147話「犯人」
「急ぐぞゼル!!」
「おい、待てって!」
俺は走るエルザードの後を追って行く、どうしてこうなったかと言えば話は少し前に遡る。いつものように冒険者ギルドにて依頼をこなそうと掲示板を見ていた時に。
『ゼルさん、エルザードさん少しいいですか?』
っと受付の人から呼ばれた。そしてギリドリス辺境伯からの手紙を受け取ったことが始まりだった。書かれていた内容には。
『奴隷達の解呪に成功した。奴隷達に聞き込みを開始する。そしてどうか君たちにも同伴してほしい。すぐに辺境伯の屋敷に来てもらいたい。』
というものだった。
要約するとこんな感じなのだが、この手紙を見たエルザードは俺の手を引っ張って居ても立っても居られないようにギルドを飛び出してしまった。今は辺境伯の屋敷に向かっているというところだ。あと呼ばれたのは俺とエルザードだけだがエルフルももちろんいる。大切な仲間だからな。
「エルザード、別に屋敷は逃げやしないぞ!」
「わかっておる!でもすぐに来いと言っていたでないか!!」
それはそうなんだけど、少なくとも手紙を書いてギルドに残す余裕があるのなら、すぐにっていってもそれは近いうちという意味なのでは?っと俺は思ったりする。だが流行るエルザードを止めることは困難だと知っているので俺達は全力ダッシュで辺境伯の屋敷へと向かったのだった。
「はぁ、はぁ、疲れた。」
「何をバテておる!」
「いや、普通これ走ってくるところじゃないだろ!ゆっくり歩いてくるところだっての!」
思ったより遠かったためペース配分をミスって息切れを起こす俺。同じ領内だというのにレオーナからここまでそこそこ離れていた。辺境伯の管理領内の広さがここまで広いとは盲点だった。しっかり調べておけばこんなことにはならずに済んだのかも。
「情けないノォ。」
「お前にだけは言われたくない。どんな体力してんだ!」
竜であるエルザードは走るっていっても途中から翼だけ出してほぼ飛ぶみたいなスピードで向かっていた。俺は地面を蹴って走っていたというのに、そしてそれを踏まえても全く息を切らしていないエルザードは正真正銘の体力お化けだ。やはり姿はあれでも竜である。
こっちは人間なんだけどな。
「ほれ、さっさと屋敷に入るぞ?」
「待て待て、手紙手紙!」
手紙を門番の人に見せて、屋敷の中に入れてもらう。いつぞやのサーノルドの屋敷を彷彿とさせながらもどこか牧歌的な雰囲気に包まれている。やはり場所が違えば屋敷も違うというわけかという感じ。
「ゼル様と、エルザード様ですね。ご案内させていただきます。」
「どうも。」
ここで働いている召使?メイドというのだろうか、そんな人に俺達は案内される。屋敷の中はやっぱり静かだテキパキと仕事をしている人もいればすれ違い際に挨拶をしてくれる。
ほんと比べるのも変だけどサーノルドのところとは大違いに思える。
「のう、なんで我らの名前を知っておるんじゃ?」
たしかにっと思っていたことをエルザードがメイドに聞いてみる。もしかして白い髪をしたエルフと、ツノみたいなのがついたドワーフが来るって話を聞いていたのか?
「ギリドリス様から、今日か明日あたりに息を切らしたエルフと全く息を切らしていないドワーフがやってくるとお聞きしていましたため……。」
「おお、すごいの。全くその通りじゃ!」
(いや、そこまで織り込み済みなのかよ。)
どうやら辺境伯の俺たちに対する解像度はかなり高いらしい。本当に見た目とかそういう情報じゃなくて的を射ている。エルザードが走ってくることも読んでいるなんてとんでもない。
「ここのお部屋でございます。」
俺達は部屋へと案内され、メイドは一礼してどこかへ行ってしまった。この先は自分で行ってくださいということなんだろう。俺はドアノブに手をかけてゆっくりと開ける。
そこには縦に長いテーブル。5人の子供の獣人、ミィーナとプレンサ、辺境伯が椅子に座って何か飲み物を飲んでいた。5人の獣人は初めて見る、だがその姿からどこか見窄らしさというか貧しさを感じる。対してその反対側に座る三人はまるで貴族のよう、いやミィーナを除けばそこ二人はまことに貴族なのだが。
なんというかプレンサの飲み方が全然貴族らしくないってところが、まぁそうだなって思ってミィーナはちょっと上品、辺境伯は上品中の上品な飲み方をしているし。想像通りである。
(ってそうじゃない!!)
