処世術
仕事に慣れて来るとその会社のアラの様なものまで見えて来てしまうものだ。嫌な上司の一人や二人も出来てしまうも無理はないかもしれない。そう言う負の部分も含めて、仕事場と言う環境は作られる。正の部分だけの仕事場などあり得ない。人間の集合体により社会が形成されてる以上完全無欠の職場なるものは無い。
それに対応する処世術を身に付ける事が社会人には求められる。留土羅はハーフだからいじめられると言う事を例に上げるとするならば、まずいじめられる事による不利益を考える。これはどんな場合でも使える方法で自分に対する不利益の考察をその①とする。次に原因を考える。何故いじめられるのか?ハーフでイケメンだから…。これもいじめられる立派な理由に成りうる。他にもあるならばどんどんピックアップしていけば良い。この原因究明をその②とする。最後に対処法を考える。いじめられ無い為には、どうしたら良いのか考えると言う様な事は立派ないじめ回避法と言えるかもしれない。これを③とする。
①②③さえしっかりしていれば、思考が対処術ものへと昇華していく。物事に具体的な意味を与えるのは、植物に水を与える様なものである。例えが悪かったかも知れないが、この様に自分の置かれた状況を整理する事は必要な事である。仕事場でのアラ探しを付随させる事で、自分にとって有利な状況を作り出す為には、順序だった考察が必要である。
留土羅の様な新人にこそ必要なスキルである。実際留土羅にも、不満があった。しかし留土羅は自分なりに上手く対処する方法を持って?いた為、大事には至らなかった。ちひろとの交際も何の問題も無く行っている様に見えた。
しかし、3日後の日曜日に突如「時間があるか?」とのメールが来て、「ある。」と答えたら、大切な話があるからと言われて、都内の高級和食レストランに午後8時に行くように指示された。何だ何だ?結婚の話でもするのかと浮わついていた留土羅だったが、この日に限って残業確実な仕事を寺山ひかるから与えられていた。時間が来たら抜けさせて貰おうと思っていたが、社内の空気は蟻も逃がさぬ様なムード。
しかし、今日はちひろに呼び出されている。彼女はその為に有給休暇を取得してくれている。総すかん覚悟で留土羅はこう言った。
「所用があるのでこれで失礼します。」
結局おとがめ無く留土羅はちひろの待つ高級和食レストランに向かった。




