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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター3「プログレス」
122/192

122話「相談」





 ギルドマスターの依頼を受けるかどうか俺たちは悩み2日が経った。受けるならなるべく早いほうがいいと思いつつ、いまだに決心はできない。酒場で昼食をとりながらも手は止まったままだ。


 「……ここ2日でエルフの里に関する情報をできる限り集めたが、どれも予備知識くらいにしかならんかったのぉ。」


 「それだけ、秘匿性が高いってことなのかもな。」


見かねたエルザードが口に食べ物を入れながらモゴモゴと依頼書を見つめながら話し始める。

エルフの里、巨大な世界樹と呼ばれる神聖な木があり文字通りエルフたちの故郷、"魔法"という独自の力を使い火をつけたり水を起こしたり大地を動かしたりととても汎用性が高い力を持つエルフ。あと耳が長い


俺も登録だけで言えばエルフだが、そんな力は使えない。ギルドマスターはエルザードの力を考えてこの依頼を提示したんだろう。


 「ほれ、我のウィンナーを分けてやる。悩んでないで今は食べることに集中じゃ!」


 「そうだな。」


エルザードに諭され俺も食事を続ける。今回の依頼はかなりの高額だそれこそ俺たちが1ヶ月かけて稼ぐ量の大金。それに実際にこの依頼はエルフの里に行くいい理由になる。拒む者はいないだろう。


 (エルフは長寿だと聞く、もしかしたら……)


いやこれはなしだ。俺の推測では元々俺自身はこの大陸の出身ではない、何やかんやあってこの大陸に辿り着いたというべき存在だ。

あの絵本の通りに行くなら人間である俺はこの大陸にいるはずがないわけだしな。それこそ記憶を取り戻すには人間の大陸に行かなければならない。


 (先はかなり長そうだ。でも──)


人助けの旅をやめる理由にはならない。罪を償うなんてたいそうなことじゃないけど、できるなら自分の手が伸ばせる範囲で人を助けたい。

ならいくつ理由があっても間違いなくこのエルフの里の依頼は受けるべきだろう。


 「ここいい?」


 「?どうぞ……って」


テーブル席に新しく腰掛けてきたのは、何とミィーナだった。つい勢いの良さでいいと言ってしまったが俺はビックリ、エルザードは唖然。


 「……お、お主…っ!」


 「ご注文は?」


 「クレアドラジュースで。」


エルザードが口をぱくぱくしている間にミィーナはサラッと注文。俺は状況が飲み込めずそのまんまフリーズ状態だった。


 「お主!よくもまぁぬけぬけと!!」


 「──エルザード!声がでかい。」


 「んむぐ!」


エルザードが今にも飛びかかりそうなくらい大きな声を出し、とっさに押さえつけながら座らせる。ミィーナはエルザードの言葉に少し視線を落とした。


 「………この前はありがとう、おかげで助かった。」


 『────。』


 「……えっと、うん。どういたしまして、」


ミィーナの言葉に俺は返す。この頃にはエルザードも落ち着き大人しく椅子に座って、大きく深呼吸をしていた。


 「…何の用じゃ?」


 「……相談をしにきたの。」


 「相談?」


ミィーナは俺たちの方を向き合って口を開いた。


 「貴方達にあの依頼を受けてもらいたい。」


 「………。」


少し意外だった。俺の感覚からしてミィーナは一匹狼(猫)のような存在で誰かにこのようにお願いするような姿をまるで想像できなかったからだ。


 「……ふむ、あのギルドマスターに言われてきたのか?」


 「違う。これは私の意思。」


 「ほーーん。」


エルザードとミィーナが言葉を交わす。エルザードの目は至って真面目だ。今の会話の中で互いに何を共有したのかはわからないが、なんだか緊張が走る。


 「……じゃがの我ら達はお主に情報を漏らされたのじゃ、運良くバラすだとか何だとか言われなかったからよかったもののこっちからしたら冷や汗ものじゃったんじゃよ。」


 「それは……ごめんなさい。」


 「む。」


案外あっさり謝るなとか今思っただろエルザード。確かに俺も少しは思ったけど、


 「まぁ、過ぎたことに何か言うのは趣味じゃないしの。それで、受けたことによる見返りは?」


 「……それは考えてある。"魔法"よ」


 「"魔法"?エルフ達が使っとるあれか。」


 「そう、多分……貴方ゼルなら使えると思う。」


 「ほう、確証は?」


 「あんまりないけど、でもエルフは一時期人間とほとんど一緒だとか言われていた。だからゼルにも"魔法"が使えるかもしれない。」


 「ふむ。」


っとミィーナは語った。"魔法"か。っと俺はこぼしながら考える。魔法を使えれば日常生活だけじゃなくてもしかしたら戦闘面においても活躍できるかもしれない。そうなれば危険は伴うがより多くの依頼を受けることができるようになってゆくゆくはもっと多くの人を救うことにつながるかもしれない。

それに今のエルフは一時期人間とほとんど一緒だと言われていたという言葉はなにかの引っ掛かりを感じる。もしかしたら今以上に人間とあう種族についてもっと知れるのかもしれない。

ここの図書館にある人間に関するものは少ないし、別の場所で調べるのもいいのかもしれない。


 「それでどうするゼル?我は構わんぞ、」


 「わかった。依頼を受けることにするよ、」


 「ありがとう。──ちなみに私も依頼を受ける。ギルドマスターからしたらきっとパーティを組んでとか言ってくるから、今回の依頼ではよろしく。」


 「…あぁよろしく頼む。」


何となくそんな気はしていたけどやっぱりミィーナもこの依頼を受けるのか。報酬が目当てか?それとも別の目的があったりするのか?




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