この時点で凄まじい情報量である。もはやツッコミどころが多くてどこから突っ込んだ方がいいのかと混乱する光景の最中。
「ほら、来ただろう?」
「本当にきたな。」
「本当にきた。しかもその通りに。」
「………ぇ。」
7人は俺たちの姿に驚いている。ちなみに辺境伯ことギリドリスは全く驚いていない。ほらな、私のいった通りだろうという顔をしながら紅茶を啜っている。
プレンサは素直に驚いて、ミィーナはなんだか複雑そうに驚いて、5人の獣人達はそもそも人が来たことに驚きつつも何か別の意味で驚いているような顔をしている。
そのら別の意味はパッと見じゃ判断が難しい。
「二人ともこっちに座ってくれ。」
唖然と止まっている俺たちを呼ぶ辺境伯、俺たちは呼ばれた通りにとりあえず空いている椅子に座る。
「えっと。」
「すまない、さっきまで二人が何分後にくるかどうかを話していたんだ。私は今日で今だ。」
「私は明日来ると思ってた。」
「私は来ないんじゃないかなって。」
「そ、そうですか。」
「正解は今日で今じゃったな!」
いや違うエルザード、そこじゃない。この三人は俺たちの二人の到来をまるでゲームとして楽しんでいたというところだ。ていうか今日で今来なかったら申し訳ないことにミィーナとプレンサはどうしていたのだろうか?明日までここで待っていたとか?
真相は闇の中。実際に俺達はここに来ている。目の前のことに集中しよう。
「二人に紹介しよう。彼らがあの5人の奴隷達、今では私の屋敷で保護する形で相応の身分をもって対応している。」
「……。」
俺たちに向かってペコリとお辞儀をする5人。そうか、なんで5人なんだ?とか服装がなんか違うな、とか思っていたがなるほど。あの俺たちを襲ってきた奴隷達だったのか。あの時は黒の衣装に身を包んでいたせいで顔とか全くわからなかったけど、こうしてみれば普通の子供だ達だ。
いや、それも辺境伯の言う相応の身分の対応というやつの結果なんだろうか。見てみれば体には傷のようなものが見えなくもない。
「こんなことを言うのは変じゃが見違えたの。」
「…そう思ってくれるなら何よりだ。」
辺境伯は一呼吸挟んでエルザードの言葉に答える。それはまるでそう見えるだけだ、っといっているように聞こえる。今の、見た目をいくら着飾れても、体に残るものは絶対にあったっていうことだよな。
(……奴隷。)
その言葉が指す扱い、そしてあの首輪の効果のことを考えればこの5人がどのような道を辿ってきたのか、想像できなくもない。無論、考えたくもない話だが。
「それで、今日は聞き込みだったか。」
「あぁ、当事者である君たちにも是非とも聞いてほしいと思ってな。私からお願いさせてもらった。」
「どうもなのじゃ。にしても、聞き込みというが、、」
エルザードは5人を一瞥する。5人はこっちの言っていることがわかっているのか、なんだかまだ浮かない顔をしている。それもそうか、彼ら彼女らにとっては嫌なことを思い出すことになるのだから、そりゃ話さないことに越したことはない。
(そもそも、喋ってくれるかどうか。)
苦しい過去と共に生きているのなら、話せないなんてこともある。それに俺たちはこの子達と一度敵対した身、望まない形であったとはいえかつての戦った奴らに何かを話す気になんてなれないだろう。
「………まず、私から君たちに話したいことがある。────すまなかった。」
辺境伯は椅子から立ち上がると5人の獣人達にまず謝罪をした。5人は突然されたことに驚いている、俺も実際辺境伯の行動には驚きを隠せない、だがエルザード、プレンサはなぜだかそうするだろうなとわかっていた顔をする。
「私は貴族として、君たちのような奴隷を出さないために活動している。にも関わらず、今回このような事態が明るみになったこと、そして君たちが今まで苦しんできたことを知らなかった。民を守る貴族という立場にいながら、それを全うできなかった、本当にすまない。」
「……ぁ、の、あ。」
5人の獣人達は慌てている。貴族が頭を下げるのをまるで一度も目にして来なかったような顔。困惑の表情、そして声からは。
(恐怖を思い出したような、そんなのが聞こえたような気がした。)
「そこまでだ、クロージャー。彼ら達が困っている。」
「……。」
辺境伯ギリドリスはプレンサの言葉を聞いて再び椅子に座る。同時に5人も互いの顔を見合わせながら落ち着いていく。場は先ほどの平穏をなんとか取り戻してきたのである。
「5人ともすまない。聞き込みと言ったが、気を楽にしていい。私たちは君たちの実体験を全て話してもらうことなんて望んでいない、だから私たちの質問に答えるだけでいい。……だから話しては、くれないだろうか?」
『………』
全員辛そうな顔で俯く。今多分嫌なことを頭に思い浮かんでしまったのだろう。本人達も多分俺たちには話したい、しかし嫌なことは思い出したくない。その中間でせめぎ合っているようにも思える。
どちらにしても、彼ら彼女達に無理をさせるわけにもいかない。いざとなったら止めることを視野に入れないと。
「……話したくないよね。」
(ミィーナ…?)
