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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター6「イグニグラキエス」
158/198

158話「氷の悪性」





 氷結洞窟をバートンの案内に従って進んでいく俺たち。気温はより下がり正直エルザードと団子状態でわたるにしては限界を感じてきていたところだった。


 「ち。限界が近いな、そろそろ奴を見た場所に辿り着くってのに。」


バートンは自分自身の限界を口から漏らす。だがその言葉にはまだ我慢すればいけるという余裕が存在していた。だがそんな余裕すら俺たちにはない、本当にあと数分が限界と言ったところだ。


 「ううぅ、さすがの我もそろそろやばいぞー。」


 「ま、っさか環境に殺されるなんてな。」


 「ピィ」


 「……寒い方が得意だからまだなんとかなるけど、さ…寒いことには変わりない。」


 「お前らしっかりしろ。あの黒い怪物を倒せんのはお前達しかいないんだからな!」


 『うぁーーい。』


全員でやる気のないような返事をする。実際ここまで寒かったらまともに戦闘なんかできないとか考えもするんだが。


 「あと、少しだ。この先を曲がれば。」


バートンのあとに続いて氷の壁の角を曲がる。これ以上はまずいと俺たちが予期していたところだった。


 「な、なな、、何もいないではないかー!」


 「確かに前はここにいたんだよ!」


 「じゃあ他の場所に行ったと?もう無理じゃ───流石にもう少し装備を整えるべきじゃ。」


 「あぁ。これは流石にキツすぎる。こんな状態で戦っても、」


 「ったく。」


バートンは不機嫌そうだったが俺たちはとりあえず一旦戻ることにした。上に上がるに連れて微力ながら暖かさが戻っていくのを感じながら帰路についていると。


 「む?」


 「どうした?」


 「こんなところに壁なんぞあったかのぉ。」


 「いや、なかったはずだ。行ききた時には間違いなくな。」


 「となるとあれかの?今すぐできたとか?」


 「流石に氷が地面から生えてくるわけじゃねぇ。でもそうだな。寒さであんまり気にしてなかったがここらあたりの氷の量もだいぶ増えてやがる運良く前の道があったが、こんなことが起こるなんてな。」


バートンが前に来た時とは違うと言っている。それほどグリンドルムの氷結化は深刻だということなんだろう。


 「なんでもいいが、他の道を探さんとな。」


 「あぁ────ん?」


 「どうし───」


バートンが他の道を探すために周りを見て固まっている。俺もつられて周りを確認すると、なんと俺たちが通ってきた道が塞がれていたそれどころか今の俺たちを囲むように氷の壁が形成されている。つまり四方八方壁だらけでどこにも出口がない状態になっているのである。


 「……なんだ、これ?どうなってる?」


 「普通じゃないぞ。つまり、何かがおる!」


エルザードの直感はよく当たる。そしてこんなマジックじみた不可思議的なことを一瞬してやるのはもう決まっている。そう意識した途端深層意識の奥に隠れていた悪性に対する負の感情がまるで泉のように湧き出て止まらなくなる。一瞬体がすくみ、そのあと振り切って目標を見上げる。


 「!あれを!!」


 「なんだ、こいつぁ!」


 「間違いないっ。」


 「あぁ。」


俺たちは最初からグリンドルムが単体としてここら一体を移動していると考えていた。だがそれこそが間違いだった奴は確かにいたのだ。それも俺たちがこのエリアに入ったと時からずっと天井から見ていた。


天井にある異様な黒い石、石が生物として生きているように黒の怪物は氷に包まれながらこちらをずっとその機会な目玉で見続けている。そして今、目があったことにより互いが敵同士であるということを一瞬で理解した。


 グゴゴゴっという音と共に、氷の壁が俺たちに迫ってくる。こいつの術中にすでにハマっているのは俺たちだ、あの上からずっと見ながらこの氷をやつは手足のように動かしている。

奴の本体がどこかにいるとかそういうのではなくここにある氷の全てが奴の一部なのであった。


 「エルザード、燃やせ!!」


 「良いのか!?飛び火するぞ!?」


 「氷なんかに潰されて死ぬよりかはるかにマシだ!」


 「えぇぇい!!!」


俺は火球、エルザードはブレスを使ってゆっくりと俺たちを圧死させに向かってくる氷を燃やそうと試みるも、その氷達は見た目とは名ばかりのクリスタルのように表面を赤くするだけでまるで聞いていない。


 (グリンドルムの氷は溶けないのかっ!?)


そう思った時だった。


 「うおりやぁああ!!!」


バートンがツルハシを思いっきり地面に突き刺す。するとその衝撃は周りに伝播し、俺たちが立っている足場からすこし広いところを円状に割り、コゴオンという地割れの音ともに垂直落下していく。


 「えええ?!」


辿り着いた先はさっきの極寒エリアと打って変わって普通の坑道エリア、唐突に何が起こったのか理解できずに俺と俺たちは驚きながら危機を脱する。


 「この辺はまだまだ浅い、下には封鎖エリアが広がってるからな、こう地面を砕けば下の道につながる!」


 「そんな技がっ!?」


バートンが軽々と身をこなして走っていく後を俺たちは必死についていく。そうだ、ここがバートンの庭なら俺たちは彼について行けばいい。少なくとも後ろから近づいてくる冷気には捕まらないはずだ。


 「奴に追いつかれるなよ!」


 「うおぉ!」


背後には冷気が漂ってくる。今回も今回でグリンドルムはかなりしつこい、アイツには生物と違って諦めるという要素がない一度見つけた標的は何が何でも捕食して取り込むという要素がある。だが流石に向こうのテリトリーで戦うのはかなり分が悪い、バートンと共になんとかしてここから逃げ出さないと。


 (でも、そのあとは?!)


