108話「未知との遭遇」
「うあああああっ!?」
下に落ちる感覚が永遠に続いていく。風がただでさえ薄いボロ布の間を掻き分けて俺の肌へと伝わる。メチャクチャ冷たい近くで大回転しながら落ちているエルザードは大変なことになっている。
(落ちてるってことは!落ちてるってことだよな!?)
そうその通りだ、同じこと2回も言っているけど結果的にはそういうことだ、つまり俺はこれから地面に激突してお亡くなりになる可能性がある。ちょっと待ってくれ!こんなにも早い終わりは嫌すぎる。
「エルザード!エルザード!!何とかしてくれ!」
下がまだ見えないことが何よりもの幸い俺は近くにいる大回転でぐちゃぐちゃな姿勢のエルザードを何とか掴んで、声をかけ続けるけど目を回してどうしようもなさそうだ!
「おいおい、待て!これが最後とかないでしょう!ちょっと待ってくれぇ!?」
こんなところで死ぬのか、記憶喪失してただ竜と一緒に話しながら洞窟探検して心がちょっとダメになってきたところで!?こんなところで!?もしそうならあまりに終わりが最悪すぎる、ちょっと本当に待ってほしい!!
「あ!マズイなんかそこが見え───!」
真っ暗闇でも数時間そんな場所にいればわかる。地面だあれは?!今度こそほんとほんとに終わりだと!そう思って俺は目を閉じて死を覚悟する。死ぬつもりなんてさらさらないけど、本当にこれはどうしようもないっ!
[プ────ヨォォォォン!!!!]
「!?うおおおおっ!?!!」
何かおかしい感触が地面と接触する俺の体に当たる。そして真横の空洞に弾き出される。何が起こったのか俺は全くわからないし、エルザードはどうなったか全然わからない、ただゴツゴツとした岩に当たっても、数秒息を吸って、吐いてー、して俺は自分が生きていると理解した。
「生きてる、生きてる!?生きてる!!俺は生きてるぞッ!!!」
喜びのあまり両腕を上げて、自分の生に喜ぶ。支離滅裂なこと言って喜んでいたと思うけどぶっちゃけこんな壊滅的な状況から生き残ったんだ。それはそれで大変に喜びたくなる。
「ウゴゴゴゴがああああ!痛っいノォ!?!!」
体をガタガタさせながらエルザードは起き上がる。どうやらエルザードは俺と違って本当に地面に激突してしまったらしい、しかもそこからピンボールのように少し跳ね返って壁に激突、でもさすがはヒトガタ形態でも竜、ありえないほど頑丈だ。その頑丈さを分けてほしい。もちろん痛いのは勘弁だけど。
「エルザード、無事か?」
「ぶ、無事。と言ってもちょっと痛すぎるがの。お主は何とも内容じゃな、良かった。」
「うん、何ともない。ほんとにすごい。一体何が起こって…!」
エルザードに手を貸して、起き上がらせてそう言うと、近くの何かが動いている感じがした。俺はすぐさま振り返ってその動いているものの正体を見極める。音からして何かしらの生き物だと思う、ただそれにしては何だか音が、
「ぴ、ピュイ?」
「………え?」
「ほう。」
警戒する俺の前に姿を現したのは、全身水のような液体が丸い形状を保った存在だった。
説明が下手くそのように思えるけど噛み砕いて特徴だけを掴むと本当にこれだけになる。
「ほほう、スライムか!!」
「スライム?スライムって有名な?」
「有名かどうかは知らんけどな、でも比較的害のない小型のモンスターじゃ。ほれ、意外に愛らしい見た目をしているじゃろう?」
エルザードはスライムの近くにまで寄り添い、その体をプニプニと押し始める。スライムはそれに対して嫌な感じを出すどころか、何だかエルザードになついているような感じたでしている。
「ピー!」
「おぉ、おぉなるほど懐っこいの。なに?おぉ、ぉそうか。」
「何、話しているんだ?」
ここでエルザード、お前スライムと話せたのかという疑問は浮かんだが、つまりそういうことじゃ案件だと思った俺はスルーした。
「どうやらこのスライムちゃんが、お主の落下を軽減してくれたらしい。偶然じゃったがな。」
「そうなのか!?それは、助かったことしてくれた。ありがとう。」
俺もスライムに近づいてそのまん丸ボディを少し触る。スライムは喜んでいるように小さく震えた。
「あぁ、我からも感謝を偶然ではあるが、ゼルを助けてくれてありがとうな。」
「ピィ〜。」
スライムとエルザードが戯れている間に俺はあたりを見回す、ここは大きな空洞というよりかは幾分か先に続いている洞窟まんまと下に落ちてしまったけれど、どうやら上に上がる必要もないように見えた。
「エルザード、俺たちはまんまと落ちてしまったわけだけど、この先にも道はある。上に上がらずこの先を行ってみないか?」
「うん、良いぞ!どうせなびげーたーなしの旅なわけじゃし。それじゃあ野生のスライムちゃん、またの。我達はこれからここを出るために進まなければいかんのじゃ。」
「ピー!」
俺たちが歩き出し再び洞窟内を進んでいく。ただ今回は少し違うようで背後に一匹ついてきているのがいる。
「エルザード、」
「わかっておるよ、我竜だからな。」
さっきのスライムが何やら俺たちの様子を伺いながらついてきている。これってもしかしてと思いながら、仲間になりたそうにこちらをみているっていうことなのかな?っとか思っている。
「どうする?」
「うーん。そのうち気にならないとはいえ、流石に放っておくのも気が引けるしな、」
そう言ってエルザードは振り返って歩き始め、スライムが隠れている場所に入って、両手でその丸い体を持ち上げながら俺の元へと帰ってきた。
「どうする?」
「それ、数秒前の俺の言葉な。」
「ピィー!」
「お主はどうしたい?」
「ピィ、ピィー!ピー!」
「なぬ?ついてきたい?」
エルザードはその言葉を口にした後、俺の方を見た。エルザードがなんか変な和訳をしているわけじゃないようだスライムからは本当についてきたいという強い意志を感じる。ただ鳴いてプルプルしているだけでも表現力はある。
「いいんじゃないか。ただあんまり実りのある旅だとは全然思わないけど。」
「ピュ、ピュイ!」
「なるほどな、どうやらこやつも外の世界に興味があるそうじゃ、我らが洞窟を出ることを聞いて、もしかしたらここから出れるかもと、それでついてきていたんじゃと。」
「そっか。お前もここから出たいのか、」
「ピー!」
「ふむふむ、ならば我らと一緒に行くか?」
「ピュイピュイィ!!!」
スライムは喜びながら飛び跳ねる。持っていたエルザードはそれにあたふたしながら対応するが、少し跳ねてそのスライムは落ち着きを取り戻した。
「よし、ならこれからよろしくなスライム。」
「おいおい、ゼルよ。何か忘れてないか?流石にスライムのままだと不便じゃろう?」
「……まさか、名付けタイム?」
「そう、その通り!というわけでもう決めてあるぞ!」
「早い!?」
「うんしょ!お前の名前はエルフルじゃ!!」
「ピィー!!!」
エルフル、エルザードのエルに、フルフル震えているからフル、なんてことは俺の浅はかな考えだけど、この竜ならあり得そうなネーミングだ。
「エルフル!それじゃあ行くぞ!いざ、まだ見ぬ日の元へ!!」
「ピィー!!ピー!!」
「、、っおい!?待って、」
二人のことに気を取られすぎて危うく置いていかれるところを何とか走り出して、追いつく。こうして俺たち二人のパーティにエルフルという新しい仲間が加わった。




