先輩のプライド
留土羅の上司の寺川ひかるである。寺川は留土羅の自然な立ち居振舞いを評価していた。しかし、上司であると言うプライドが邪魔をして思った様な積極的には接し方が出来ないていた。そこでひかるは同期の出世頭筆頭の副編集長の岡山節子(25)に相談話をするべく、都内の居酒屋に節子を呼び出した。
「ごめんね。忙しい所呼び立ててしまって。今日は奢るわ。」
「それは嬉しいけど、珍しいわね。あんたが相談事なんて?」
「実はね、好きな人が出来たの。」
節子はビールを飲みながら寺川ひかるの話を聞いていた。
「あんたが?これはスクープじゃない?どうしちゃったの?」
「私はみんなが思っている程強くないよ?」
「で?誰を好きになったの?そこが気になるんだけど?」
「驚かないでよ?営業一課の阿野留土羅。」
「マジ?あんたの後輩じゃない?自分の部下との禁断の愛。」
「こう言う時上下関係があると口実を作りやすいわね。」
「そうね。会議の後一杯付き合いなさいよ?」
「うん。」
「私は応援するわよ。あんたが恋するなんて珍しいからね。」
「そこで意識してしまうのよね。上司とか部下とか。」
「留土羅をその気にさせるなんて簡単よ?相手は右も左も分からない新人なんだし。」
「でもやっぱり気持ちは伝えるべきよね?」
「あんたさ、学生恋愛じゃないのよ?大人の女性らしくビシッと決めなさいよ?」
「私もう恋愛のしかた忘れてるかも。」
「そんな言い訳通用しないわ。好きなんでしょ?留土羅君の事。」
「そうだけど…。」
「だったらウジウジするだけ無駄よ?」
「そうだよね。先ずはデートを重ねて…。って言うかまだ付き合ってもいないし。」
「そのデートで見極めるのよ自分の恋を!」
「なるほど、流石は同期一の出世頭ね。」
「そんなの関係ないわ。良い?その場で確かめるのよ?自分の気持ちを。」
「大人の恋って打算的ね。」
「ひかる?あんたね、そんな事言ってたら結婚なんて出来ないよ?」
「とにかく今日は副編集長様と飲めて良かったわ。」
「あ、誤魔化したわね!でもそう言うひかる嫌いじゃないわ。」
「飲んで食べてゲットするぞ!オーッ!」
そんな事になっているとはつゆ知らず留土羅は爆睡していた。




