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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター2「そして再会、そして決別」
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13話「会合する友人」





馬車に乗って数日、俺たち勇者は南の領地メイビェへとたどり着いた。そこで俺たちを待っていたのは町の住民達だった。


 「勇者様ーー!!」


 「ありがたい、ありがたい!!」


 「どうか、お助けください!」


歓声、悲願、それらが合わさったような叫び声が馬車の中にも伝わってくる。歓迎されていることには変わらない、でも住人達の顔はどこか曇っているようにも見えた。


 「歓迎されてるね。」


 「そうだな。」


正治のその言葉に頷き答える。多分この人たちは俺達がきたことに歓喜しているはず、だって俺たちはこの領の問題を解決するために城から離れてここにきたんだから。


 そう思い、住民達の姿を進む馬車越しに見ていた時だった。ある人影が路地裏の方へ入っていくのを見かけた。あれは、


 (靁……………!?)


見間違えかもしれない。いや見間違えであるもんか、あれは間違いなく靁の姿だった。この世界で黒髪は珍しいし、背丈動きからして靁だった。俺の直感がそういっている。


 「……?天馬?!」


正治の声が聞こえた時には、俺は馬車の扉を開けて、さっきの路地裏の方へと向かって行った。途中道を塞いでいた住民は勇者特有の力から繰り出される大ジャンプで飛び越え、無事路地裏を俺はどんどん進んでいく。


 「靁!」


そう声をかけた時、アイツはちょうど角を曲がったところだった。あと一歩のところで捕まえられる。あと一歩でお前が何を考えてんのかがわかる。


その気持ちで俺はアイツが曲がった道へと進んだ。


 「靁───いない!?」


その先は行き止まりだった目の前には壁が聳え立っている。ここを飛び越えるのは何が何でも勇者でも難しい。じゃあ靁は一体どこに!?


 [シュィン]


 「!」


 「不用心だな天馬。勇者がショーをやるもんじゃないだろ。」


首元に氷があるような冷たい感覚。ゆっくりと視線だけ首に移せばそこには靁があの時使ってた大鎌の刃が俺の首のすぐそばにあった。


 「靁……なにやって!」


 「これがお前を誘い込む罠だったら、お前はこの会話をするよりも先に首を取られている。勇者になってまだ浮かれっぱなしのよーだな。」


 「………な、何がしたいんだよ!」


 「まぁ俺も戦いに来たわけじゃない。すぐにお前は馬車にでも戻ってパレードの続きでもしてろ。」


 「待てよッ!まだ俺の質問が終わってねぇ!」


 「質問?」


 「なんで、1人でどっか行ったんだよ?」


 「楽だからだ。お前達と違って俺は勇者になるつもりでも勇者ごっこをするわけでもないからな。それに1人の方が何かとやりやすい。」


 「それってどういう意味だよ……!」


 「どうもこうも、事実だが?」


 「…………。」


 「質問は終わりか?なら俺は行かせてもらう。」


 「まてよ!お前は何のために行動してんだよ、1人で一体何して!」


 「殲滅だ。魔族の殲滅。それが俺の目標で目的だ。」


 「殲…滅。」


それは1匹残らず叩き潰すことを意味する。そんなのできるはずがないっとここで言いたかったが、靁の目はおかしいぐらい本気だった。そのせいか俺は驚きのあまりその瞬間言葉を続ける気にはならなかった。


 「話は終わりだ。これ以上ここにいると面倒になる………」


 「っ、あ。おい!!」


靁は壁を蹴り一瞬にして住家の屋根へと登って行った。


 「それと、昔馴染みからの忠告だ。この領地には魔族がいる。そしてアイツらはお前達を狙っている。せいぜい気をつけるんだな。勇者。」


靁はそう言って姿を消して行った。俺はそのあとなんとか馬車と合流して、目的地である領主の家へと向かった。


その間靁の言っていた言葉がずっと頭に残っていたことは言うまでもない。





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