父ゴードゥロア国王の一言
ドレスアップを終えたキーティア王女を見たミカツェルリア王子は、そのあまりの美しさに声が出なかった。
「どうしたの?固まってるよ(笑)」
「あまりにも君が美しいから言葉が出なくてね。きっと君の様な人を絶世の美女と言うんだね。まぶしすぎるよ。」
「式までまだ時間あるけど、準備は出来てるの?」
「準備も何もやることと言えばスピーチ位だからね。」
「凄腕の剣士ともなれば、スピーチ位であたふたしないか?」
「メイクまだ終わって無いんだろ?花嫁なんだから、整えないと。邪魔してゴメン。」
「ありがとう。じゃあまた後でね。」
そう言うとミカツェルリア王子は終始ドレスアップされたキーティア王女の美しさにたじろぎながら、控え室を後にした。ミカツェルリア王子も儀式用の燕尾服をロスドル国王から受けとると、それに着替えた。男は着替えが楽でいいなと思ったが、時間をそれでも持て余した。
結婚式のスピーチについては、400字原稿で10枚、4000字を書いてきた。暗記はしていないものの、何を言うかは前日必死でまとめて頭に入れた。それ以外にする事は花嫁とのキス以外にはない。式の司会進行はウェルガーやサンゴストに任せておけば大丈夫だろうし、来客とは言え来るのは新郎新婦の身内だけに限定した。
だから結婚式とは言え、主役として堂々と振る舞えば良い。少なくとも、今回は身内限定の形で進む。ミカツェルリア王子は自分の結婚式なのに、まるで他人の結婚式に参加しているかの様な気持ちになった。
その頃、ゴードゥロア国王とその臣下達がハンロスド王国に到着したとの報せがミカツェルリア王子の耳に入った。キーティア王女にとっては、ゴードゥロア国王との面会は、ほぼ一年ぶりの再会であった。キーティア王女は父とこれだけの長期間離れていた事は過去に例がなく、キーティア王女は何を話して良いか分からなかった。その娘の動揺に対して父ゴードゥロアはこう告げた。
「キーティア綺麗だぞ。」
それだけ言うと、今は式に集中しろと言うかの様に肩を2回叩いた。




