三年寝太郎
三年寝太郎という民話をご存じでしょうか?
舞台は長門の国、今でいう山口県の厚狭の里から始まりました
その村に何もせずにそれはそれはよく寝る若者が居たそうで、村人達から「寝太郎」とあだ名されていたそうです
この若者が三年三月寝たことから三年寝太郎と呼ばれた話です
しかし、ええ若い者が何もしないで三年三月寝るなんて・・・
よっぽど恵まれた家なんかな?
なんて思っていたらお父さんは庄屋さんとか・・・そりゃ金持ちですわね
そしてお父さんは息子を溺愛していたらしい・・・過保護やな
でも、そういう裕福な家の駄目息子は、周りから余計にけちょんけちょんに言われますよね
それが金持ちと庶民の関係を物語る世の常です
ここで一つ疑問があるのです
民話なのでそこまで細かく書く必要も無いのかもしれませんが、この寝太郎さんとやらは食事とトイレはどうしていたのでしょうね?
まさか飲まず食わずのまま布団を離れなかったわけではないでしょうしねぇ
この寝太郎さんは三年三月寝たらむくっと起き上がって、お父さんに千石船を作ってくれとお願いしたそうです
次に船が一杯になる量のわらじを買ってくれと、さらにその船の漕ぎ手を八人雇ってくれともお願いしたそうです
お父さんは、困った困ったと言いながらも全ての願いを叶えたそうですが、理由を聞いたとは一切書かれていません
そんなこと普通ありえます?
そして寝太郎さんは何も告げずにわらじで一杯になった千石船を出航させたのです
航海計画ぐらい提出してもええのと違いますかね?
これじゃあ出航許可は出ないでしょう?
この一連の動きを見ていた村人たちは正気の沙汰じゃない!と言う
当たり前です
それが普通です
そして四十日後にふらっと帰航してきたとか・・・
その千石船にはボロボロの擦り切れたわらじが積まれていたとか
寝太郎さんはそれを洗う桶を作ってくれとまたお父さんにお願いしたとか
お父さんはまた理由も聞かずに願いを叶えてあげたとか
寝太郎さんはさらに手の空いている百姓衆を集めてほしいとお父さんにお願いしたとか
お父さんはまた理由を聞かずに願いを叶えてあげたとか
で、その桶に水をはって、持って帰って来たボロボロのわらじを百姓衆に洗ってもらった
さて、ここからが英雄伝説に変貌して寝太郎さんは神としてあがめられるまでになりましたね
まっさらのわらじを持って佐渡島へ行って、島民の古いわらじと無償で交換してあげた
その古いわらじを桶で洗ったら砂金が桶底にてんこ盛り沈殿していた
そしてその砂金の利益で川を堰き止め、灌漑水路を整備して豊かな水田をいっぱい作り百姓衆に寄贈して村は潤ったというお話ですね
この話がうまくいったのは寝太郎さんの奇抜なアイデアであることは読み取れるのですが、もう一つとても重要なことがあると考えます
それは・・・
このお父さんあってこそ!ですよね?
お父さんが庄屋のため裕福で寝太郎が三年三月寝ていたとしても生活に影響がなく困らなかったこと
そして、お父さんが過保護の極まりで、寝太郎のお願いを理由も聞かずに全て叶えてあげたこと
ここで、寝太郎の願いをすぐに叶えてあげられたのはそれだけの財力があったことも読み取れますね
つまり、「大金持ちの過保護である人」がいたため成立した話ではないでしょうか?
この環境が無ければこの話は成立しなかったのではないでしょうかね?
どちらも強運な主人公の話ですが「わらしべ長者」とは少し違っていますよね?
しかし、これだけの条件が揃った家に生まれながら、このアイデアを考えるのに三年三月もかかったのですから、寝太郎さんは抜きんでたアイデアマンであったかどうか・・・判断が難しい私です