恋愛無法地帯
二人の関係でマウントを取っていたのはやはり先輩のひかるであった。仕事場の上下関係がそのままプライベートの関係を構築する事は、職場恋愛においてはよくある事である。しかし、女性主導の恋においては確立されたものが少ない、言わば発展途上の未開発分野と言っても過言ではない。
日本は女性の社会進出が欧米に比べて遅れている。男性優位の社会が長らく続いてきた日本では、恋愛も男性主導で男女関係を築き上げて来たと言う長い歴史があった。女性の社会進出が当たり前になった現代では、女性優位の恋愛も珍しく無くなった。ただ、男性が受けての女性主導スタイルの恋愛はまだまだ少数派である事は確かである。
そう言う意味では留土羅は良い経験をさせてもらっていると言える。デートもろくにしないカップルをはたからみてカップルとは見えないのかもしれないが、仕事とプライベートではスイッチが違い、そのスイッチの切り替えが分かるうちは、二人の関係が良好である事を示すバロメータでもあった。
留土羅は歳上の女性と付き合うのは初めてだったが、歳上は無いと思っていた自分の固定観念を振り払うひかるの存在は大きかった。年下好きと言える傾向の強い留土羅ではあるが、自分より経験のある人間と付き合う事に抵抗があるのは事実であった。勿論、先入観以外の何物でもなかったのだが、ひかるがそれを見事に取っ払ってくれた。恋愛は歳の差よりもフィーリング。それが大切だとひかるは常々言っていた。
会社の先輩と付き合うのは、学校の先輩と付き合うのとは訳が違う。留土羅には貴重な経験となった。平均年齢が若い亜細亜出版の様な会社では未婚男女の割合も必然的に高く、社内恋愛に関してのルールは全く無かった。その為、周りを見渡せばカップルだらけになっていた。無論、その恋愛無法地帯によるメリットとデメリットと言うのもある訳だが、仕事に影響が出るようならば、少しルールは見直すべきである。
社内の平均年齢が若いと言う事は、会社をスムーズに経営していく為には、欠かす事の出来ないファクトの一つなのかもしれない。男女比率も大切だろう。バランスの取れた業務をこなす為にはバランスの取れた人材配置、そして男女比率や年齢を考慮すべきである。細かく見ていけば、まだまだ必須条件があるのかも知れないが、良き企業である為にはこうした型から入る事も大切である。こうしたものを上手く回せて、初めて会社の経営が軌道に乗る準備が完了する。




