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【この残酷な世界で俺は生きている】  作者: 半分死体
チャプター1「メタモルフォシス」
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102話「新たな出会い」




 …………暗い。暗い。苦しい、悲しい、死にたい。


そんな思考が何回か脳裏をよぎった。ずっと悪夢の中に浸っていて、訳わかんない言葉ばかりが頭の中を駆け巡った。生まれる前に、辛いことをさせられて辛い現実を見せられて、やっとのことで生まれ落ちた。


赤ちゃんの気持ちを考えたらこんな感じなんだろう。頭骨を三つわり、母体の温かさとお別れをしてやっとのことで生まれ落ちる。ただその瞬間は泣きたくなるような痛さで包まれている。


あくまで例え話だ。俺がそんなことになってないのは一目瞭然だって俺は、、⬜︎⬜︎⬜︎だから。


 「─────。」


何かの明かりで目が覚めて、その光を見ながらボーッとする。長い夢を見ていたような感覚だ。ふと体を動かそうとする。


 「……。」


体は動く。おかしいな、動くことは当たり前なのに、何で動かないを前提に考えていたんだろう。いや、そんなこと考えている暇はないか、っと思って俺は手を地面につけて、上半身を起き上がらせる。


 周囲を見回してわかったことは、とにかく暗いこと。そしてその暗さを掻き消すような明るい光が目の前で広がっていること、光る石?鉱石とでもいうのかな、それが俺の目前を照らしている。


 (とりあえず)


で、起こした上半身からまた立ち上がる。一瞬フラッとしたけど、多分これは俺が立ち慣れていないから、普通そんなことないはずなのに、


 「ここ、どこだ?」


立ち上がって一呼吸おいて至極当たり前の疑問が通過する。誰に聞こえるわけでもなく、俺は口にする。おかげで答えなんかないんだなってことが理解する。自分一人でわからなかったら誰かに聞くって言うのが、普通。だったような気がするし、でもそう考えたらいくつも疑問が出てきた。


 「俺は、誰だ。」


自分の両手を見て思う。まるでそれは他人の手を見ているような気がした。自分とは違う誰か、でも自分の手であることは明らかでーー、ってやっぱりわからない。


自分の名前も、わからない。自分の全てがわからない。これっていわゆる。


 「記憶喪失。」


そう、どっかで聞いたことある言葉だ。自分に関する記憶が頭から抜け落ちて、その代わりに常識的なことは覚えている。ってやつだ、多分。


確証がないのは、まぁ自分が記憶喪失だしー。それに自分自身誰か全くわからないわけで、どこで生まれたーとかどうしてここにいるーとか、全くもってわからない。わからないことだらけだ。


そうなると、疑問が浮かんだ。


 「…………俺は、何するんだ。何のために───。」


 『う、うぐぅぅぅぅん……っ!』


 「!?」


この空間全体に聞こえるような呻き声、いや鳴き声みたいな何か。俺は正直驚かざるおえない、そりゃこんな真っ暗闇に何かの気配なんてしなかったし、何なら何か俺以外のやつがいたとしてもそりゃ目に見えない小さい生物、、あー何だっけそう言うの!!全然思い出せないけど、そう言うのとか。そうだ!虫だ、虫!そんなのしかいないんじゃないのか!?


でも他の奴がいるってことは。


 「───っ!」


身構える近くに武器なんかはない。何なら俺の服装ってほんとボロ布とボロ服だし。なんでこんな服着てるんだって!そんなことわかるわけないか!!でも、もしこれが俺の敵になる奴だったら俺はどうしたらいい!戦うしかないのか!?


 『ぅぅぅぅおおおおっううぅん!!』


またさっきの変な鳴き声が聞こえた。ズゴゴゴとか変な音が辺りから聞こえる。もしかしなくても、この洞窟が鳴いてる、、なんてあるわけないか!!でも見た感じそんなふうに聞こえる。いやちょっと待て、なんかこの世界はそういう常識鵜呑みにしないほうが良かった気がする!ならそうするか!今信じられるのは自分の体と直感のみだ!!


 「……誰だ、誰なんだ!?」


とりあえず最初は対話から入れって誰か言っていた。顔も名前も知らない母親かもしれないし、いたかどうかもわからない友達かもしれない。でもこれって明らかに格下が格上にやる方法じゃないよって、やっぱり俺がここで行うべきことは戦闘!?


いや、まて冷静になれ。先制攻撃したって俺のパンチじゃどうにもならんわけだし、そもそもこの鳴き声の主がどこにいるのかわからない、だから対話は方法として正解のはずだ!きっと!!


 『うにゃむ、うにゃーーむ。うん、うぅぅん?む?お、!』


 「お…?」


 『おーー!!!』


ドズンドズンドズンドズン!!って音が聞こえる聞こえる。なんか騒がしい、そして何この地ならしみたいな音!?いやぁーー!!なんかわからないけど助けてくれ!!