全員が黙り、何も終わりも始まりも起こらない中、口を開いたのはミィーナだった。
「でも、これはあなた達。。ううん、あなた達の友達を救うことに繋がると思うの、あなた達が話してくれれば私たちは必ず他の子達を救いに行く。あなた達と同じように辛い思いをして苦しんで生きている人たちを救いにいける。だから、どうか話してほしい。お願い。」
ミィーナは頭を下げてお願いする。プレンサ、そしてギリドリスとは違う言葉をいうミィーナに。
「……わ、わかっ、、りました。私も、私達みたいに、苦しい思いをしている人を救いたいっ。」
5人のうちの一人がそう言った、その言葉はまだ怯えていて何か見えないものに恐怖を覚えているようだった。でも、その一歩は真に誰かのためを思った言葉であり、自分たちのような者を救われたように救いたいという願いがあった。
他4人も頷いて答えを出す。決して口には出なくても全員同じ願いを抱いていたのだ。
「ありがとう。」
そして質問形式で聞き込みが開始された。聞き込みを担当したのはプレンサではなくミィーナであった、元々プレンサがやる予定であったが彼女彼らの心を開いたミィーナがやることとなった。俺たちは頭の中で聞き込みによって得られた情報をメモ書きやら頭の中に刻むなどしてまとめていく。
プレンサと辺境伯はメモ。俺たちはそれを聞いていた。(メモ書きしたいけど、紙がないので。)
質問の内容は実に少なかったが、時間は相当かかった。質問の中には嫌なことを思い出す必要があるものもあった、できる限り心の傷には触れないように配慮したものであったが、連鎖的に思い出すということもあり途中で涙をこぼしながら語ってくれることもあった。それこそ今日はここで終わろうとこっちが提案しようとしたこともあったが、意外にも5人は首を横にふり最後まで語ってくれた。
嫌なことは一瞬で終わらせたいという意思もあったのだろう。
ちなみに休憩時間はエルフルが5人のメンタルケアに努めた。最初は魔物であるエルフルに警戒することもあったが何回か休憩を重ねていくたびにエルフルと友達のような関係になっていっていた。変幻自在に体の形を変えるエルフルと戯れている5人の姿を見ていると安心した。
あの時はエルフルを連れていく選択をして良かったと俺は心の底から思った。
そして、肝心の質問は三つだった。
君たちを奴隷した人物。
奴隷の首輪について。
どのような経緯で奴隷になった?
