ミカツェルリア王子のスピーチ
スピーチの瞬間はあっという間に訪れた。ミカツェルリア王子は用意していた紙切れ2枚を何度も何度も式の最中に読み返していた。
「緊張するなぁ。」
「4人の精鋭を倒した貴方なら大丈夫。」
「そうだな。たかだかスピーチだもんな。ありがとうキーティア。吹っ切れたよ。」
そう言うとミカツェルリア王子は用意していた紙をたたみ壇上へと向かった。
「本日はお忙しい中…。」
決まり文句の社交辞令から入り、肝心の本文に入ったのは、3分後であった。
「ここに辿り着くまでの私の歩んできた道は決して平らな道ではありませんでした。4人の強き戦士の犠牲の上に私とキーティア王女の結婚はあります。彼等の死が無駄では無かった事を証明する様な幸せな家庭を作らなければ、私には結婚する資格は無いでしょう。その思いはキーティア王女も同じです。私はハンロスド王国の王子としてこれまで、正直甘やかされて育ちました。それは父や母のせいではありません。何一つ不自由をする事なく、何でもある生活の中で、知らず知らずの内にあるのが当たり前。自分が苦労しなくても家来がやってくれる。そう言う貴族の雛型の様な生活は私にとって当たり前でした。しかし、嫁を探しに行けと言われてからはその様な生活では無くなりました。ウェルガーやサンゴストと言った信頼のおける家臣と共に、行った事の無い国々で自分のお眼鏡に叶う嫁探しを探し続けていました。そんな中でクイーンオブザワールドを決める戦いにたまたま偶然遭遇します。その大会の覇者こそ妻のキーティアでした。私の心の中では優勝してもしなくても、キーティアにしようと決めていました。その理由は今でもよく分かりません。ただ、一つだけ思っていたのはこの女性の為なら命をなげうってでも守りたい。と思えた事です。実際に私は命を懸けてゴードン王国騎士団の4人の精鋭と闘う事になりました。辛く苦しい戦いでした。何しろ負けた方が死ぬ事になっていましたから。きっとこれを企画したゴードン王国国王ゴードゥロア25世も4人の精鋭がいればその全員がやられるとは思っていなかったでしょう。私はもうヘロヘロでした。」次項に続く。




