17.ギャル美とエルゲート遺跡
修行を一通り済ませた私は、あれから森の魔狼くらいなら剣で倒せるようになったのだ。
シナガンの町の教会でレベル鑑定を受けたところ、レベル2になっていた。
五日間、不眠不休とはいわないが結構がんばったんですけど……レベル一つしか上がらないのかよ!
ギャル美の「あーしも実戦で鍛えたし。練習じゃバイブス上がんないじゃん?」という言葉もあって、エルゲート遺跡に挑むことになったのである。
バイブス――テンションが上がればなんでもできるギャル理論万能説。
そんなこんなで――
遺跡に到着。
アステカにあるようなラテンアメリカ系のピラミッドが、森の奥に祠のようにひっそりたたずんでいた。
地上部分にあるピラミッドはあくまで入り口でしかない。
ピラミッドの中は真っ暗だ。採光窓さえもなく、本当に真っ暗。
通路が奥へと続いていた。
私は背負い袋を降ろす。
「ちょっと灯りが欲しいですね。確か……ええっと……あったあった」
テレレテッテテ~! 魔力灯~!
安価な魔晶石の交換式で、火を使わずに周囲を照らすことができる。
光量調整も可能な上、オンオフも簡単だった。
ほぼほぼLEDランタンと同じように使える優れものだ。
これを右手に持つと剣をとっさに抜けないため、背負い袋のサイドベルトにぶら下げた。
「みなさん、備えあれば憂い無しです。ダンジョン探索ですから、灯りは必要でしょう」
神官少女が呪文を唱える。
「追従魔光ですわ」
シルフィーナの周囲にぽわっと大きな光の球体が浮かんだ。
あ、はい。
けどほら、上級神官だったからでしょ。ギャル美は勇者で強いけど、いやだからこそ、こういったサブスキル的なのは苦手なはず。
「ちょっとここ画像暗くない? 加工いれとく?」
ギャル美が虚空でシークバーのようなものを動かすと、暗闇が晴れていった。
なんというか、画像加工でブライトネスを上げてる……のか?
「うはー! めっちゃ映えんじゃん♪ うぇーい」
魔力灯とか魔法の光で照らすとか、そんなレベルじゃないぞ。
さすがに女騎士は脳筋ゴリラなので、灯りは出せないだろうな。
アリアドネが剣を抜いた。
「炎剣ッ!! 破ッ!!」
刀身に炎をまとわせる。簡易松明だった。
私の努力や気配りを一蹴するじゃないか君たち。
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ピラミッド内の広さや天井の高さは外観よりも狭い。通路の奥の石室に到着したが行き止まりだ。
シルフィーナが内部の壁画を光球で照らしてため息をつく。
「冒険者たちがこられるのはここまでのようですわね」
私は左手を床につけた。
「では、一旦床石をくりぬいてみましょうか」
スチャっ……と、神官少女がメイスを構える。トゲトゲが私の頬にツンツン刺さった。地味に痛い。
「前田様。遺跡は重要文化財。保護対象ですので、むやみに傷つけるような真似は許しませんわ」
「そ、そうですよね。いやはや、私としたことが失礼しました」
チッ……せっかく破壊スキルを建設的に使えるチャンスだったというのに。
「では、やはり木柳さんに封印を解いてもらうしかない……と?」
「それが賢明ですわね。下手に遺跡の一部を破壊して、正規ルートが埋まってしまったり、罠が発動する危険性もありますし」
「これまで他の冒険者たちが無茶しなかったんですか?」
シルフィーナはメイスのシャフトを手のひらでペチペチした。
「未登録のはぐれ冒険者ならいざ知らず……そのような違法行為で遺物を手に入れた者たちが、幸せに余生を過ごせたという話は、わたくし耳にしたことがありませんわ」
悲鳴は聞いてそうだな。犯罪者の。
ギャル美に向き直り訊く。
「ということで、何か封印を解く心当たりはありませんか木柳さん?」
「ちゃけばなしよりのなしで」
ぶっちゃけてしまうと、ない……か。
ギャル美のギャルスキルは、コミュニケーションによって発動するようである。
「たとえばほら、開けゴマみたいなギャル語はありませんか?」
「あーね、そこにないならないですねぇ……みたいな」
該当無しか。
「なら木柳さんがいっそ作ってみてはどうでしょう?」
「それな。あけみざわあけみみたいな」
石室の床に光る魔法陣がぶわっと浮かび上がり、壁や天井の壁画に映像が投影されて、それはそれは絢爛豪華な古代神話のアニメーションが、プロジェクトマッピングされると同時に――
床石がパカッと割れて、我々は闇の底へと堕ちていった。
「うわあああああああああああああああああああああああああッ!!」
私の情けない悲鳴が響く中――
「マエセンこれシーのタワーオブテ……」
「やめましょう木柳さん!」
こんなやりとりができるくらいには落下したけど、これ……地面についたら死ぬんじゃないですかね?
というか入り口を落とし穴にするなんて罠すぎるじゃないか! エンタメに振り切れてんの? なんなの異世界!?




