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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター2「ノヴァテラ」
119/200

119話「依頼」





 冒険者になったことによる俺たちの初依頼は。


 「薬草採取でいいんじゃよな?」


 「あぁ、指定された場所に向かって薬草を指定された数だけ取ってくる。見れば分かる、簡単な仕事だ。」


 「ふむ、でこの絵の草を集めるというわけか。」


依頼書に書かれた紙にはとても丁寧に書かれた絵が載っている。特徴とかもしっかり書かれているおかげでこれなら間違えることもないと断言できる。


 俺たちは街を出て近くの草原に向かった。受付の人曰く群生地みたいなものがあるらしい。


 「にしてもじゃゼル。我さっきから言う機会がなかったんじゃが、冒険者登録の時の身分証はタダなんじゃな。」


 「あ、それ俺も思った。」


 「ピィ?」


 「ふむ、なんでなんじゃろうなエルフル?」


 「……もしかして冒険者自体が人手不足とかで、発行料タダにしているとか?」


 「………そんなことあるのかノォ?」


 「いや、実際は俺にもわかんないけど。」


ただ目標の一つとしていた身分証の入手が一石二鳥でできたのは嬉しい誤算だ。


 「あ、そういえば取りすぎないように注意を受けたの。」


 「取りすぎたら、取りすぎたでダメってことなんだろ。」


 「なるほどじゃのー。」


 「ピィー。」


そこらへんの草色とは違う、濃い色をした場所を見つける。近くによって紙に書かれた絵を確認すると確かに薬草だった。


 「これか。いくつじゃったかのぉ?」


 「20個だ。これだけあるなら簡単に集められそうだな。」


俺たちは初依頼は至ってシンプルで地味なものだったが、最初は簡単なもので助かったという心もある。全てが全て薬草採取ではないはずだ、それこそモンスターがいるならその討伐だって考えられる。俺は戦えないから代わりにエルザードが担当するけど、、


 「そう言えばエルザード、俺たちって魔物と出会ったことなくないか?」


 「何をいう?エルフルがおるではないか!」


 「ピィー!!」


 「いやそうじゃなくて、エルフル以外の魔物と出会ったことがないなと。」


 「あぁそうじゃな。まぁ多分我が強すぎるからじゃな!」


 「自分で言ってて恥ずかしくないのか?」


 「辛辣じゃノォ。事実じゃよ。エルフルはともかくとして魔物が寄り付かんのは、、ほれあそこの茂みを見てみろ。」


エルザードが指差す方向を見てみると赤い瞳をした大きいウサギが何やら警戒の眼差しでこちらを見ている。


 「どう見える?」


 「怖がっているように見えるな。」


 「そうじゃ、つまり本能じゃよ。あやつら我に勝てないと本能でわかっておるから手を出してこないのじゃ。」


 「……ふーん。でも俺はお前のこと全く怖くないぞ。」


 「それは当たり前じゃろ。お主を回復させた時我の力が多少ばかり移っておる、自分の一部と見ているから怖がらんのじゃろう。」


 「ぇ、俺エルザードの一部なの?」


 「あーー、説明がめんどくさいのぉ。つまりな自分を怖がる必要がどこにあるというわけじゃ、生物的な本能が強い系のモンスターや人なんかは我を見れば怯えだす。じゃから普通なら手なんて出してこないんじゃよ。」


 「じゃあエルザードが近くにいれば襲われる可能性はないってことか。」


 「少なくともな。あ、我わかっておるから街では意図的にこのオーラみたいなの消してるからな。安心せいよ。」


 「オーラ、それって消せるものなんだ。」


 「ま!我くらいになるとな!!じゃが、オーラは逆に言えば喧嘩を売っているという意思表示でもある。」


 「挑発みたいな?」


 「そうじゃの、お主も我強いが?みたいな態度でこられたらどう思うよ?」


 「むかつくな。」


 「じゃろ。じゃからケンカの火種になりそうなところでは消しとるんじゃ、流石に今のこのモンスターしかいない状況で襲ってくる阿呆はいないと思うが……。」


 「もともと喧嘩腰のモンスターはそんなこと関係なしに襲ってくることがあるからの、大昔我にちょっかいを出してきた小竜が酷くしつこくて、寝床を変えたことがあったんじゃよ。」


 「そうなのか。反撃はしなかったのか?」


 「ま、我は元々ケンカは好きじゃないからの。」


 「……自分の力に自信はあってもそれを見せつけはしないんだな。」


 「まぁの、さっきの話の続きじゃが。その小竜然り、実のところ大昔それで大変なことが起こっての。流石に二度目はしたくないと今はこうしてしっかり切り替えてゆったりじゃ。」


エルザードの過去、そりゃあ竜だから何千年以上と生きているからそれだけの歴史があるんだと思うけど、いつかそんな話も聞けたりするのかな。


 「ていうか、お主我をなんだと思っておるんじゃ。まさか、傲慢不遜な竜だとでも?」


 「いやいやそういうんじゃなくて!」


話しながら手を動かして、薬草を規定数集め終わった俺たちは冒険者ギルドの建物へと戻った。


 「集め終わりました。」


 「はい!ありがとうございます、お怪我などはないようですね!」


 「ふふん。」


エルザードは受付のその言葉に自慢げに誇った。そりゃあエルザードのおかげでモンスターに襲われることがなかったんだからな。


 「こちら報酬となります!」


受付の人が薬草の確認を終わると、依頼料を受け取った。けど、正直どのくらいの価値があるのか全くわからない。


 「………。」


 「のおゼル、我思ったんじゃが。」


 「あぁ、しばらくは勉強だな。」


文字も読めなければ、硬貨の価値すらわからない。俺たちには根本的にこの社会の常識が不足している、


 「図書館でもよるか。」


 「あと、宿探しじゃの。まぁ野宿でもいいが。」


俺たちは街にたどり着いたが、それ以前にまだまだ学ぶことが多そうだ。




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