23.ギャル美と遺物(レリックス)
で、私と二人がわちゃわちゃするのを、怖い上級神官戦士が氷の眼差しで見つめてくる。
「前田様? もしやこの勝利をご自身の功績などとは仰いませんわよね?」
「え、ええと……もちろんです。我々パーティー全員で勝ち取ったものでしょう。それぞれができることに全力を注いだ結果ですから」
水色のショートボブが左右に揺れる。
「ほぼほぼ、勇者様の功績ですわ。ワイトキングが言うには、総兵力10000体だったというではありませんか? そのうちの97%近くを勇者様がたったお一人で沈め……鎮めたんですもの」
「うぇーい」
特に誇るというでもなく、功績をたたえられたギャル美は私にギャルピース&ウインクだ。
「本当に助かりましたギャル美さん。ありがとうございます」
「マエセンもがんばってボス追い詰めたんだし、もっと胸張りって」
手本を示すようにギャル美がぐいっと胸を張る。
ブレザーの上からでも揺れるほどの、はちきれんばかりのぶるんぽよんだった。
さて――
本題に戻ろう。というか、信号機トリオが揃うとなかなか話が前に進まない。私が舵取りしなければ……年長者としての務めだ。
「ワイトキングはどうします?」
シルフィーナが目を細めて骸骨の頭部をブーツの底でぐいっと踏む。
「ぎゃひ!?」
「伝承によれば遺跡の主は遺物の守護者といいますし、倒して回収しましょう」
「でしたら私に一つ試させてもらいたいんですが……」
「あら? 前田様のお考え、少し興味がありますわね」
ワイトキングの頭をいつでもぶち抜ける姿勢のまま、神官少女が足を外した。
「ひい! お、お助けぇ!」
私はワイトキングの脇にうんこ座りする。
「私の破壊スキルがアンデッドに有効かどうか、試させていただきますね」
左手で顔面を鷲づかみにして発動……破壊スキル! 慈悲はない!
こいつは私とアリアドネを殺して供物にして自身の配下に加えようとしたのだ。
覚悟の準備をするのは死霊王の方である。
「ひいいいいいいいいいいいい!」
情けない悲鳴をあげる骨男……だが。
「なるほど……破壊できない……ですか」
魔王が操る傀儡は破壊スキルで撃破可能だったが、アンデッドは違うとなると生物と非生物を分ける境界線というか、私の破壊スキルのラインがなかなかの微妙だった。
単純に生きていないものというのでもなさそうだ。
金髪ツインテールがケモミミよろしく楽しげに揺れた。
「マエセン失敗してて草」
「いいですかギャル美さん。人は失敗から学ぶものです」
「それな」
わかってくれたのか、流されたのか。
シルフィーナがメイスを振り上げる。
「では粉々に砕いてしまいましょう♪」
ほんとおっかない女。
破壊スキルを試みた自分のことを棚にあげつつ、そう思う。
ガンガンに白骨を粉砕するシルフィーナ。だが――
「カーッカッカッカ! この程度で我は滅びぬ! 王の支配は絶対不滅なのだぁ!」
死霊王は蘇生というか復元してしまった。
ガンガンガンガン。
復活復活復活復活。
何度かやりとりが無言で行われたあとで。
「すみませんもうやめて許して殺してぇ」
ワイトキングが泣きながら詫びをいれた。一方シルフィーナはといえば。
「困りましたわね。何度でも甦るだなんて。前田様、なんとかしてくださいまし」
「私がですか?」
「異界の叡智をもって、かの者に永遠の安息をお与えくださいな」
「ギャル美さんの日サロではダメなのでしょうか?」
ギャル美は「あーね、これでだめならだめですね」と、そこにないならないですね理論である。
赤毛の女騎士が「では私がやろう! 炎剣! 破ッ! なにぃ再生するだと!? 炎で焼いて無理なら無理だ!」と、二行以内で収まるムーブでお手上げモードだ。
王は不滅……か。
「では、とりあえず副葬品から破壊してみましょう」
「はひ?」
間抜けな声をあげた死霊王。その杖をまず破壊。継いで美しい色合いながらボロボロになったマントを破壊。最後に雄クジャクの尾羽のような冠を破壊した。
本体には無効でも、装備品破壊はできるようだ。
かくしてワイトキング改め、普通の白骨男のできあがりである。
「王でなくなった気分はどうです」
「は、恥ずかしい! 我をおとしめるか!」
「その姿ではもう誰も王とは思わないでしょう。それに、君の国も民も今や存在しません。戦士たちも帰るべき場所へと帰りました」
「うう、うああああっ」
嗚咽をあげたワイトキングに向けて――
神官少女がメイスを振り上げた。
「では、これにて……さようならですわ」
手慣れた手つきで白骨を粉砕。すると、粉々になった骨が再び一つに集まって……骸骨型の水晶玉に変化した。
「あら、本当に上手くいきましたわね。少しだけ見直しましたわよ前田様」
「いえ、偶然ですよ」
普段手厳しい人に褒められのって、悪くない。
宙に浮かび上がった水晶ドクロをギャル美がキャッチする。
「うぇーい。遺物ゲット……みたいな?」
神官少女が「支配の王錫ではありませんけれど、まずはよかったですわね」と安堵の吐息を漏らす。
赤毛の女騎士は「よくわからないが売ればいいお金になりそうだな!」と、鼻息荒い。いや、売らないというか、私の蘇生代金の足しにするんだが。
ともあれ、こうして、私たちは最初の冒険を終えて無事、遺物の回収に成功したのだった。




