137話「王都探索」
辺境伯の行きの護衛を終えた俺たちは5日後の帰りの護衛まで4日間の自由行動ができるようになった。もちろんただ黙って宿屋で待機というのも味気ないというか勿体無いので次の日から俺たちは王都を自由に散策することにした。気分はまさに修学旅行だ。
(って修学旅行ってなんだよ。)
咄嗟に口から出たけどしっかりとした意味合いが思い出せない単語をまた言いつつ俺たちは宿屋を出てすぐに出発した。
「ぬおぉぉ、眠いぃ。昨日のベッド最高じゃった、あれがごーじゃすという奴かノォ。今までの少し硬いベットと大違い、我としたことが起きれんくなるところじゃった。」
「お前はいつも俺より遅起きだろ。」
「ピィ。」
「でもやっぱり王都の宿屋は高い。」
「ぐっ、そのことを言わないでほしいミィーナ。」
財布が痛いならぬ懐が痛い。最初聞いた時はびっくりしてしまうほどの値段、それ相応のサービスは受けられたけどだとしても出費が安くなるわけじゃない。いい体験には相応の金額がかかるということだ。
「じゃが、最近の我らは景気が良い。ここいらでパーっと使ってしまってもいいじゃろうて、ほれほれ!」
肘打ちするエルザード。一理あるが、一理しかない。
「あのな、家計簿つけてないお前が言うな。俺からすれば節約の日々だったんだぞ。」
「それもそれじゃ、今回の依頼金もかなり高額じゃから帰っても問題ないじゃろ。」
「借金はするなよ。」
「しゃっきん?」
「金を借りるなってことだ。後でめんどくさくなるからな。」
「エルザードの言い方からして、いつのまにか借りてきてそうじゃない?」
「冗談言ってくれミィーナ。」
雑談しながらも王都を練り歩く、ただやっぱりなのかかなりの人口密度を誇っているレオーナとは桁違いだ。道はかなり大きいはずなのに比例するかのような人の多さ、変に息苦しさも感じるものだ。
「エルザード、逸れるんじゃないぞ。」
「ゼル?」
「なんだ、ミィ─────」
一度立ち止まってミィーナを見る。だがそこに一人と一匹いない。そうエルザードとエルフルだ。
「─ナ!あいつらどこいった?!」
まさか逸れたのか?いくら人が多いからって竜であるエルザードが押し巻き込まれるなんてこと考えられないだとすると。
「ゼルあそこ!」
「!」
発見した、二人の姿だ。店でなんかもらっている。急いで捕まえに行かないと、財布のことを知らないあいつが一体どれだけ食べるか考えると一気に冷や汗が流れ出す!
「おぉっ!」
「フルーツ串だよ!なるべく冷えているうちに食べな!」
「いただきまーす!!」
「待ったぁぁ──!!」
エルザードが何やら美味しそうな串を口の中に入れる前に何とか間に合った。だがここでエルザードから串を取り上げればその先に待っている展開は容易に固くない。このおばあちゃんがる機嫌を悪くするとめんどくさくなるのを俺は知っている。
「お客さん?!」
「い、いくらですか?!!」
値段を聞いた俺は安心してミィーナの分と俺の分も買った。王都であっても意外と何とかなる値段なのだなと思う。フルーツと聞いてら高級品なのでもっと値が張ると思ったが。
「あーん!んーー!美味しいぞ!!」
「うん、確かに美味しいなこれ。フルーツ冷やして串に刺しただけなのに。」
「……ねぇ私もよかったの?」
「良いんじゃよ!うまいものはみんなで食うのが一番じゃ!」
「あぁ。だがエルザード、くれぐれも食べ物の匂いに釣られて行くな、あれがバカみたいに高かったら流石に本気で止めていたからな!」
「うんうん、わかっておるよ。我も値段のイロハも知らぬバカではない!」
「バカの自覚あるなら気を付けろ。」
「なにぃ!!」
「ピィーピ。」
エルフルがやれやれと言っているように聞こえた。その調子だエルフル、このエルザードに容赦する必要はない。世間知らずだということを教えてやれば良い。
「さて、うまいものは他にもあるから何を食べようかの!」
「本当に食べ物のことしか考えていないな。」
「当たり前じゃ!我は考えるんじゃよ、レオーナにもうまい食べ物はある。つまりそれより大きい都市じゃったらもっとうまいものがある、と!!」
「そうだな。」
「反応薄!」
さほど考えなくてもそれはほぼ定石みたいなものだろう。なにを発明した!みたいなテンションで語っているのだろうかこの竜は。
