1.ギャル美と光輝神イルミナディオス
学校から帰る途中、渋谷のスクランブルでいきなり目の前が真っ白になって焦る。
世界ヤバい。なんか光ってる奴がいた。ウケる。光りすぎっしょ。クリスマスのイルミネーションかっての。
「我は光輝神イルミナディオス」
「うぇーい」
「この溢れ出る陽の力。木柳留美で間違いないな?」
「初対面で、あーしの名前知ってるってキモい」
最近の不審者、派手すぎじゃん。通報しよ。
「えっとぉ、110番? マストで」
「ま、待て待て待て! スマホを使おうとするでない。というか、この空間は外部から遮断されている」
「マ? あっ……電波死んでっし」
「落ち着いて聞くのだ、木柳留美よ」
「ネイル予約してるんですけど?」
「5分! いや! 3分くださいお願いします!」
キャッチで草。光るオッサン、顔はのっぺらだけど、だいぶキャパい感じ? 必死じゃん。
「えー、コホン……異世界アルカナリアは今、危機を迎えようとしている」
「あーね、厳しい戦い」
「その通り。窮地にあるのだ。なぜなら――千年前に伝説の勇者タカシが封印した魔王インドーアが、復活を果たしたのだから」
「ちょ、タカシ草。あーしのパパと名前被ってるし」
異世界とか急に言うじゃん。こいつ、なんなん?
「インドーアはまだ完全体ではない。だが、もし力を取り戻せばアルカナリアに住まう人間たちは、魔王とその配下の魔族によって、たちまち蹂躙されてしまうであろう」
じゅう? え? なんて?
「もっとわかりやすくよろー」
「世界やばい助けて」
「なんであーしなの?」
「陽の力がレベチ……いやレベチ超えてエグチ」
「エグチ、マ? りょ」
「即決!? 了解ということでいい……のか?」
あーね、最初っからそう言えばいいじゃん。ね?
変な間。か~ら~の~。
「というかフッ軽か? ええと、もう少し悩むかと思っていたんだが……」
光る不審者、逆にビビってるっぽい。うぇーい。
「だって、あーしじゃなきゃ勝たんのでしょ?」
たぶんけど、適材適所? みたいな。
「なんと話の早い……お主、理解力が神か?」
「それな。つーかそっちが神じゃん、自称だけど。じわる」
「じ、じわ? ああ、じわっとした面白みがあるという意味か。と、ともかく、良いのだな?」
「ありよりのありで」
「どちらかといえば肯定的……と」
なんか困ってるっぽいし、あーし安定ならね。頼られるのって、嫌いじゃないし。
「ありがとう木柳留美。お主に世界の命運を託すにあたり、二つ贈り物をしよう」
「あざまる水産」
「あざま……ああ、ありがとうか。説明を続けるぞ。まず一つは転移者のユニークスキル。あちらに到着すると同時に、お主だけの固有の能力が開花するので、きちんと把握するために現場でスキル鑑定を受けるようにな」
「なんかバイトの研修みたいで草」
「ま、まあ、そんな認識で良いぞ。なお、基本的な身体能力強化や言語関係。免疫能力もろもろの適応と、命のやりとりをすることへの忌避感の低減も転移者ボーナスに含まれている」
早口すぎてオタク君みたい。つーか、なに? 説明下手か?
「もっとわかるように言って」
「異世界で困ることがない全部コミコミプラン」
「学割は?」
「ありよりのあり」
「おけ」
神様やればできんじゃん。偉い偉い。
「で、もう一つの贈り物なのだが、お主の望みを叶えよう。追加で固有スキルを持つも良し、所持金を増やすも良し、最強装備で始めるも良し」
なんかガチでゲームっぽい。
「それ、なんでも?」
「うむ。おっと、魔王を封じることと、願いを増やすことはできぬぞ」
ふーん。なんでもか。
「じゃあじゃあ、マエセンつけて」
「マエセン? はて、そのようなスキルはあっただろうか……」
「スキルじゃなくて、担任の前田センセー。たぶんけど異世界とか好きそう。ゲーム詳しいし」
光るオッサン(神)、腕組みしてウンウンしてる。
「わかった。その前田なるものを、お主の従者としてつけよう」
「あざまる水産~♪」
「お主を先にアルカナリアの地へと送る。前田も後を追わせよう」
なんか言い方、心中みたい。ウケる。
「了解道中膝栗毛」
「それ後半の道中膝栗毛いるのか?」
「あー、それな」
「と、ともかく頼んだぞ……陽の力の化身……木柳留美よ。闇に閉ざされつつある世界を遍く太陽の如き力で照らすのだ。さあ! 行くがいい!」
あーしの身体が急にびゅんってなる。アレっぽい。シーのタワーオブテ……
「それ以上いけなああああああああああああああい!」
上の方から神、アセアセ。あっ……なんかついたっぽい、異世界。