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24.前田と疑惑の判定

 ほどなくして、玉座の間のフロアに転移用魔法陣が発生した。シルフィーナ曰く「乗って大丈夫ですわ」とのことだ。


 ピラミッドの地上部分、落とし穴になった部屋に出る。

 床は元通りだった。最初にはなかった石の棺が鎮座している。


 細い通路の先に棺の置き場。まるで玄室だ。


 ギャル美が日サロで室内を照らしながら首を傾げる。


「あれ? なんか普通くない? マエセンどうよ」

「石棺がおかれていますし、来た時と明らかに室内の様子が違っています。普通なことに違和感を覚えるんですか木柳さん?」

「あーね、逆に」


 スッと神官戦士が踏み出して、水色の髪とたわわを揺らした。見てはいけない。


「前田様。わたくしのどこを見てからそっぽを向いているんです? いちいち恥ずかしがられる方が迷惑ですわ」

「失礼しました」

「前田様の評価査定に入れさせていただきますわね」


 いったい何の査定!? どうやら私はシルフィーナポイントを減らしてしまったらしい。

 自己防衛のために視線をそらしても怒られるのは理不尽の極み。誠に遺憾である。


 神官少女は部屋に出現した石棺を確認すると――


「遺物の取り出しに成功しましたし、この遺跡はもう危険ではなくなりましたわ。先代勇者様の封印も消えて一段落ですわね」


 安堵の息そのままに、彼女は続けた。


 遺物にもランクがあるという。通常のダンジョンでも発見され、教会がそれを解析することで王国の魔法文明は発展してきたとのこと。


 が、恩恵ばかりでもない。遺物は危険もはらんでいた。強力なものになると、それ自体が何かと結びついて、時に迷宮すらも生み出してしまう。


 エルゲート遺跡は古代の王と水晶ドクロによって迷宮と化した。勇者タカシはそれを封印。これからの探索では、同様の遺物迷宮攻略をしていくことになるだろう。


 と――


 1000年前に、魔王インドーアから支配の王錫を奪った勇者は、きっと同じようにどこかに隠したに違いない。


 それが光輝神教会の考えだそうだ。

 疑問が浮かんだ。


「あのシルフィーナさん。どうして先代勇者タカシは封印という手段をとったのでしょうか? 遺物を破壊してしまえば良かったのでは?」

「当時の勇者様のお考えを残した記録はありませんわ」

「はあ、そうなんですね」


 疑うつもりはないのだが、つい組織的隠蔽をしているんじゃないかと勘ぐってしまう。

 シルフィーナはまっすぐな眼差しを私に向けた。


「ここからは、わたくしの想像になってしまいますけれど……強力な遺物を壊してしまうのはもったいない。かといって、間違った使い方をする者の手にも渡すわけにはいかない。そこで、光輝神が認める次の勇者のために、遺跡などに封じたのではないかしら?」


 やっぱり違和感あり。あくまでフィクション。日本におけるゲームやアニメや漫画などの話になるのだが――


 宗教、悪役や黒幕にされがち説。


「封印などしなくても、当時の光輝神教会に預ければ良かったのでは?」

「ええと……き、気づきませんでしたわ♪ きっと何か、やむにやまれぬ理由があったのでしょう」


 シルフィーナが目を細める。が、奥の据わった瞳は氷よりも冷たい。勘の良いお前はあとで殺す。みたいに思えた。


「そうですか。シルフィーナさんでもうっかりすることはあるんですね」

「わたくしを評価していただいていると、好意的に受け取っておきますわね。ひとまず外に出ましょう。というか、もうすでに脳筋ゴリラが一頭、先に行ってしまっていますけれど」


 気づかなかったが、アリアドネが通路を抜けて外からこちらに手招きしている。


「三人とも早く来い! 宿場の町に戻って宴にしよう!」

「うぇーい。なんかワンピっぽい」


 あ、いや、ええとあの……。上衣とスカートが一繋ぎになっている衣服の総称だから。たぶん、違うけど。


 ギャル美が楽しそうに歩き出す。私とシルフィーナもそれに続いた。


 さて――


 メタ読みすると、教会が私に蘇生費用をふっかけて、勇者ギャル美をコントロールしつつ、遺跡に封印されるレベルの強力な遺物を回収させている……って、ことかもしれない。


 かといって、現状では教会のサポートは必須だ。


 旅をするのに教会の上級神官戦士が随伴ずいはんしているというだけで、色々と便宜べんぎをはかってもらえるし、人々からの信頼も得られる。


 遺物迷宮のことだって、シルフィーナからもたらされた新情報だ。


 すべてを鵜呑みにはできない。かといって、この世界で手探りはしんどい。


 異世界の一般常識程度なら、アリアドネ経由で得られはするだろう。


 ……いや、彼女は変態なので、それも怪しいか。


 今は面従腹背めんじゅうふくはい。表向きだけはきちんと取り繕っておこう。ギャル美は人を信じることで人の心を開くことができる。


 誰かを疑うのは、大人である私の仕事だ。


 外まであと少しというところで――


「な、なんだ貴様は!? こ、こっちに来るな! 来るんじゃないッ!!」


 女騎士の悲鳴じみた声が森に響き渡った。


 本当にトラブルにだけは事欠かないな異世界って!!

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