逃げ出したってあいつは俺たちを追ってくる。それまでどうすればいい!!


 「うっオッ!?」


ドギャゴオーンっという壁を破壊する音、見立てではあと一歩で封鎖エリアから逃れらるところで氷を見に纏いゴーレムのように手足を得たケレムが立ち塞がっていた。その胸には悪性の象徴たる奇怪な口と目玉、そして触手達が氷を繋ぎ合わせにしまるで筋肉の代わりをするように体を作り上げていた。


 「先に回られたか!!」


 「……ここで戦うしかない!」


槍を出して戦闘準備を整える。グリンドルムは叫び声のような雄叫びを上げると自身の氷の足から徐々に空間へ冷気を漂わせる。先ほどまでまともだった封鎖エリアの一帯はどんどんと冷たく、先ほどの極寒エリアの始まりのように変わっていっていた。


 「奴め、ここもあそこと同じようにするつもりか!」


 「じゃが、ここはテリトリーではないこれならっ!!」


エルザードは大きく息を吸ってブレスを吐く。すると部屋に漂う冷気はあっという間に熱気に移り変わりする。グリンドルムには依然として効いてはいないものの奴の領域支配は一時的に止められるようだ。しかし空気が炎を燃やしているのなら、この風通しの悪い空間では限界がある。


 「速攻で決めるしかないッ!!」


酸素がなくなるか。冷気が俺たちを氷尽くすか、それともグリンドルムがこっちを殺すか。それが俺たちの今の敗北条件だ。だが圧倒的な不利の中でもこいつに打ち勝たなければ流石に勝ちは見えてこない!


 グリンドルムがこちらに攻撃を仕掛けると全員で散開して、四方八方から奴に攻撃を加えていく。今回は固形的なものであるせいか今までのグリンドルムと打って変わってかなり攻撃が効いているが、そのいずれも手足を切り落とすことぐらい。その手足も次々の蘇るもんだから完全にイタチごっこであった。気落とした氷の片割りはその巨体が再び触れれば元通りなのだ。


 「やっぱり狙うは一点!」


それにはまず奴に片膝をつかせないと行けない。


 「っ!?」


走っていると足元に広がっていた氷が靴にわたり俺の身動きを封じる。


 「ゼルッ!」


 「っ!!」


振り下ろされる氷の腕、すかさず槍で防御姿勢を取って受け止めに入るも、流石に身体強化まで施す余裕がなかったせいかかなりの圧力がかかって歯を食いしばる。正直長くは持てない、


 「フンッ!!」


その時バートンがツルハシを片手にその氷の腕を一撃で粉々に粉砕する。同時にエルザードのブレスによって足元を含めた冷気は一掃される。


 「助かった!」


 「油断するな、作戦は!?」


 「まずあいつを跪かせる!!」


俺の言葉をその耳で聞いた。全員は氷の破壊に注力をし出した。足を崩して残りの心臓部分はこの槍で穿つという作戦だ。


バートン、エルザードの二人が足を崩し、ミィーナが軽々とした身のこなしで二刀のナイフで胸部分に裂け目を作る。ここまでのお膳立てを無駄にしないため、俺は槍を解放状態にする。


 「はぁああああっ!!!」


あの時と同じように槍は一つの刃を形成し、俺は胸にあるグリンドルムという悪性の真の状態に向かってその槍を穿つ。しかしすんでのところで氷が急激に厚みを増し、刃を包み込むように攻撃を防ぎ切る。


 「────もうっ、一発ッ!!」


あと足りない一つを補いたい。その固い決意が功を奏したのか。また俺の中で一つ槍との回路が繋がったような気がした。体が俺の意思に沿って自動的に動く、もう片方の手を広げて無我夢中で槍を呼び出す。


すると二振り目の槍が広げた手を埋める。自分が刺し穿った槍と同様の槍、これならばこの悪性に止めがさせると確信させる


 「おおおぉぉぉ────ッ!!!」


叫び声を上げながら、その氷が俺の腕に到達するより早くもう一方の槍を変形し刃を出しトドメと言わんばかりにその氷で覆われた胸部に差し込む。


 ガァンッ!っと鋭い音と共に、氷が割れ氷塊の向こう側で生きていたグリンドルムを確実に穿つ。グリンドルムの断末魔と同時に俺も吹き飛ばされる。無数の氷が宙を舞い、悪あがきの行動は俺のバランスを大き崩す。


 「ピー!」


そこにエルフルのカバーが入って衝撃を緩和していく。だが油断できない心がグリンドルムへと視線を移す。


 「!」


 心臓部を穿たれたグリンドルムは動きを止め、氷像のように固まり氷が体から次々と溶き落とされる。最後にヘドロのような悪性状態として地面にこぼれ落ちるも俺が入れた切り口から、逃れようとのたうち回り、最後には跡形もなく消えた。


 「………は、ぁ。」


無我夢中空気はすこぶる悪い、酸素と残留冷気と熱っぽさが空気を悪くする中、俺たちは再びグリンドルム討伐を無事、成し遂げたのであった。




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