表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ悪役令嬢は年下執事に敵わない  作者: 桐生夏樹
第一章 鬼龍院財閥ご令嬢
4/8

第三話 坂本、落ち度を認める

 改めて坂本は、百々花に所用の内容を尋ねる。


「ところで、百々花様の御用とは何でございましょう?」

「それはね? まず、あなたが遅れたせいで、学校に遅刻しそう。と言うこと。わかりますわね?」

「はい。それは私の落ち度でございます。誠に申し訳ございません」

「ふんっ。まあいいわ。それで、もちろん車の用意は済んでいるのでしょうね?」


 いやはや、百々花は学校に遅刻する責任を全て坂本に押し付けているのだ。

 

 そもそも百々花自身、坂本へのしつこい追及で、時間を要していることは事実なのに、だ。

 

 それにも関わらず、坂本は特に反論もせず素直に百々花へ詫びを入れる。


 そう、坂本は、ハッキリと百々花に詫びを入れたのだ。


「誠に申し訳ございません。車のご用意はございません」


 ……え?

 詫びって、そっち!?

 坂本は、百々花が自分のせいで学校に遅れそうなことを詫びるのではなく、配車出来ないことに対する詫びを入れた。

 

 それも今日配属されたばかりの執事が、だ。

 

 いつもの百々花なら即刻クビである。配属10分でクビである。言い訳を聞かずにクビである。

 

 とは言うものの、鬼龍院財閥の力を持ってすれば、車1台の準備くらい坂本ならずとも誰でも電話1本、数秒で配車出来るはずだ。

 

 何故だ?

 

 当然、百々花も同じことを考えていた。それを証拠に百々花は坂本に向かって再び激怒する。

 

「えっ、どう言うことですの?! いくら配属初日と言っても、これは毎日のことでしょう。30秒以内にエントランスに車を横付けするよう調整しなさい! 私の名前を出してもいいですわ。鬼龍院の執事たるもの、それくらいのことは出来るのは当たり前よ!」


 超怒っている。激怒っている。

 悪役令嬢の独壇場だ。自分の指示を反故にした坂本を百々花が許す訳がない。

 

 百々花の勢いに、流石の坂本も押されている。


「え、そ、それは……」

「何(ふふふ……流石にここはビビってますわね。もう一押しですわ)? まーさーか、この私の指示を聞けないとでも言いますの?」

「とんでもございません。ですが、車を30秒でエントランスに準備することは不可能でございます」

「不可能ですって……!? 何ですの、この私に逆らう気!?」

「いえ、滅相もございません」


 即答だ。坂本も逆らう気は無いらしい。

 

 が、何故、坂本は車を準備できないと頑なに言うのだろうか……?


 百々花は納得がいかない様子で、更に坂本に問い詰める。


「じゃあ、何ですの? この私が学校に遅刻しても良いとでも? この私が」

「とんでもございません。お嬢様のことを遅刻させるなんてことは、鬼龍院財閥の執事として許されることではございません」

「は? じゃあ、どうするの?!」


 これでは堂々巡りだ。

 坂本が何を考えているのかわからない。更に、更に百々花は、坂本を追い詰めた。


 百々花に押され気味の坂本は、言いにくそうに口を開く。


「そ、それは……」

「それは? (あらあら、流石にビビって声も出ないみたいね。この執事も今日までね)」

「車でなければ、いけませんでしょうか?」

「え、え、どういうこと? まーさーか。この私に歩いて学校まで行けってこと? そもそも車でも時間ギリギリなのに歩いて通学なんて、どう考えても遅刻だわ!」

「いえ、お嬢様に徒歩通学を強いることは決してございません」


 百々花と坂本の会話が、壊れた歯車のように全く嚙み合わない。

 

 ようやく坂本は場の空気を読み、百々花に彼の考える代替案を提示する。


「ご安心ください。恐れながら代わりの手段をご用意しております」

「え、車でも徒歩でもないって、あと何があるのですの?」

「そ、それは、誠にお手数ではございますが、お嬢様にご足労そくろうをお許し頂きたく」


 坂本は、何が言いたいのかをハッキリと言わずに歯切れ悪く話した。そして、その坂本の言動が百々花の怒りを更に増幅させる。


「何ですの?! 回りくどいですわね。学校に遅刻しなければ何でも良いわ」

「ご了承頂きありがとうございます」

「だから何よ! さっきから、あなたの回りくどい言い方がイライラするのよ! 結論を先に言いなさい!」

「申し訳ございません。承知いたしました。それでは申し上げます」


 ――フフッ


 怒る百々花に、坂本は少し微笑んだように見えた。もっと言えば、ほくそ笑んだようにも見える。


 そして、坂本は一息ついた後に言った。


「お嬢様には飛行機にて通学していただきます」


お読みいただきありがとうございました!

ブックマーク、レビュー、本作品の最終ページにある評価にて高評価をお願いいたします。


また、誤字等ありましたら、ご連絡頂けたら助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