宙ぶらりん
そんな二人が付き合い出したのは、初秋の10月上旬位の事であった。特に形式だった事は無く、自然な流れで付き合い始めた。お互いの気持ちやフィーリングがあったという、ただそれだけの理由で付き合い始めるというのは、この年頃の男女にはよくある事であり、成就する事も比較的多いが失敗する例も少なくはない。
若い男女の未来に水を指すつもりは無いが、勢いだけで付き合ってしまうと、あまりよい結果をもたらさない事は、頭の隅にあっても良いのかも知れない。学年1位の秀才である水菜美は、この頃既に大学進学を早々と決め、志望していた大学の指定校推薦を得ていた。まず進路を確定させたのは、水菜美の方であった。
青龍は大学受験をしない事を決めていたが、やりたい仕事もその職種も絞れず宙ぶらりんのままであった。ある日、親友の奥野永作と昼飯をとっていた時の事である。
「なぁ、奥野?お前進路はどうするの?大学か?」
「俺がやりたい事は、女のケツを追っかける事位だな。」
「お前に聞いた俺が馬鹿だったよ。その調子だとお前も進路は決まってないみたいだな。」
「ズバリ御名答。成績も中途半端だし決まってないよ。」
「東京行くのか?地元には良い大学なんてないだろ?」
「家は貧乏だしな。行くとしたら国立かな。」
「お前が国立?それ浪人確定じゃないか?」
「現役で入れる様に頑張るさ。そう言う青龍はどうなんだよ?」
「大学は行かない。やりたい事は無いけど社会人になる。」
「賢明な選択かもな。御両親共働きだったけ?楽にさせてあげなよ。」
「弟もいるしな。つーかその台詞は奥野、お前の台詞じゃねーよ。」
「親孝行結構じゃないですか?青龍君。」
「無理して大学行っても辞めるのがオチだよ。」
「ところでさ、お前あの仙木水菜美と付き合ってるってマジか?」
「ああ。付き合ってる。彼女は優秀だから進学先決まったらしい。」
「ビックニュースじゃねーか。」
「何て事はない普通のカップルだぜ?」
「青龍?お前、あすなろ高校の男子全員を敵に回す気か?」
「別に構わないよ。やましい事は何一つしてない。」
これが普通の男子高校生の姿である。別にそれが悪いとも良いとも決めつける必要はない。あるがままの青春を謳歌しているだけだ。




