負の感情
危機と言うものは突然やって来る。知らず知らずのうちにやって来るそれは、心と言う心を振り回して荒らすだけ荒らして去って行く嵐の様なものである。心に魔が差すと言うのは、そう言う嵐の前兆なのかも知れない。人が好きだった人間を嫌いに成って行くプロセスには、必ず目に見えない小さな原因が重なる事が多い。
例えば、仕事で気にくわない事があったり、何気ない価値観の相違がトリガーとなり、破綻するのはよくある話である。留土羅はひかると付き合っていて、遂に"その時"を経験する事になった。きっかけはよく分からなかった。それでもひかるのやる事なす事全てが気に入らなくなっていた。別に決定的な何かがあった訳ではない。それでも留土羅の心で芽生えた負の感情をかき消す事が出来なくなっていたのである。
勿論、ひかると言う存在が大きく成り過ぎたその延長線上に嫌悪感があった。それでも降りかかる火の粉に対して充分な対策もないまま、大嵐が留土羅の中でふいてしまった為、その拒否反応が大きく出過ぎてしまったのは確かである。
だが、二人の幸せの為には良い事だったかもしれない。このまま何もなく最終地点に辿り着けたとしても、幸せな未来が待っていたとは限らないし何とも言えない。そして、沸々と湧き出る負の感情は心のモヤモヤとなり、留土羅の中で貯まっていく事になる。このモヤモヤをきちんと処理出来なければ、前にも後ろにも進めない事は欲分かっていた。モヤモヤはかなりのストレスで、とても一人では抱えきれないものであった。
少しひかると距離を置こうと思ったが、留土羅はあえてそのまま向き合う事にした。それは彼が対策を知らないと言うよりは、近くにいればその負の感情も自然消滅するのではないかと考えていたからである。結果的には、それは失敗する事になるのであるが、留土羅にとっては良い経験になった。結局、その失敗から拒否反応が出るようになってしまいひかるとは、別れざるを得なかった。
とは言え、このままではひかるが納得しない。何よりも、留土羅本人が消化不良のまま、次の恋に向かわなくてはならない。話せば少しは分かり合えるかもしれない。いや、もう俺達は終わっているのかもしれない。そんな自問自答を繰り返しながら、やはりケジメはつけるべきで逃げてはいけないと思うようになった。留土羅は遂にひかるに話をする為業務終了後に彼女を呼び出した。