この三つの質問によって得られた情報はというと。
彼女彼らの雇い主はこと主人はベルギンド・フォン・カグラナッチ、名前でわかる通り貴族だった。5人曰く自分たち以外にも多くの奴隷を保有しているらしくそれを使って裏の依頼や商売を行っているらしい、時には自分たち奴隷を誰かに売り捌くなんてこともやっている最低なやつだと。
奴隷の首輪の出所に関してはよくわからなかったらしい、しかし"いくらでも手に入る"と言っていたらしく、なにか確定的なルートがあるのだとわかった。
最後に奴隷にする人をどこで調達してきているのかというと、そこも別々らしい。攫われた、拾われた、不当な契約を結ばされた、物心ついた時には奴隷だった。などさまざまだった。
それ故に身分がハッキリしないだけではなく、かなり幅広く奴隷を集めている人物であるということと、これが今まで全く明るみに出なかったということを俺たちを知った。
普通ならこのような失踪だとか、誘拐だとかは表に出てもおかしくない。人が一人いなくなっているのなら知っている人が届出を出すなど方法はある、しかしそれすらも出なかったということは組織的な可能性が高く、彼女彼らの雇い主はそのベルギンド・フォン・カグラナッチであったが他の奴隷には他の雇い主がいる可能性が挙げられた。
(………。)
以上が得られた情報であったが。簡単にまとめただけでも聞いているこっちも心が痛くなるような話ばかりだった。話している最中彼女彼らが涙を流すことなんてしょっちゅうだった、そのことからもいかに思い出すかが大変でいかに辛い思いをしてきたかが読み取れる。
自分の無力さを思わず痛感してしまうほどだ。
「話してくれてありがとう。ゼル、エルフルをこの子達に貸してあげられる?」
「あぁ。エルフルもいいよな?」
「ピ!」
エルフルも了承。メイド達に連れられながら5人はエルフルと共に部屋を出て行った。しかし部屋の中の空気はまるで奈落の底なのように真っ暗である。部屋の照明は俺たちの心を明るくするどころか、一周回って鬱陶しさを覚えさせてくれる。
「……。」
全員が黙っている。外はもう真っ暗だ。時刻も今は夕暮れを過ぎ、遅い夕飯時。だがとても何かを食べれるような気分にはなれなかった。
「………!」
そんな空気を打ち破ったのはプレンサだった。彼女は椅子から立ち上がると部屋を出て行こうと扉に手をかける。
「プレンサ、どこへいくつもりだ?」
「………ギルドに戻る。」
「───プレンサ。どこにいく?」
「………。」
プレンサと辺境伯の間に重苦しい空気が流れる。二人の間で起こっている出来事なのにも関わらず重圧がこちらにまで飛んできている。
彼女は辺境伯の方を振り返る、そしてその顔には迷いなき固い決意が宿っていた。
もはや俺たちが介入できる隙はない、ここからは二人の世界で戦いだ。
「やめろ、プレンサ。」
「………お前の方法で止められるのか?」
「これは一人で解決できる問題ではない。国が一丸となって、正当的なやり方で対処しなければいけない。わかっているだろう。」
「言うな。それで何ヶ月?何年かかる?お前のいう国が一丸となって、それはいつの話だ?」
「……。」
「奴らは変わらない。彼らからもわかっただろう相手は一人じゃない組織だ。お前にいい顔をしている奴らが、お前のすることをわざわざ見逃すと思うか!」
「なら尚更、慎重にいかなくてはならない!少しずつ確実に!話せば彼らだって自分の愚かさを理解するはずだ!」
「いや違うな!お前はあいつらは自分が悪人だと微塵も思っていない。それどころかあいつらはお前の言葉に納得どころか耳を貸すことすらないだろう!所詮私欲に塗れた有象無象ばかりなのだからな!」
「───プレンサッ!!お前にはわからないだろう、彼らも同じ種族なのだ!ならば──」
「ならばなんだ!同じ種族だからなんだ!それで分かり合えるだと!?違う、奴らの根底はまるで変わってない、自分たちのことばかり優先している者がっ!権力の犬がっ!民の助けになるだと!!馬鹿馬鹿しい!」
「───なぜそうも短絡的な!そうやって何も考えず突き進むことが正解だと!?間違えるなプレンサ!」
「間違えるだとッ!なら貴様もあいつらと同じだ。そうやって囚われていながら最後の最後まで自分のやり方しかできない!彼ら奴隷達が真に望んでいるのは牢獄からの解放だ、貴様のやり方では最後に新しい牢獄を作るだけだ!」
「プレンサ!!」
「黙れ!もういい、貴様のいうやり方で変わるとは思わない。私は私のやり方を行う!二度と私に話しかけるな!」
