乾杯の音の先へ
ゴードゥロア国王とキーティア王女は結婚前最後の夕食を共に過ごしていた。
「そなたも嫁に行く年頃になったのだな。」
「時の流れでしょう。こればかりは。」
「ミカツェルリア王子は思ったより骨のある男の様だな。」
「見ての通り武勇も知略にも優れた方でございます。」
「我が国の優秀な兵士4人を失った甲斐があったな。」
「父上が勝手にした事でしょう。ミカツェルリア王子はよくやりました。」
「お前はミカツェルリア王子が負けるとは思わなかったのか?」
「正直な感想はイグニート様やケルスミーロ様がいては勝ち目は薄いと思っていました。」
「好意を持っていたのか?」
「流石御父様。戦いが進むにつれて好きになって行きました。」
「こうしてお前と食事をするのも最後か?」
「離れていても親子に違いはありません。」
「マルディアが亡くなってからは心の支えはお前だけだった。」
「御母様の事は私も辛かったです。」
「ワシはこれから何を生き甲斐に生きていけば良いのか?」
「御父様程の方がそんな事でうろたえて欲しくないです。」
「そう言う手厳しい事を言ってくれる人間もいなくなるのだな。」
「お世継ぎの子孫でも残されてはいかがですか?」
「相変わらず無茶を言う奴だなお前は。」
「養子でもお取りになればいかがですか?」
「そうだな。ゴードン王国を潰す訳にはいかない。」
「やる事に不自由はしてなさそうですね。」
「キーティアよ、ハンロスド王国に行っても達者でな。」
「たまにはミカツェルリア王子と一緒に顔見せますわ。」
「そうしてくれると、父は非常に助かるな。」
「手紙も書きますわ。私書いた事無いんですけど(笑)」
「明日からはミカツェルリア王子と二人で別の道を歩むのだな?では二人の前途を祝して乾杯!」
「未来に幸あれ‼乾杯!」
グラスのぶつかり合う音が、いつまでもゴードン城内に響いていた。




