言っていた小屋にたどり着くと、そこは最低限の生活ができるスペースがあった。ただ


 「せ、狭い。」


 「4.5畳レベルとか4人でいっぱいいっぱいじゃない……」


あいつが多分ここを使っていたんだろうなって言うことがわかる。昔あいつの部屋に遊びに行った時と同じ内装はシンプルかつ無駄が極端に少ない。ミニマリスト才能をあいつから感じていたことも思い出したくらいだ。


 「でも、休めそうではあるよね。」


 「かろうじて。」


 「はぁ、ベットは一つしかないから争奪戦ね。」


その後、それぞれのスペースなんかを適当に割り振って、俺たちはなんとか休める体制になった。


 「それにしても正治、さっきはよく魔族に気がついたな。」


 「直感だったけど、多分勇者の力かも。」


 「勇者の力。」


口に出してみる。勇者が持つ固有の能力、俺たちもそれぞれ持っているものが違うって確かトーマスさんは言っていた。夏も、奏も、正治も、俺も、そしてあの異様な雰囲気を放っている靁もきっと違うんだろう。


 「────」


 「ねぇ天馬。」


 「なんだ。」


 「靁のこと、何か知ってるの?」


 「…………まぁそうだな。」


考えていたことが多分顔に出てしまったんだなって俺は思った。結果夏は心配しているような複雑な顔をしている。


 (そろそろあいつのことを話してもいいよな。)


 俺は靁と俺との間に起こった出来事をできるだけ詳しく語った。話を進めている中でみんな俺に共感してくれたし、同時に今の靁についても一緒に考えてくれた。


 「………靁に何があったかは知らないのよね。天馬、」


 「あぁ、アイツがどうしてあんなふうになったのか。少なくとも残忍な奴じゃなかったはずなんだ。」


 「でも天馬。気持ちはわかるけど、靁は実際に僕たちを助けてくれた。それに魔族を敵視していることには変わりない。」


 「───だけどよ!いやわかってるよな………。」


正治の意見は正しい。俺たちは魔族と戦っていて、魔族を倒さなきゃいけない。だから相手がどんな奴であれ、自分たちが生き残るためには我慢しなきゃいけない。兵士長も同じこと言ってたっけ。


 「あの夏ちゃん私よく知らないんだけど、靁くんって根っこはあんな感じなの?」


 「うーん。」


 「えっと、天馬くん?」


 「うーん。」


奏の質問にはうーんとしか返せねぇ。だって俺や夏も靁と友達としての期間はかなり長い方、ではあるけどアイツはなんというかいつも目の前のことしか頑張らないような人間だし、よくも悪くも普通な人間だった。だからこそ、あんな豹変な仕方する方が意外だった。


 「わからないけど。でもだからこそ、どんな奴でもあんなふうになってしまう出来事が、アイツにはあったんだよなって思う。はぁ、そう思うと俺酷いこと言った。」


 「天馬、アンタは優しすぎるのよ。敵の最後に同情するくらいね。全く………」


 「優しいことは悪いことじゃないと思う。」


夏と正治がそう言ってくれると、自分のことを少しだけ認めたくなる。きっと変わった靁は辛辣なこと言ってくるようになってるんだと思うけど。


 (でも、きっとアイツもいつかは………。)


 「そういえばさっき、靁からもらった記憶水晶があるわ。」


 「あれ記憶水晶だったんだ。」


記憶水晶は水晶を通して写した状況を水晶内にコピーそして壊れない限り何回でも投射できる。スマホのビデオみたいな機能を持つ水晶だ。知識として知ってたから、俺はこれを見るのが初めてになる。


 「早速見てみよう。」


 「わかった。」


夏は水晶に手をかざして集中する。そして水晶から映像がホログラムみたいに投射される。そしてそこに写っていたのは


 「魔族!っとプレントン卿!?」


映像は二組が悪巧みをしている様子、そして勇者である俺たちを殺そうと計画していること。そしてそれが終わったら領内の人間を皆殺しにして魔族領へと染め上げるという計画、プレントン卿、いやプレントンはその計画に対して協力的だ、まるで住民のことなんてお構いなしかのように。


 「靁、これをどこで!」


 「とにかく、これが本当なら、街は大変よ!!」


夏の言う通りだ、プレストンが魔族となんらかの繋がりがあるってことは、街の人たちがいつ犠牲になってもおかしくない、それにこの映像はおそらく俺たちが殺されかける前のものってことを考えると、魔族とプレントンが次に起こす行動は。


 「………街への攻撃!」 


俺たちは、小屋を飛び出してプレントン卿の屋敷がある街に向かった。




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