14話「進み広がり」
靁と別れた俺は馬車に戻り、そのあと何事もなく領主の屋敷へと到着した。
「スッゲェ──。」
領主の屋敷はとんでもなく広くて、豪邸のような感じだった。城よりかはたしかに劣っているところもあるけども、それとはまた違った目新しさを感じた。
そして召使にそのまま案内され、、俺たちは領主と対談することになった。
「おおー。勇者様方、よくぞ参りました!私の名前はすでに聞いているかもしれませんが、改めて自己紹介を!私、スウェント・フォン・プレントンと申します。ぜひ!お好きな名前でお呼びください、プレントン卿でも結構です。ささ、どーうぞおかけになってください!」
「それじゃあ、遠慮なく。」
なんか兵士長の話だと、貴族って傲慢な奴が多いとか聞いてたけど。この人は案外そうでもないのかもしれない。だって今の俺達をまるでお客様みたいに扱ってくれるし。
それとなんか異様にテンションが高い気がする。
「勇者様方の活躍は、この辺境の地にも聞き届いております!攻められ、絶体絶命の中一致団結し、にっくき魔族達を追い払ったと。あぁ……話を聞くだけでも感銘を受けてしまいます───!」
(なんか、胡散臭くなってきたな。)
「それで、僕たちは救難の知らせを受けてきたんですけど、要件は?」
(正治がストレートに聞いたっ?!)
明らかに話を切り出しにくかった気がするけど、正治はお構いなしに目の前のプレントン卿へと聞いた。
「し、失礼……ゴホン、私としたことが熱中してしまいました。要件ですね、今お話しします。」
(今、話遮られたことになんかムカついてたよな。)
気のせいだといいのかもしれない。
「実は、最近私の領内では色々と物騒な問題がありまして。住民達が困り果てているのです、私もなんとか助け舟を出したいと考えているのですが…。。」
「ですが?」
「えーーっと、なんと申しましょうか。人手不足でして。」
「そうなんですか。」
「はい、ですので。ぜひ勇者様方にこの領内の問題解決の手助けをしていただきたいと考えています!私も最大限の手助けはさせていただきますので、はい!」
そんなこんなでプレントン卿と色々話した後、俺たちは屋敷を後にした。プレントン卿が色々頑張っているのは伝わってきたけど、なんだかその裏何か怪しさも抱えていたような気がした。多分気のせいだと思うけど。
(それにしても、)
【この領地には魔族がいる。】
靁のあの言葉をそのまま受け取るなら。もしかしてこのこの領内の問題って魔族がらみだったりするのか?でもプレントン卿はそんなこと一度も言ってなかった。でも、アイツを信用できるのか?
(……考えても仕方ないよな。)
「天馬!なにボーッとしてんのよ、早く住民達から話聞きにいくわよ!」
「あぁ!ごめん、今行く!!」
<──|||──>
「オイ、なぜ勇者をここニ呼んダ?まさか、自分ダけ助かろうとなどシてないよナ?」
「ま、まさか。これも作戦の内でございますよ!ここは城から離れ、魔族領からも離れている、勇者を叩き潰すにはここしかありません!」
「どうヤるつもりダ?」
「それは、もちろん。あなた方魔族の協力が不可欠になります!彼らは所詮勇者見習い、多勢に無勢、大勢で挑めばあなた方の敵ではありません!私は勇者を殺すチャンスを貴方様方に献上したまでです!」
「いいだろウ。ここは元々貴様の場所ダ。そして今はワレワレの場所だ。妙ナマネをすれば殺してヤル。ワカッたな?」
「は、はぃぃぃ!!」
「アトは貴様に任せル。」
「お、お任せください。必ずや最高の場面を用意してみせますとも!!」
「言いワスれていタ。チカゴロ、同族が死んでいル?心当たりハないカ?」
「い、いいえ………そ、そうなのですか?」
「…………ワスレロ。」