「……ミィーナ?」
「え、なに?」
ミィーナが見ていたところは洋服店だった。そりゃミィーナも女の子だ、洋服の一つや二つ気になるだろう。さっきはエルザードに気を取られてばっかりだったが、そうだなせっかくミィーナも連れているんだここは彼女の意思を呑んでもいいか。
「エルザード、おまえファッションに興味はあるか?」
「ふぁっしょん?もちろんじゃ!!」
いやファッションってことば初めて聞いただろっと突っ込みたくなったがやめた。とにかく興味があるのならいく必要があるということだ。
「なら洋服店いくぞ、お前のコーディネートをみせてくれ。」
「お?おう!任せておくのじゃ!!我のコーディネートをとくと見るんじゃ!!」
「ミィーナも行くよな?」
「う、うん。」
ということで、それとなくミィーナを誘って洋服店へ、レオーナにいた時はさほど服に興味なんかなかったが、王都の洋服店はないというか、ブランド感がある。そこら辺に売っている服とは桁違いというか、値段も桁違いだし、何というか質も桁違いだ。
「おぉ、良いなこれぇ!これも良いな!」
普段飯のことしか頭がないエルザードも意外とオシャレには興味がある。意外中の意外だが、
対してミィーナは何やら悩んでいる。もしかしてどこから手をつけたら良いのかわからないのだろうか?、って俺もそうだったりするんだが。
そもそも記憶のない俺にとって服の最低と最高はわかるものの合うか合わないか良い塩梅かどうかなんてわからない。
「何じゃ二人とも迷っておるのか?なら我についてこい!!」
「ちょ!」
「エルザード!?」
エルザードに引っ張られ、テキパキと選ばれた服を試着してこいと試着室にぶち込まれる。何が何だかわからないがとりあえず着てみるとしよう。
「着終わったら見せるのじゃぞ!着てみないと実際に合ってるかわからんからの!」
「あぁ。」
カーテンを開けて着替えた姿をエルザードに見せる。隣もカーテンが開く音がする、ミィーナも着替え終わったようだ。
「おお、二人とも似合っておる?どうじゃ、実際に!」
「確かに、悪くないなこれ。」
エルザードが選んだ洋服は豪華すぎないものの、人前に出ても恥ずかしくないような装いだった。機能性はまさに洋服の域にとどまっているのだが、洒落るレベルで使うのなら十分。それこそいつも使っているローブよりもなんだか上品なスタイルだ。
「わぁ。」
ミィーナの服も中々良いセンスだ。ローブというよりよりカジュアルに振っているような感じだ、だがその中にも十分な上品さがある。いつもはフードをかぶっているということもあり顔はあんまり見えないが今回はあえて首元にオシャレ用のマフラーつけていることによって顔がハッキリ見えている。
(だが一番驚きなのが。)
エルザードの恐るべきファッションセンスだ。押し付けられた時は似合わないだろっと思いつついざ着てみればどうしてか合ってしまう。エルザードの選んだものには正解しかないという結果に吸い込まれているようなそんな気までしてしまうほどに。
「エルザード、お前センスいいんだな。」
「そりゃゼルよ!我はドラゴンセンスじゃぞ!」
確かにこれはドラゴンだわ。っと納得しながら選んでもらった洋服をかなり気に入って決まって購入した。ちなみに値段はバカみたいに高かった。まぁ、エルザードの分までかからなかっだいいだろう。なんせこいつは。
「エルザード、買ってないのになんで装いが変わって…?」
「ふふん、、知らないじゃろうが。我のこれは竜力で編んでいる。少し見ただけでその姿形を真似られんるんじゃ!」
つまり常時戦闘服を展開しながらその見た目はオシャレに全振りできるのだ。こいつのこの竜力ずるすぎる。
「ちなみに竜力がない時は服はどうなるの?」
「なくなる。全裸になるのじゃ。」
「何食わぬ顔で言うな。」
いやエルザードの裸なんて需要ないと思うけど、それにしたって全裸はダメだ。文明人として、人の形態をとっている間は嫌でも服を着てもらう。
(エルザードが全裸になった時の用の服を用意すべきだな。)
っと思いながら俺達はその後も王都で散策を続けた。その日は修学旅行の自由時間気分を満喫しながら終えた。まだまだ帰りの依頼には時間がある。明日は調べたいことを調べに行こう。




