106話「ヒトガタ」
エルザードと共に俺は洞窟の先を進み、外に出ることを決めた。洞窟はかなり広く竜が通れるほどの大きさのところだったり、俺みたいな人しか通れないところだったりと複雑を極めていた。
ただその道中もエルザードとの会話は絶え間なかったりと洞窟を奥へ奥へと進んでいくごとに俺たちの仲というのもしっかりと深まっていった。
っとスルーしたけど今さっき竜が通れないところって言ったよな、でもエルザードとはしっかり進んでいる。これってかなり矛盾してないかって今思っただから、紹介というか説明させてくれ、実はエルザードは。
「ジャンジャジャーン!」
「………ぇ。」
ヒトガタ形態になれる。背丈にして俺の肩くらい、外見年齢にして10代後半、髪はボサボサで目を見れば分かる通り竜特有の縦に切り込みが入ったような瞳孔をしている。
パッとみると、少女だ。そしてここで一つ俺びっくり、エルザードって、何と女性、いや雌なのであった。
「な、お主!我を男だと思っていたのか!?心外じゃ!我はれっきとした女ぞ!?」
「いやわからないって!竜の雌雄なんて俺に分かる訳ないだろ!?」
「いやいや分かるじゃろうて!それ、我だって自信ないけどそれなりに、それなりに………。」
エルザードは自分の胸の辺りを手でペタペタと触り続ける、が段々とその手はゆっくりとなっていき、いつの間にか沈黙へと置き換わる。
「分かるじゃろうっ!!!」
「ごめんわからない。」
多分あのことを言ったんだと思うけど、残念なことにエルザードの胸は絶壁だ。だから判別できないなんてことはない、顔はどうみたって少女だし、、ってそういうことじゃない。
「人間は、こんなこともわからないのか!」
「無茶いえ、じゃあエルザードも虫の性別パッと見でわかるのか?」
「いいや、全く。」
「それだよそれ!その感覚だよ、」
「なはぁ!?お主は我のことを無視だとぉ!?」
「そうは言ってない!あぁ、もうめんどくさいなこの竜!!」
その後エルザードと少し言い争いをして、落ち着いてまた話し始めた。
「それで、その衣装は?」
「ん、これか?」
エルザードはクルクルと回って、俺の前にだって堂々とドヤッとする。多分服を褒めて欲しいとかそんなんなんだろう、けど記憶のない俺にセンスを求めるのは間違っていると俺は思う。
「なんで、服が出てくるんだ。」
「そりゃあお主、我が全裸で出てきていいのか?」
「いや、よくない。」
「そういうことじゃ。」
「???」
そういうことじゃらしい。ぶっちゃけると明確な理由が欲しいけど、多分本人もわかってなさそうだからいいや。
「それで、この服はどうじゃ?」
「うん、うん。うん……。うん、うん!いいんじゃないか!?」
「ほんとかのぉ?!」
「あぁ、いいと思う!」
「そうかぁ、いいかぁ。へへへ、」
笑い方がなんか変だなと思うけど黙っていよう。
「そうだ!お前なんでヒトガタ形態になれるんだ!?」
危うく根本的な疑問を忘れるところだったので差し込むように聞いてみる。
「なんで?我くらいの竜なら人になれる魔術くらい使えるのじゃ。つまりそういうことじゃ!」
「な、なるほど。」
つまりそういうことじゃということが、最終的にはわかった。