「待て───プレンサ……っ!」
ギルドマスタープレンサは扉を壊すかの勢いで閉め、退出した。その気迫に押されてから俺とエルザードとミィーナは座ったまま、動けないのであった。
「……ハァ」
辺境伯は諦めたように座り、目元を手で覆う。そしてしばらくしたのち。
「3人とも、すまない。プレンサを止めてくれ。」
っと言った。それ以上の言葉はない、でもなんて言えばなんで言葉が飛んでくるかわからない、それにプレンサの言い分は確かに正しさがあってもかなり極端だ。このまま突き進んでは何が起こるかわからない。
「わかりました。」
俺はエルザードの手を引っ張ってミィーナと共に部屋を後にしプレンサを追いかけた。最後に見た辺境伯の背中はどこか寂しかった。
プレンサは一人で明かりを手に夜道を歩いていた。夜は魔物が活発的になる、それこそ一人で出歩くなんて危険極まりない行為だが、魔物達はプレンサの気迫に押されてか全く仕掛けてこない。今の彼女はさながら巨大ハリネズミのようだ。
だがさすがはギルドマスター、と感心している場合ではない。
「プレンサ!」
「……君たち。悪いが、私は戻るつもりはない。しばらく放っておいてくれ。」
「……。」
声から意思の固さを再認識する。これはテコでも動かないやつだ。しかし辺境伯に任されたのなら何が何でもプレンサに危険な真似はさせられない。
「ゼル、すまんの。プレンサ、我はお主の意見に賛同する。」
「エルザードっ!?」
ミイラ取りがミイラになる。みたいな感じでエルザードはプレンサの意見に同調した。プレンサ自身もエルザードの行動は予想してなかったようで驚いている。
「我も同じ意見じゃ。確かにギリドリスこと辺境伯の言っていることもわかる。しかしあやつの方法では何年かかるかわかったもんじゃない、我は目の前で助けられるものが助けられない、などを何回も見ていられるほど強くはないのじゃ。」
「エルザード。」
「今こうしている間にも、奴隷達は増えている、そして苦しい思いをしている。我には力がある、そして特別気にする身分はない。ならば全てを敵に回してもこれを成し遂げてみせる。邪魔する奴らは蹴散らせば良いのじゃ!」
「………それは。」
「確かにこれは正しくないじゃろう。じゃが、ここで諦める方がそんなことよりもよっぽど後悔する。我はそう思った、じゃからプレンサにつく!」
エルザードの意思は十分だ。こうなれば止められる方法はないだろう、しかしそれでは意味がない、辺境伯の言っていることは正しい。もう力でどうこうする時代ではない、話し合いの時代となっている、エルザードもそれを望んでいたはずなのに、自らそれを打ち破りにいく無法をする。
「ごめんゼル。エルザードの言葉で私もプレンサについて行くよ。」
「ミィーナ…」
「私も、ただ黙って見ていることなんてできない。私が冒険者になったのは、見ているだけが嫌だったから。」
「っ。」
見ているだけが嫌だった。か、そうだ。その通りじゃないか、俺が冒険者になったのは誰かを助けたいから、困っている誰かを救いたいから、戦い無くして平和に物事が解決できるならそれでいいと思っていた、けど違う。本当に変えるためには力が必要。だから俺たちは戦うんだ、
(そして、俺には力がある。全てをひっくり返せる力が、今手元にある。)
ならこれ以上に何を迷う必要があるんだ。困っている人を救うのなら、本当にその人達のためを思ってしないと。苦しみを1秒でもなくす方法をとらないと!
「────はぁ、まったく。」
いつしか安心を求めるために戦っていたなんて、昔決意した自分にちっとも顔向けできない。でも、今気づけてよかった。もう少し遅かったら後悔でその辺りをのたうち回っていたところだった。
「……二人が行くんじゃ俺もいかないとな。」
「ゼル、本当か!?」
「あぁ。エルザード、お前をたまには見習わないとな。ここは大胆にいかないと。」
「3人とも、いいのか?」
「うん、我はお主の意見に賛同した。ギリドリスには悪いが、今はこのやり方が正しい!」
「うん。私も、プレンサの言葉に気づかされたから。」
「二人が行くなら、俺もいかないとな。馴染みを危険な目に合わせられるかっ。」
「3人ともありがとう……!」
辺境伯には本当に申し訳ないが俺たちはプレンサと共に本拠地を叩くことに決めた。成り行きかもしれない、本当は自分はそんなことするタチじゃないのかもしれない。でもただ黙って見ているなんてできない、理由はそれだけで十分だ。




