隣の魔法学園 水の魔法使い
我が家の隣りには魔法学園がある。
波長の合う学生や物が、我がマクルシファー家にやって来る。
今日、やって来た学生は興味深い乗り物に乗っている。
どこであれを手に入れたのだろうか?
水の扱いも秀逸だな・・・
仲良くしちゃうかな!
広い! 家庭菜園とか詐欺じゃん。わたしは、木馬の上でため息をついた。
バイト料も安いし・・・でも学園の三階から見下ろしていた庭は狭かったんだよなぁ・・・
「やろう」と気合を入れて上昇した。
水魔法の時間に、習った様に頭上に水のかたまりを作る。次にそれを細かく、細かくして行く。
小さくなったものを順に下に落として行った。
冷た!! なにこれって・・・ドジった。間抜けだ。
上に作った水を落とすと自分が濡れるって当たり前じゃない。
わたしは涙と水に濡れて水やりを終えた。
次は自分の下に水のかたまりを作ろう。
だけど、思いのほか早く水やりは終わった。やるじゃんわたし。
風でざっと服を乾かして、家のまえにやって来た。呼び鈴を押して待っているとドアが開いた。
想像と全く違うものがそこに立っていた。
「学園から来ました。水やりが終わりました」
「あぁご苦労様」といいながら、その人はわたしが差し出した書類に確認の署名をした。一瞬の動作だった。
え?と思ったときにはもう書類の記入は終わっていた。
わたしは返された書類を学園から支給された収納に差し込んだ。
学園に戻って、学生課に書類を提出してバイト料を貰った。
わたしは、山奥の村で生まれた。なぜか魔力があった。魔法も使えるが、なんせ山奥。教えてくれる人がいない。村には魔法の本もなかった。ただ、わたしの魔力を珍しがった村人は我が家にやってくると魔法で猫を探してくれだの、膝を治せだの、牛がしょんぼりしてるから原因を聞いてくれとか言って来てうるさかった。
「どうやるの?知らないわよ!」と言ったら
「もう、いくら魔法が使えてもまだ子供だな」と仕様のない子を見るような目つきでわたしを見ると
「魔法を使うんだよ。魔法。わかるね。さっやってごらん」
魔法でこいつら消してやるーーーーと思った。
猫はなんとなく気配を探して、居場所を見つけたと思ったら、後ろからついて来ていた飼い主が
「ねこちゃーーーーゎん。心配したのよーー」と言った途端に猫がまた逃げ出して木に上った。
猫は結局
「あんた、なにするの?」とわたしに怒鳴りながら、すごい速度で追いかけた飼い主が捕獲していた。
「最初から自分でやれよ」と言いたかったが
「やっぱ、魔法はすごいね」とお礼に肉。くれたから、良しとした。
膝はねぇ。なんでもいきって壁蹴ったら、曲がったそうで・・・反対にね・・・そこまで曲がるってすごいよね、治すより直そうと、思い切り反対に曲げてから伸ばして真っ直ぐにして、日にち薬を渡して、三日に一度、よしよしってさすりに行ってたら、ひと月ほどで治って、どっちにも自由自在に曲がる優れものの膝になった。
「これくらい自分で出来るだろう」と思ったが、行くたびにくれるドライフルーツが美味しかったから、良しだ。
牛は失恋だそうで、しばらく一緒に過ごしたら気持ちが落ち着いたようだった。
「あーー魔法は凄いね、牛の気持ちがわかるなんて」と感動の面持ちで言われたが、ただ、話をしただけだ。
「それくらい自分でやってよね」の言葉は貰ったチーズに免じて飲み込んだ。
今日は、村はずれのドワフさんがやって来た。
なんでも、石を溶かして金属を取り出そうとしていて、火傷をしたとか。
ドワフさんのおうちは大きな煙突から煙が出ていて、トンッカンドンとか音がして賑やかで楽しい家だ。
とりあえず、まだ煙がうっすら出ている腕を砕いた氷を混ぜた水で冷やした。
あっと言う間に氷が溶けてしまったので、腕を氷で固めた。
日にち薬を渡して毎日、散歩がてらよしよしってさすりに行った。
季節が変わる頃にやっと元通りになったが、これくらい時間をかければなにもしなくても、治ると思う。まったくドワフさんは甘えんぼだ。
ある日、ドワフさんが袋を持って訪ねて来た。
「エリちゃん、お礼にこれを作ったから、遊んでくれ」と袋から取り出したのものを、ドワフさんは組み立てた。
えっと見ていたら
「これは組み立て式だ」と言ってバラバラに戻すと
「自分で組み立ててごらん」と言ってわたしを優しく見た。
「・・・」
わたしは、パーツを持ってこうかな?穴とかないよと思っていたら
パーツはピタッ。ピタッと吸い付いてくっついた。
木馬が出来た。木馬?金属だよね。ドワフさんは鍛冶屋さんだし・・・
「ありがとうございます」ととりあえずお礼を言った。別に欲しいものじゃないけど、くれたし・・・
「これは治療してくれたお礼だ。乗って空を飛んで遊んでくれ」
は?飛ぶって言った??
「またーーエリちゃん、わかってないなぁ、魔法で空を飛ぶんだよ。俺は魔力がないだろ。魔法を使えないから飛べないけど、エリちゃんは飛べるから、ちょっと乗って、飛んでみて」
はーーーーー?殺す気???
笑顔のおじさんは
「ほらほら、遠慮しないで、どんな風に飛ぶか見たいし」と言ってわたしを抱えると木馬に跨らせた。
たてがみが、なびいた様に見える取っ手を持つと飛べるとわかった。
木馬は垂直に上昇した。おじさんの頭より上でじっとしてる。
「すごいな!エリちゃん。さすが魔法だ」とおじさんが褒めてくれた。
わたしはこの木馬にメリーと名をつけた。
まぁいい人たちだよね。魔法が全てを解決すると思っているだけで・・・
そして、呆れたことに村のお金をかき集めて、わたしを魔法学園に入学させてくれた。
送り出す時に
「アクエリー、いいか。しっかり勉強して上手な魔法使いになって幸せになれ。ここに戻ろうなんて考えなくていいからな・・・アクエリーはみんなの誇りだ。
元気でなーー気をつけてなーーー」
こう言って見送ってくれる彼らに手を振って村からの一本道を歩いて大きな街道に出た。
それから乗合馬車に乗ってわたしは王都についた。
そして魔法学園に入学した。
学費や必要経費は村が払ってくれたが、おこづかいを稼ぎたくてわたしはマクルシファーさんの家庭菜園で水やりを始めたのだ。
門を出るとき振り返って
「やっぱ、おかしいよね」と呟いてしまった。だってここから見えるのは普通の家庭菜園だよ。
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