107話「落下」
エルザードと共に洞窟を進んでから多分数日くらいが経ったと思う、何で分かるのかとあうと、正直正確にはわからない。日の光がない以上今が朝なのか夜なのかなんてのは俺たちにはわからない。だから、疲れたら寝て、起きて進むをずっと繰り返している状況だ。
最初は向こう側に続く洞窟の道を進んでいけば簡単に外に出られるとばかり思っていたけど、やっぱりそう簡単じゃない。
基本的に殺風景だからエルザードとの会話が何とか外への希望を見失いための光となっていたことも正直事実。
「ゼル、大丈夫か?」
「あぁ大丈夫。ちょっと精神的に疲弊しているだけかもだから。」
「ふむ、そうか。喉は乾いとらんか?ご飯は大丈夫か?」
「そっちは大丈夫だ。洞窟内にある変に食べられる木の実で何とかなっている訳だし、」
「いや、そうじゃなくてお主のことじゃ。」
「ぁ、大丈夫だって。」
こう会話も変になってきた。
流石に進展もないように感じながらの前身は精神に堪える。だってそりゃそうじゃん、俺達はあと何日ここを進み続ければ出られるのか、俺達が進んでいる道は本当にこっちであっているのか、とかいろんなことが頭をよぎる。
エルザードがそのことで気にしてくれてないといいけど、こいつを連れてきたのは俺な訳だし。
「………よし、いくか。」
不安になっていても仕方がない。ここを出るって俺は決めた。ならやらないと記憶をしっかりと取り戻すんだ、ここを離れてそして絶対に外の目新しい世界を見にいく。
俺が進むとエルザードもそれについていく、俺の心境を察してからエルザードは雑談を始めて俺もそれにぼちぼちと答える。エルザードの長生きエピソードはこういう時ためになる。まぁ中にはもう聞いたことあるエピソードだったりがちょくちょく入っているけど、それよりないよりましだった。
そしてそこからまたしばらく進んだ時だった。
「なんかすごいところじゃのう。今までと違い、まさに絶壁、というよりかは狭いというよりか、、うーむ。」
「峡谷っていうんじゃないかこういうの?」
「おー!そうじゃ峡谷!!でも、下が見えんのぉ。」
エルザードは下を除くが、確かに何も見えない、ここから落ちたら一体どうなってしまうのやらっと怖い想像をした時だった。
「うきゃ─────」
「!!」
エルザードが足を滑らせて、峡谷へと真っ逆さまへ落ちて行こうとしていた。俺はその場面を目撃してそしてすぐに判断した。
「うおおおおぉっ!?!?」
「うぎゃああああ!!?!!!」
「ちょ!暴れるな!いきのいい魚かお前は!?」
「お主の方こそ!尻尾をあんまり強く握るなぁ!!!?」
エルザードが下へ落ちそうな時、ヒトガタ形態でもついていた尻尾を何とか掴んでエルザードの落下を阻止する、けどその尻尾はビチビチと動き始めて俺の顔を2回くらい殴った後、さらにビチビチといきのいい魚のように暴れ始める。
エルザードが尻尾はデリケートゾーンとか言っていたけど、今は背に腹を変えていられない!俺は暴れるエルザードと尻尾を何とか引き上げようと腰を使った時だった。
[ゴゴン!]
「ぁ、」
「ぁ…?」
『ああああああぁぁぁぁ!?!?』
足場がまるで小槌で叩いたかのような音を立てて砕け、尻尾を掴んだ俺と尻尾を掴まれたエルザードはそのまま真っ逆さまに真っ暗峡谷の中へと落ちていってしまった。