 『お主!お主!!目が覚めたんじゃな!』


 「っ!あ、え?」


声がする方に耳を傾ける。鳴き声と同じような声、もしかしてさっきの声の主か、しかも何だか対話できそうな感じだ。声色から良心的な感じするし、俺の心配してくれてるような、感じするし。


 「ど、どこにいるんだ、誰なんだ!?」


 『んん?ああーそうか、人だと我の姿は見えないか。不便じゃのう、闇夜でも目が利かないというのは、あいや。我と一緒だと変化流石に。よっこらせ、』


 [ズゥン、ズゥン、ズゥン、]


一歩一歩こっちに近づいてくる音が聞こえる。音でわかる、きっと相手は人じゃない。人の一歩一歩がこんな地面を揺らすようなものじゃないからだ!それに、さっき人と対比して自分のこと言っていたってことは、少なくとも人じゃないよね!


じゃあ何が近づいてきているんだって、そう思って俺は音がする方に顔を向けて向こう側の暗闇からこちらに向かってくるその存在を確認した。


鋭い爪、鋼のような鱗、見上げても全容がわからないような大きな体、恐怖さえ覚える喉を鳴らす音、以前暗いこの空間でも輝き光るその瞳、生物にとっては極上の両翼これは曰く。


 (───ド、ラゴン。)


思わず呼吸を忘れるほどの恐怖に包まれる。相手は差し詰め像でこっちはそれに睨まれているアリとでもいうんだろう。おかげで俺はその姿に硬直したまま、ドラゴンがゆっくりと目の前に顔を近づける間、何も反応できなかった。


本来なら、逃げるだの、何だのできた時間はあったというのに。


 「…………ん。」


 「─────。」


 「傷は大丈夫そうじゃな。」


 「──────。」


 「落ちてきた時は何事かと見てみれば全身ボロボロの傷だらけ、我の力を持ってしなければ死んでいただろうな。」


 「──────。」


 「む?おーい、聞こえておるのか?」


 「──────クゥアアッ!?」


 「うぉっう!?」


あまりの衝撃と情報量の多さに真白フリーズ状態数秒間。そしてその末に俺はやっと目が覚めて変な声をあげて、びっくりして大きく飛び上がりながら後退り、そんな奇行を目にしたかのように目の前のドラゴンも首を上げ驚く。


は、は、は、、、落ち着け。落ち着いて、理解しよう。


 「すぅ、、、。その、えっと───。」


 「うん。」


ドラゴンは目を丸くしながら俺の一挙手一投足をじっと見たまま、その場で答える。

俺はその物分かりの良さっていうか、声にまた驚く。ただ、今度はファーストインパクトほどの強さはない。


だから、慌てず、落ち着いて対処する。一つずつ、なぜならそれが良策のはずだからだ。


 「………えと、変な質問かもしれないんだけど、」


 「うん。」


 「さっきから、俺に答えてくれていた声ってお前、なのか?」


 「うむ、いかにも。」


 「そうか、そうか、えーーと。それで、お前は、、ドラゴン?」


 「うむ!いかにも、我はドラゴンだ。」


 「変身しているとか、人とかそういうんじゃない?」


 「そういうのではないな、あ。人にはなれるぞ!我、意外とすごいだろう?」


 「あ、ぁ。すごい、」


何がすごくて、何でそうなっているのか全くわからないけどとりあえず頷いておこう。ややこしくなりそうだから。


 「そうだろうそうだろう!」


 「えっと、それじゃあまた質問。その、今までの踏まえた上で、お前は……誰なんだ。」


 「我か!我はな!!ふふん、聞いて驚け!!我は聖刻竜エルザード!遥古から存在するレッキとした、太古竜じゃ!!!」


 「エル、ザード。」


 「あぁ、聞いたことなくても無理はないぞ!なんせこれは我が自分自身でつけた名前なんじゃ!かっこいいじゃろう!!おと、違った、くぅあっこいいじゃろう!!!最近の人間はこういうふうに緩急とか大雑把にいうじゃよな?よな!」


 「あぁ、うん。たぶん。」


 「そーかー!!良かったぁ、我変なこと言って時代遅れとかなんぞや言われたら恥ずかしくてあと数百年は眠ってしまうからのーー!!」


 「は、はは。そう、なんだ。」


思わず答えたけど、正解だった。さもなくばこのどデカい割に心がか弱い竜は俺の言葉で不貞寝してしまっていただろう。そして眠っている間に、俺は訳もわからず一生を終える。そんな未来がよぎった、あぶない。ていうか、眠るって単位が全然違う。人間は数十時間なのに、百年って、よくそんな眠れるな。


 「それでだ、お主。お主は何という名前なんじゃ?!」


 「え、俺?」


 「そうじゃ、我に聞いたのだから、お主も答えぬと無作法という奴じゃろうて!ほれ、はよう教えておくれ!!」


 「え、いやぁ。その、、」


 「ん?何じゃなんじゃ?」


 「………俺、実は自分の名前がわからなくて、、」


隠しても意味ないとわかっているなら正直に話す。この竜は何かの弾みで変な方向に転がる。そんな予感がしたからだ。


 「…………な、なななナンジャってぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」




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