133話「変わった依頼」
冒険者ギルド。いつものように掲示板に貼り付けてある無数の依頼を一つ一つ見ていく、自分たちでもできる簡単な依頼はないものかと、考えるがそう簡単じゃない、現状では薬草採取や簡単な討伐依頼なんかはほとんどなかった。
珍しい話じゃない、そこにないならないと同じで俺たちはこういう依頼がない日にちょくちょく遭遇している。
(まぁ、多分受けすぎて無くなってるなんてこともあるんだろうしな。)
無理して上の依頼を受ければ実力と噛み合っていないこともあって正しく達成できるかわからない。だから身合った依頼がない時は、、
「エルザード、今日は休暇になりそうだ。」
「おぉ…!」
エルフルと戯れていたエルザードに声をかける。休暇になった日は大体図書館に行って読書に励んだりとか室内でできることをやるつもりだ。雨の日に無理して仕事をしないのと同じに、ちょうどエルフ語のマスターに手間取っていたところだ。この際一気に進めてしまおう。
そう思い、冒険者ギルドの出入り口へと向かおうとする。
「いた!」
「?」
誰かに呼び止められる。誰だろうと振り返るとそこにいたのはミィーナだった。どうやら俺たちを探していた様子。
「ぬぉう。また会ったの……というかよく会うの。」
「私も冒険者なんだから当たり前。」
エルザードの複雑そうな返しにミィーナは答える。まぁそうだなとしか言えないけど。それで……
「俺たちに何か用なのか?」
「……実は依頼を手伝って欲しいの。」
「ほぉう?」
意外な提案だ。ミィーナから依頼を手伝って欲しいと言われるとは全く想像してなかった。俺の想像上のミィーナなら依頼を手伝おうか?と誘っても別にいい。の返事で返してくるタイプだと思っていたから、要は一匹狼(猫)。
そんなスタイルだから誰かと群れるのには何か大事な理由が必要とばかり、、いやまさか。
「なんで我達なのじゃ?」
「この依頼は複数人で受けることになっている、それで貴方達は信用できる。そして実力もある。」
だから白羽の矢がたったというわけか。
「……ふむ。ゼル、どうする?」
質問しといて俺に振るエルザード。俺が最終決定のボタンを押すこととなったのだが、ミィーナは実力と信用と言っていてそれは確かだと思うけど。誰かに、それも俺たちに物事を頼むのには何かの理由があると思う。
それがなんなのか見当はつかない。もしかしたら危険かもしれないが。
この間、武器を選んでくれた恩がある。勝手に感じて勝手に返すのも変だがこれはいい機会だろう。
「わかった。依頼を手伝うよ。早速内容を確認したい。」
「ありがとう。それじゃあ、そこのテーブルで。」
俺たちは4人はテーブルを囲い座る。もしかしてとか考えたがどうやら依頼は普通のものらしい。もし指名的な特別なものだったらエルフの里の時みたいに個室や誰かに聞かれない場所に移動する必要があると思うから。
そこを知ったおかげかなんだか肩の荷が降りた感じがする。
「今回の依頼は貴族の護衛。」
「貴族?」
エルザードが首を傾げる。貴族、俺も聞き覚えがあるがそれは確か。
「確か、ギルドマスタープレンサとかのすごい偉い階級の人だったはずだ。なんでも国に支えているとか?」
「そう、その貴族。私たちが護衛する貴族は辺境伯クロージャー・フォン・ギリドリスここレオーナの街を含む一帯を管理している貴族。その人を王国まで護衛する依頼。」
「なに!?じゃあこの街の主でもあるのか?」
「少し違うけどそんな感じ。」
大物だ。素人の俺でもわかる、確か辺境伯ってかなり偉い立場じゃなかったか?広い領地を任されるほどの手腕があることも確かだし、それに街も領地の中ってことはかなりここら一体かなり広いはずだ。
「ちなみに王都ってなんじゃ?いや意味がわからんとかそういんじゃないんじゃ、ただどういう場所か知らなくての。」
「"王都フラッグリン"はこの大陸内唯一の獣人族の国、そして大陸の約半分を領土とする国。いわゆるエルフの里とかと同じ獣人族の里ってところ。」
「ほうほう!もしかしてこのレオーナより大きいのかの?」
「当たり前、王都はレオーナの比じゃないくらい大きい。」
そんなに大きいところ、辺境伯の貴族も王都に戻る用事があるのだろう。そしてこの依頼はその道中の警備護衛の依頼というところか。
なんかだんだん話が見えてきた気がする。
「ともかく、そんな王都に向けて俺たちは貴族の護衛をしていくんだな。」
「そう。」
「なるほどのぉ、ちなみに貴族の特徴とかあるのかの?」
「……噂だけど武闘派って聞いたことはある、それとなんであれ実力のある人は歓迎する?っていうスタンスらしい。」
「ぉ、おぉ?」
首を傾げるエルザード。確かに少し混乱するが。
「レオーナのあり方と同じってところか。」
「そういうこと。」
「おぉ。我理解。」
その人の在り方が統治にまで出ている。そう考えるとなんだか思いっ切りの良さそうで裏表がない人のような想像をする。いや貴族らしくはないな。
「依頼は私が受けておく、明後日の早朝。ここで会おう。」
「わかった。」
「おおう!言い忘れておった、報酬は?どうなるんじゃ?」
がめついエルザードはミィーナに聞く。まぁ確かに金額のことが気にならなくもなかったけど。でも直に聞くとはこいつ、俺よりよっぽど現金だ。
「全体報酬の半分はどう?」
「よし!我は文句ないぞ。フェアはいいことじゃ!」
「……手伝いなのにいいのか?」
「貴方達も依頼を受けるんだから、当然でしょ?」
それもそうか。
「それじゃあ、なにか追加で伝えることがあったら私から声をかけるから。」
こうしてミィーナの話が終わった。俺たちはは貴族の護衛というまだやったことのない依頼を受けることになった。明後日までに色々準備を整えておく必要がありそうだ、護衛は攻めとはまたちがう、守ることがやるべきことの仕事。そのことを頭に入れてやっていこう、問題は。
(何にもアクシデントが起こらず平和に護衛できたら良いってことなんだけどな。)
そう考えながらその後は仲間と共に休日を過ごした。




