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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター3「プログレス」
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124話「道すがら道中」





 準備を整えた俺たちはミィーナと共にエルフの里に向けて旅立った。初めての長期的な旅をすることもあってか今使っているバックも大きいものを新しく買い、元々持ち物は多くないが必要な道具を買ったりと万全の準備はした。

けど、それによって手持ちの金がほとんどなくなったのは非常に痛い出費だったと思う。それこそ今回の依頼を絶対にこなさないと後が大変になるくらいは。


 エルフの里への道中は色々だった。森を抜け、平原を越え、高地を抜け、崖を登ってなど。ミィーナ曰く最短距離で進んでいるらしい、もちろん今となってはしっかり道があるんだそうだけどまともにそこから歩いたらかなりの時間がかかってしまう。そのため多少の危険を冒してまで進んでいるんだとか。


 「これってそんなに焦ること?」


俺たちは今崖を登っている。断崖絶壁とまではいかないもののかなりの急斜面、正直手を話して仕舞えば後ろに真っ逆さまだ。

ふと横を見てみると長い長い道が続いていた。アレはエルフの里まで続いている道、かなり迂回を挟んであの道はこの上へと続いている。

人間の俺からすれば獣人のミィーナほど肉体的性能があるわけでもないからあっちの道を使いたいと思ってしまう。


 「焦っているわけじゃないけど、でもできるだけ早く解決させたいでしょ?」


 「まぁ、それは。」


異常事態であわやエルフとの貿易途絶の危機だ。早ければ早い方がいいのはわかるけど。


 「ふふーん。」


崖を登っている最中にエルザードが気分良く翼をパタパタしながら登っていく。そうだ、たまに忘れるけどエルザードは竜だった、ならこんな崖本人からしたらへでもないか。


 「エルザード、もし余裕があるならエルフルだけじゃなくてこの俺の背負いものもなんとかしてくれ!」


 「無理じゃ、重量オーバーという奴じゃ!」


 「なーにが重量オーバーだ。そんなぐらいじゃお前の翼はちぎれないだろ!」


 「千切れはせぬが我はお主達が落ちた時用の保険なんじゃ!誰が命綱を握っておるかわかってるのか!?」


 「怖いこと言うなよ!」


今のセリフ脅されている感じがする。いや軽い気持ちでエルザードも脅しているのだと思うけど。


そんな調子で崖を上り切って、疲れた体で再び歩き始める。


そしてもちろん、長期的な旅といった手前当たり前だが1日でたどり着けれるはずもなく、俺たちは安全な場所を見つけては野宿をする。見張り番をしなくていいのか?と俺も最初は思ったが。


 「我がいれば問題ないじゃろ!」


そうエルザードは天然魔物避けだったのだ。よっぽどのことがない限りは魔物に襲われたりはしない。そして意外にもこれはエルザードが寝ていても問題なく作用するらしい、これじゃあエルザードがすごいのではなくエルザードのスペックが凄いことになってしまう。いや間違いなく実際そうなんだろうけど。


 「ゼル!飯!!」


 「子供か、お前は。」


腹ペコエルザードが要求してきたので、俺は調理の支度をする。今回持ってきたのは何も簡易的な食料だけではない。

まず初めに言っておこう、この世界というか俺が今まで食べてきた(記憶をなくしてから)料理はどれも、美味しいとは言いがたかった。


いや食べれるものであることは違いない。しかしどれも味気なかったり保存食に関しては本当に口に入れるものを長期的に持たせましたみたいな出来栄えだ。これでは料理にうんぬんを言うのは絶望的。そこでそんな現状を嫌がった俺は料理をし始める。


料理の本を読んで勉強し、自分なりに味付けなどを考えたりしてレシピを考え出す。最初は完全にエゴからくる趣味として始めたんだが、これが意外にもハマったりして。結果、今ではエルザードとエルフルの懐を奪うことになってしまった。


なぜなってしまったのかというと、こいつらが俺の料理以外を食べなくなってしまったからだ。おかげで俺は毎度のこと作るハメになる、少しは作るのがめんどくさいということを理解してほしい。


 「何しているの?」


 「食事の準備だ。エルザード、バックの中から肉を取り出してくれ。」


 「おお。」


エルザードが肉を取り出し、俺は火を起こす準備と調理の用意。そしてミィーナはそれを不思議そうにじっと見つめている。


 (ミィーナの分も作るか。)


視線を感じ続けたら流石に気になるってことだから、用意しておこう。最悪エルザードが残りを全部食べてくれるから少し多く作り過ぎても問題ない。


 「今日の献立はなんじゃ!!」


 「普通だよ。肉に野菜、道中で食べられるものを回収とかしてたならもう少しいいのが作れたんだけどな。」


 「むむ、そこは贅沢言っておられんからの。お主は常に満足してなさそうだし。」


 「まぁな、」


なんか料理に物足りなさを感じる。もしかしたら俺はいいとこの出身なのか、はたまた料理に命をかけていた生粋の料理人だったのか、どちらにしても好き嫌いが激しいエルザードより舌が肥えているときた。


おかげで、いつも完全に納得するものが作れない。これにはアレが合う〜とかそういうのじゃなくて、俺が求めていたのはこんなんじゃない!みたいな。そんな感じが定期的に。


 「よし!できたぞ!」


シンプルに、肉を焼いて野菜を少し炒めて添えただけの簡易的なものであるが、それでも十分だ。旅の最中に干し肉にかぶりつくなんてことはないからな。


 (なんせ、干し肉が壊滅的に不味過ぎて、、。)


アレは食えたものではない。多分栄養とかも考えて究極的に塩気を出しているんだろうけど、口に入れた瞬間顔が歪むほどのしょっぱさはもはやどうしようもない次元である。


 「おぉ、今日もいい出来じゃのー。お主の焼いた肉はしっかり美味しい!」


 「そりゃ中まで火を通しているからな。」


 「………私も良かったの?」


エルザードやエルフルの食べる姿を見ながら少し戸惑った様子でミィーナが聞いてくる。


 「ん、あぁ。一つ分増えただけだから大したことなかったから。遠慮なく食べてくれ、」


俺が許可を出したみたいな感じになってミィーナも料理に手をつける。最初の一口は小さかったけどその後大きく口を開けて目を輝かせながら一気に口に放り込んでいく姿がなんだかエルザードとよく似ている。

まぁ美味しいご飯の前では誰だって平等になるわな。


そういう俺も自分が作った料理を食べてみる。うん、これはその。


 「まぁまぁだな。」


 「んぐ、何がまぁまぁか!?十二分に美味しいではないか!」


 「うん、これはすごく美味しいよゼル。野営で食べるにしては豪華すぎる!」


 「ピー!」


どうやらみんなには好評らしい。そっかー。とか言いつつ俺は今でも納得してない。もう少しいい味付けだったりいい材料との組み合わせがあるはずだと思い続けている。


まぁそれも調達できる限りのことだがな。

 


 その日から旅での夕飯というか食事係は俺となった。流石に毎日同じものを食べるわけにはいかないと思いながらメニューを変えつつその日に採れた材料でアレンジをしながら毎日それなりの料理を食べてエルフの里へと向かっていった。




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