あの死闘を振り返って
前項より続き
「何度諦め様としたか分かりません。そんな自分を支えたのはキーティア王女の真っ直ぐな"目"でした。客席にいた彼女の透き通った何の淀みもないその瞳から私はここで、負ける訳には行かないという気持ちになったのです。戦いの度に増していくのは疲労ばかりではありません。父ロスドルから譲り受けた名剣ローレンディスも刃こぼれや金属疲労を起こしていて、いつ折れてもおかしくはない状態にありました。幸いにしてローレンディスが折れる事も、私の心も折れる事はありませんでした。4人の尊い命を奪ったという事は変わらない事実です。しかしながら、それは私が望んだ事ではありません。私はただ、キーティア王女と結婚出来れば良かった。私の本音はその一点に集約されます。この様なめでたい祝いの席でのスピーチとしては相応しい内容ではないのかもしれません。しかしながら、私は公にする事で一切の隠し事を0にした状態で結婚したかった。ゴードン王国騎士団の4人の精鋭を倒した私がそれを悔いていないのだとすれば、それはあまりにも失礼な話であります。私とキーティアの幸せは彼等の犠牲の上に成り立っているのでありますから。私はハンロスド王国王子としてただ、その名に恥じない戦いをしようと決めていました。私は実戦経験もほとんど無い名ばかり大将でした。いや、私だけではありません。過去全てのハンロスド王国の貴族はそうでした。父ロスドルも実戦経験はありません。だからこそ、そうではない事をハンロスド王国貴族はポンコツではない事を、戦って証明しなければならなかった。私は初めて命を懸けて戦いました。それらを守りました。ハンロスド王国王子としてのプライドも己のプライドも全てです。あの死闘を見て八百長だと思う人は浅はかでしょう。間違いなく、あの4つの戦いは、全てにおいて我々は全力で死闘を尽くして戦ったのです。」




